109話
俺はある程度ミッションについての説明をギルド長から受けた。
「ここまでで、何か質問はありますか?」
質問か……
「あの、もし未到達階層に行くってなったとして、その時もローデンさんともう1人のギルド職員の方の2人がついて来るんですか?」
「そうなりますね」
成る程……それなら……
「……それなら、1週間後からダンジョンに潜り続ける事にします」
「え、それはどういう……」
「俺は1週間後からダンジョンに入ったっきり、地上には帰って来ません」
「え!?」
「本気ですか!?」
ギルド長とローデンさんは驚いている。
まあ、普通に考えたらそんなのはありえないだろうからな。
「普通ならそんな事はせず、ある程度の階層まで行けば戻って来るでしょう。ですが、それだと未到達階層……それこそ、最終階層だと言われている100階層まで行くのに、一々戻って来ていたら面倒ですよね。だから、俺はダンジョンに潜ったまま帰ってきません」
俺がそう言うと、ギルド長は少し考えてから言う。
「……確かに、それは合理的です。しかし、食糧はどうするんですか?恐らくですが、ダンジョンのクリアには数十年かかると思います。と言うより、クリア出来るかどうかすら怪しいです」
そう言われてしまう。
「確かに、普通ならかなりの時間がかかるでしょう……ですが、俺はそんなに長く時間をかけるつもりはありませんよ」
「……具体的には、どのくらいの時間でクリアするおつもりで?」
「1週間から2週間の間でクリアします」
俺はそう言い切る。
「1週間!?」
「難波さん、流石にそれは……」
ギルド長とローデンさんは、さっきよりも驚いている。
「大丈夫です。必ずやり遂げてみせます」
俺がそう言うと……
「……本気ですか?」
ギルド長がそう聞いてくる。
「はい」
「……分かりました。もし無理だと判断したら、必ず引き返してください」
「分かってます。それで、ローデンさんは女性ですから、その期間はお風呂に入れません。だから、やめるなら今ですけど……」
俺がそう言うと……
「……いえ、私は行きます」
ローデンさんはそう言う。
「いいんですか?」
「はい。私は、難波さんをこのミッションに推薦したんですから当然です。それに、私もダンジョンがクリアされるところを見てみたいですし」
ローデンさんはそう言ってくれる。
「分かりました。それなら、ローデンさんも1週間でダンジョンに行く準備をしてくださいね」
「はい!」
「それでは、そのようにこちらでも手配しますね」
「お願いします」
そうして、俺は1週間後からダンジョンのクリアを目指す事になったのだった。
それから、俺は毎日ダンジョンに潜っていた。
到達階層も20階層へと増やした。
20階層にはボスモンスターであるバターフライがいた。
そのモンスターは、バターのような羽を羽ばたかせて飛んでいて、その羽はバターのように滑るので、その羽で防御しつつ攻撃してくるというモンスターだった。
少し羽に苦戦したが、俺は剣技を使って防御されるより速く刀を振るい、何とか倒した。
その帰り道、ケイン達と偶然会ったので、一緒に地上へと戻った。
そんな風に毎日を過ごしていると、遂に1週間が過ぎたのだった。
俺は今、ミセリスの前にいる。
俺が今日からダンジョンへと潜るため、マックスさんとカレンさんが見送りに出て来てくれている。
「気をつけるんだぞ」
「絶対に無茶したら駄目よ。危なくなったら逃げて、すぐに帰って来なさい」
マックスさんとカレンさんはそう言ってくる。
ははは、何だか父さんと母さんみたいだな。
俺は少し両親の事を思い出し、懐かしい気分になった。
「どうしたんだ?」
マックスさんが聞いてくる。
「あ、いえ、何でもないです。絶対、ダンジョンをクリアして戻って来ますね」
俺がそう言うと……
「ああ、頑張れよ!」
「絶対に無茶しないでね」
「はい!」
俺はそう言って、ギルドへと向かって歩き出したのだった。
そうしてギルドまで来ると、既にローデンさんはギルドの前にいた。
隣には、ギルドで何度か見た事のある女性もいた。
「あ、難波さん!」
「おはようございます」
「はい、おはようございます」
「それで、そちらの方が……」
「はい。私、カナリア・ケシリーです。難波さんのミッションについて行く事になりました。よろしくお願いしますね」
そう自己紹介してくれた。
「よろしくお願いします」
俺もそう言う。
「カナリアは私と同期なんです」
「ずっと一緒だよね」
「そうなんですか」
それでさっきから仲がよさそうだったのか。
「それじゃあ、行きましょうか」
「そうですね」
「行きましょう」
そうして、俺達はダンジョンへと向かったのだった。
「それにしても、難波さんは本当にソロで向かうんですか?」
ダンジョンへと向かう道すがら、ローデンさんがそう聞いてくる。
「はい。そのつもりです」
「誰かと一緒にパーティーを組んだ方が安全ですし、捗ると思いますよ?」
ケシリーさんもそう言ってくる。
「まああまり知り合いもいませんし、それに……」
「それに?」
「……いえ、何でもありません」
言わなかったが、俺はダンジョンのクリアを目指す目的は2つある。
1つは単純に強くなるためだ。これはどの世界でもやっている事だから、もちろんこの世界でも強くなるために行動する。
そしてもう1つは、ダンジョンをクリアした時に何かあると感じるからだ。
これは勘だが、恐らくこの世界はダンジョンをクリアする事で、俺に何かが起こるんだと思う。それを確かめるため、何としてでもダンジョンをクリアしたい。
「そろそろダンジョンの入口が見えてきますね」
そんな事を考えていると、ダンジョンの入口まであと少しという所まで来ていた。
そうして、ダンジョンの入口の前まで来ると、そのまま通される。
俺はドアを開けて、ダンジョンの入口を見据える。
「これからは、ダンジョンをクリアするまでは地上に戻って来ません。いいですか?」
俺がそう聞くと……
「はい!」
「もちろんです!」
そう2人が返事した。
「それじゃあ、行きましょう」
そうして、俺達はダンジョンをクリアするというミッションを達成するため、ダンジョンの中へと入って行ったのだった。




