108話
俺達はその後、9階層の通路を進んでいた。
途中でクラッシュボアが数体出て来たが、ケイン達もパーティーで戦う事で何とか倒していた。
そうして、俺達は遂に10階層へと続く狭い通路を見つけたのだった。
「よし、それじゃあ行くか」
「ああ!」
俺が言うとケインが返事をして、他のみんなも頷く。
そうして、俺達は通路を進んで行った。
そして、遂に10階層が見えてきた。
「10階層は、アイアンオックスがいる部屋だけですので、着いたらいると思います」
ローデンさんがそう言う。
「それなら俺が戦うので、みんなは入口で待っていてください」
「本当に大丈夫か?」
ケインがそう聞いてくる。
「大丈夫だ。倒したら、今日は戻るからそのつもりでいてくれ」
「分かった」
「倒せないと思ったら、すぐに戻って来てくださいね」
ローデンさんはそう言う。
「分かってますよ」
「頑張ってください!」
マニーが応援してくれる。
「ありがとな。そんじゃ、行ってくる」
俺はそう言って、一気に通路を抜けた。
すると……
「ブフォォ……」
そこには、大きな牛がいた。
恐らく、普通の牛の2倍はあるだろう大きさだ。
こいつがアイアンオックスか……
確かに体は銀色に輝いていて、その名の通り鉄で出来ていると思わせる。
「ブフォア!」
そんな事を思っていると、アイアンオックスが俺の存在に気づき、向かって来た。
さて、どうするか……
ここは少し様子を見て倒してもいいが、ローデンさんに俺の実力を見せるためには、一撃で倒すのがいいかもしれない。
それなら……
俺は刀を正眼に構える。
そして、あと2メートルの所までアイアンオックスが来た。
その瞬間、俺は前に出て刀を振るう。
「心証流奥剣ー刹那」
そして、俺とアイアンオックスはすれ違う。
そして……
「ブオォ……」
アイアンオックスは消滅したのだった。
「え……」
「今、何が起こったんだ?」
「さ、さあ?」
みんな困惑していた。
俺がやったのは、ただ速く刀を振るう事。それもすれ違う瞬間、すれ違っている最中、すれ違った後の3回だ。
俺はアイアンオックスの魔晶石を持ち、みんなの所に戻ったのだった。
「戻ろうか」
俺はみんなの所に来てそう言う。
「あ、あの、アイアンオックスをどうやって倒したんですか?」
ローデンさんがそう聞いてくる。
「え、ただ剣を振るっただけで倒せましたよ?」
俺がそう言うと……
「いえ、難波さんが攻撃したところが見えなかったんですけど……」
「ああ、かなりの速度で振るいましたからね。普通の人には視認できませんよ」
「そ、そうなんですか……」
俺の言葉に、みんな呆然としていた。
「それより、戻りましょう」
「そ、そうですね」
そうして、俺達はダンジョンから地上へと戻ったのだった。
「それでは、もう明日からは1人でダンジョンに行ってもいいですか?」
俺達はダンジョンを出た後、ギルドへとやって来た。
ケイン達は魔晶石の換金が終わると、俺達と別れてそのまま帰って行った。
そして俺は今、明日からの事をローデンさんと話しているところだ。
「……少し待っていてくださいね」
そう言って、ローデンさんはどこかへ行ってしまった。
「急にどうしたんだ?」
俺はそう思いつつ、言われた通りその場で待つ。
そして、少ししたらローデンさんが男性を連れて戻って来た。
「難波さん、お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。それより、この方は?」
俺がそう聞くと、男性は自己紹介をし始めた。
「初めまして、ここのギルドのギルド長をしているダラム・メゼルと申します。あなたが難波レイさんですね?」
「はい、そうですが……」
ギルド長が何の用だ?
俺がそう思っていると……
「実は、難波さんの今後についてお話があって来ました」
ギルド長はそう言ってきた。
今後って、一体何の話だ?
「えっと、どういう事ですか?」
「はい。実は、難波さんにはダンジョンのクリアが出来るのではないかと、ローデン氏から言われましてね」
ダンジョンのクリアって……
「それは無理だって、初日にローデンさんから言われたんですけど……」
「はい、確かにそう言いました。ですが、難波さんの今日1日のダンジョンでの戦いを見て、私が知る限りどの冒険者よりも難波さんの方が強いと感じました。それで、ギルド長に相談したんです」
「私は実際にあなたのダンジョンでの戦いを見ていませんが、彼女が言うなら間違いないでしょう。何せ、彼女はこのギルドでもかなり優秀ですから」
「そ、そんな事は……」
ギルド長に褒められ、ローデンさんは照れる。
「そういうわけで、あなたにはダンジョンをクリアするというミッションを受けていただけないかと思いまして」
「ミッションですか?」
「はい。このミッションは生涯をかけて行ってもらいます。もちろん、途中でやめる事も出来ます」
「やめると、何かペナルティはあるんですか?」
「いえ、そういった事はありません。ただ、やるからには、毎月到達階層を増やしていただきます。もちろん、それに見合った報酬も支払います。もし増やせなかった場合は、その報酬が支払われません」
成る程な。
「それなら、これから俺がダンジョンに潜る時は誰かギルドの職員がついて来るんですか?」
「はい。恐らくはローデン氏と、もう1人職員がついて行く事になると思います。このミッションは、数名ですが他の方にも受けていただいていますが、皆さんそのような形ですので」
そうか……
「……報酬はどのくらいになるんですか?」
「そうですね……ギルドは国が運営していますので、報酬も国が支払います。そのため、詳しい額は申し訳ありませんが分かりません。しかし、到達階層にもよりますが、かなり高額になると思います。そして、未到達階層に到達したとなると、一生暮らせるぐらいにはなるかと」
そんなに!?
「それはすごいですね」
「まあ、今まで未到達階層に行った方を私は見た事がないので、支払った事もありませんが、恐らくはそのぐらい支払われるのではないかと思われます」
そうか……それなら、受けてみてもいいかな。
「分かりました。受けます」
「ありがとうございます!」
ギルド長はそう言って、頭を下げてきた。
「それでは、私は手続きをして参りますので、少々お待ちください」
そう言って、ギルド長は行ってしまった。
「難波さん、ミッションを受けてくださり、ありがとうございます」
残ったローデンさんが、そう言ってくる。
「いえ、構いませんよ」
「本当にありがとうございます……実は、難波さんをこのミッションに推薦したのは、理由があるんです」
「理由ですか?」
「はい。それは、最近の冒険者の方のダンジョンに対する姿勢についてなんです」
「ダンジョンに対する姿勢?」
どういう事だ?
「最近は、ダンジョンを攻略しようと思う冒険者が少なくなって、ただモンスターを倒して魔晶石を回収して換金する。それを目的とした方ばかりになりました。それが悪いわけではないのですが、その考え方が一般的になってから、死者が増えました。もっと稼ぐためにモンスターを倒さないと……みんなそう思い出したからだと思います。だから、担当の冒険者の方がダンジョンに行く時、いつも私は言うんです。絶対に死なないでくださいって」
俺もそう言われたな……だから俺が5階層に行った時、あんなに怒ってたのか……
「それで、難波さんもそういった方達と同じだと思ってました。でも、難波さんはモンスターに囲まれている冒険者達を助けました。普通は、あの状況なら知らないふりをして逃げる事も出来たのに。それを見て、私は思ったんです。難波さんは、普通の冒険者とは違うって」
まあ、俺はこの世界に来て1週間も経っていないし、金儲けを目的としているわけじゃないからな。
「それで、難波さんはダンジョンのクリアを目指しているんですよね?」
「あ、はい、まあそうですね」
「それで、余計なお世話かもしれませんが、ミッションを受けさせてもらえるようにギルド長に頼んだんです」
そうか……ローデンさんは俺のためにやってくれたのか……担当として、俺の目標を後押ししてくれたわけか……
「ありがとうございます。俺の事を信用してもらえて、よかったです」
俺がそう言うと、ローデンさんは頭を振って言う。
「と、とんでもないです。こちらこそ、難波さんの実力を疑ったりして、すみませんでした」
「いえいえ、別に気にしてませんから」
そんなやり取りをしていると……
「お待たせしました」
そこでギルド長が戻って来た。
そうして、俺はミッションを受けるに当たっての説明を受けたのだった。




