100話
「うう……」
俺は目が覚めると、そこは機械が沢山並んでいる部屋だった。
「戻って来たね」
すると、そこには懐かしい顔の人物がいた。
「春日さんか」
「そうだよ」
そうか、俺は戻って来たのか……
「いつも通り、軽くトレーニングしてからご飯を食べて休む?」
春日さんがそう聞いてくる。
「そうですね。そうします」
そう言って、俺は立ち上がる。
「うん。それじゃあお疲れ様」
俺はそのまま、トレーニングルームに向かったのだった。
俺はトレーニングをして軽く体を動かした後、食事をしてから風呂に入った。
そして今は自分の部屋にいる。
「……上手くいってよかったな」
俺は今、VRの世界で人と魔族が共存出来た事に安堵していた。
実際、俺が生きている間に出来るかどうか分からなかったからな……
それでも、周りのみんなが協力してくれたおかげで、何とか実現する事が出来た。
「それにしても……」
俺は今回、人間と魔族の事で手一杯で修行がそんなに出来なかった。
「次は平和な世界であるように願うか」
俺はそう思ったのだった。
それから5日が経った。
俺は朝からトレーニングをして、体を動かしていた。
「やっぱり、この体は少し動きにくいな」
俺はそう言いつつ、ランニングマシンを使って走る。
そして、それが終わると昼食を取り、研究室へ向かった。
そして研究室の前まで来た。
ガチャッ。
俺はドアを開けて中に入る
「春日さん」
俺は中にいる春日さんに声をかける。
「ああ、君か。するともうVRの世界に行く時間になったんだね」
春日さんは時計を見ながらそう言う。
「気づいてなかったんですか?」
「うん。ソムニウムのシステムを少し弄っていたからね」
「システムをですか?」
「うん。それで遂に完成したんだよ」
春日さんは嬉しそうに言う。
「何が完成したんですか?」
「それは、君が今の年齢と体のまま、VRの世界でスタート出来るようになるシステムだよ」
なっ!?
「それって、もう俺はシスターに拾われて、そのまま幼少期を過ごさなくてもいいって事ですか?」
「うん、そうだよ」
それはすごいな。これから俺は、この体でいきなりVRの世界での生活をスタート出来るってわけだ。
「それじゃあ早速試してみようか」
春日さんはそう言う。
「はい」
俺は返事をして、ソムニウムの方へと歩いて行った。
俺はソムニウムに座ると、そのまま春日さんの準備ができるまで待つ。
そして5分程すると……
「準備が出来たよ」
春日さんがそう言ってきた。
「こっちも大丈夫です」
俺はそう返す。
「それじゃあ、いくよ」
そう言って、スイッチを入れる。
その瞬間、俺は意識を失ったのだった。
気がつき、俺は目を開ける。
「うおお!」
俺は自分の足で立っていた。
「これは、確かに現実の体と一緒だ」
俺は体の確認をすると、さっきまでと同じ感覚で動くことが出来る。
「動きにくさも現実世界と一緒か……」
どうやら、現実の俺の体を解析しているようで、現実の体とほぼ変わらない。そのため、今までのように幼少期から少しずつ鍛えていた体と違い、17年間大した運動をしてこなかった体となっている。
「これは、先ず体を鍛える事から始めないといけないな」
俺はそう思い、体の確認を終える。
「それで、ここはどこだ?」
俺は周りを見渡す。
今までは森の中からスタートしていたのだが、現在俺がいる場所は平原のようだ。
上を見ると、太陽が丁度真上に来ているので今は昼だろうと思う。
気温は大体20度〜25度の間といったところだろうか。暑くも寒くもなく、時折気持ちのいい風が吹く。
「……少し歩いてみるか」
俺はそう呟くと、歩き始めた。
そうして歩く事10分程。
「お、これは」
俺の進行方向に、草が刈られて道になっている所があった。明らかに人が通るための道だ。
「これを辿っていけば、どこかの街に着くだろうな」
問題はどちらに進むかだが……
「よし、こっちに行こう」
俺は適当に決めて、そのまま進む事にした。
「さて、この世界はどんな感じかな」
出来る事なら平和な世界がいいなあと思いながら、俺は歩き出したのだった。
歩き始めて1時間が経った。
しかし、一向に町や村といったところが見えてず、ずっと道が続いているだけだった。
「おいおい、このままじゃあ野宿じゃねえか」
それだけは勘弁して欲しい。今の俺は金も食糧も寝袋も持っていない。その状態での野宿は避けたかった。
まだ日没までには時間があるので、それまでに何とかしたいところだ。
「……こうなったら、人が住んでいそうな所まで走って行くしかないか」
俺はそう思い、刀を出す。
「リベレイト」
ブンッ!
俺の腰に、2本の透明な刀が現れる。
これにより、一気に力が湧いてくる。
「そんじゃ、行くか」
俺は一気に走り出したのだった。
そうして、俺は走り続ける事1時間。
「あれは……」
遂に建物のようなものが見えてきた。
さらに近づくと、他にも建物がある。
「あれは、どうやら町や村と言うよりも、都市だな」
目を凝らすと門があり何人か人がいる。どうやら、そこで検問をしているようだ。
「この辺りで一旦刀を消すか」
この世界の事情が分からない以上、武器は持つべきではない。それに、場合によってはこの世界ではソウル・リベレイターがいない可能性もある。
それがこのVRの世界の面白いところでもあるのだが、今回からシスターに世話にならないので、自分で調べる必要がある。
「さて、着いたぞ」
俺は門の前まで来た。
「おい、待て」
俺は門の前にいる人にそう言われ、その場で止まる。
「ここへは何をしに来た?」
そう問われる。
「俺は旅をしていて、偶然ここに辿り着きました。特に目的はないのですが、今日のところは宿泊する宿でも探そうと思いまして、立ち寄りました」
俺は正直にそう言う。
「……嘘はついていないようだ。それなら、荷物の確認をさせてもらう」
「あ、実は荷物はないんです」
「荷物がないだと?」
「はい。実はここに来る途中で落としてしまって……」
俺がそう言うと、今度は俺の体を触ってくる。
「……確かに、何も持っていないようだな。だが、そらならどうやって宿に泊まるつもりだったんだ?」
「何か日雇いで出来る仕事をして、そのお金で安い宿にでも泊まろうかと考えてました」
「成る程……よし、行っていいぞ」
「ありがとうございます」
俺は礼を言って、歩き出す。
ふう、何とか入れてもらえたな。
俺はそうして、都市の内部へと入る。
すると、そこには看板が立ててあった。そこには『ようこそ、アグリガルへ』と書いてあった。
ここはアグリガルって言うのか。
俺は都市の名前が分かったところで、早速歩き出す。
この都市の建物は西洋風で、とても綺麗に並んでいる。
どうやら、俺が今いる場所はお店が沢山並ぶ通りのようだ。
行き交う人は、色々な物を見たり買ったりしている。
中々賑わってるなあ。
俺はそう思いつつ、暫く歩く。
そうして街を見学していると、今度は宿泊施設が沢山並んでいる通りに来た。
今日はどこかに泊まるのは無理かなあ。
俺がそう思っていると……
「誰か!そいつを捕まえて!」
そんな声が聞こえてきた。
見ると、男が女性の鞄を盗んで走るところだった。
そして、そのまま逃げようとする。
これは見過ごせないな。
俺は一気に走り出す。
幸い、俺の今の体でも追いつけるスピードで男は走っている。
「おらっ!」
「ぐはっ!?」
俺は男の背中に飛び蹴りをする。
そのまま男は道に突っ伏した。
「何だ、大した事ないな」
俺はそう言って、男から鞄を取る。
すると……
「あの人です!」
さっきの女の人が警察のような人達を連れて来た。
「君が取ったのか!」
俺はそう言われ、誤解だと言う。
「違います、こっちの人ですよ。俺は鞄を取り返したんです」
そう言って、突っ伏している男を指差す。
「そうか。よくやったな」
「いえ、とんでもないです。あ、これどうぞ」
俺はそう言って、女性に鞄を返す。
「あ、ありがとう」
そうお礼を言われた。
「いえ、いいんですよ」
そうしている間に、男は警察のような人達に連れて行かれた。
「あ、あの」
女性が声をかけてくる。
「何ですか?」
「何かお礼がしたいんだけど、家がそこだからお茶でもどう?」
俺はそう言われ、少し考えてから頷く。
「いいですよ」
折角の厚意を断るのもどうかと思うからな。
「ありがとう!ついて来て!」
そう言って、女性は案内してくれる。
そうして、俺は女性について行ったのだった。




