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中二病棟、天に舞う  作者: 倫理
9/11

episode8:勧誘

「それじゃ、先生は入部届出してくるから! また明日ねー!」


 しれっと目標達成した先生は、そう言って家庭科室を足早に出て行った。

 廊下は走らないで下さい。

 取り残された俺たちは、ここで何をするというわけでもなく、言いようのない虚無感に包まれてしまっていた。


「……とりあえず、今日は帰るか」


 これから活動という気分でもなし、先生も「また明日」なんて言ってたから今日はこれでおひらきだ。

 ということで、明日からは部員探し。

 厄介なことだ……。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ――翌日。

 本日の授業、特に何事もなく終わり、あっという間に放課後だ。

 授業終了に合わせ、クラスの半分くらいが足早に教室を出て行った。 

 運動部入り決定した奴らだろう。

 こうなると、いよいよ部活勧誘も難しくなるわけである。

 入ったその日に廃部確定だなんて、流石になんだかなぁ。

 それはそれとして。

 ……常に監視してるとかそう言うわけではないのだが、悠花の周りの人が日に日に減っている気がする。

 初っ端にあの中二病を全開でこられたら無理もないわけだが。

 俺が日々それを耐えられてることに誰か称賛を与えてほしい。

 頑張ってるな、俺。

 まぁ、そのうち周りも慣れてなんとかなっていくだろ。

 さて、部活勧誘だ。

 うかうかしてはいられない。

 張り切っていこう。

 如何せんどうもモチベーション要素は皆無なのだけれども。

 勧誘、とは言っても俺もまだこのクラスに浸透しきっていない。

 やはりこういった類は、交友関係のある者に対して有効な案件なわけで。

 いやしかしそれは俺がぼっちであるということではない。

 断じて、決して。

 まずはそこら辺からなのだろうけれど、それは勧誘期間的に見ても余裕がない。

 あとはもう、コンタクトしやすそうな人物を観察して、手当たり次第声をかける他ないだろう。

 当たって砕けろ。

 というわけで、そんな条件に合う人物像として、ほどよく根暗そうで、話を聞いてくれるようなやつは……、いた。

 後方端の席で物静かに読書を嗜んでいる。

 周りにいる集まりをさも気にしていないといった様子で、まるでそこは自分だけの領域だと言わんばかりだ。

 あれはあれでクラスに馴染んでいる、と言えなくもない。

 きっとこれからも彼はそのスタイルを崩すことがないだろう。

 彼からはそんな意思を感じる。

 まぁ、それはいいとして。

 彼ならひょっとすると入ってくれるんじゃないだろうか。

 もう既に部活を決めていたら残念だが、いずれにせよあいつは絶対文化部向きの佇まいをしている。

 勧誘一号いざ行かんと踏み出した時、ふいに後ろから肩を叩かれた。


「今失礼なこと考えてたね」


 男の声だった。

 意味不明な発言に虚を突かれつつ振り向いたそこには、先程まで悠々と本を読み耽っていた筈の人物がいた。

 そいつがいた。


「うわぇぁあ??!」


 思わず飛び退いた。

 予想不可の現状に俺は飛び退かざるを得なかった。


「人の顔を見て驚くだなんて、君はなんて失礼な奴なんだ」


「いやだってあの」


 彼は確かに座っていたんだ。

 後方端の席で読書をしていた。

 俺は教室入り口付近。

 彼と俺との距離にして5〜6m。

 それをほんの一瞬で、しかも俺の背後に回るだなんて……。


「あいにくだけど僕は君達の部活に入るつもりはないよ。あの家庭部の噂は聞いているからね」


 俺が動揺している間に、間髪入れず断られてしまった。

 家庭部勧誘のことも筒抜けだったようだ

 眼鏡の彼は、さも面倒臭そうに背を向け、席に戻っていった。

 俺はもうさっき起きた事が気になって、勧誘なんてどうでもよくなってしまっていた。

 これは単なる興味本位なのだけれども、このまま彼に帰られては夜も寝られないことになりそうだ。

 俺はたった今、彼を高校生活第一友人として絡んでいくことに決めた。

 こうやって少しずづでも交友関係を広げて、ゆくゆくは悠花を放置できる環境を構築するんだ。

 その夢を実現させるため、俺は重い腰を上げたのだった。

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