生きるための食事
「やっと着いたぜ。おぅ、本当に大丈夫かよ?」
ついに、目的の場所に到着したようだ。
にしても、歩くのに慣れるまでに随分と心配された。
なにしろ、一歩進むたびに脚の平を開閉するのだ。
疲れる。
そうやって四苦八苦している自分にタゥは歩幅を合わせてくれたのだ。
私は、感謝の言葉を返した。
にしても、ここは住宅に比べてもかなり大きい。
どうやって作ったのか疑問だが、まぁ追々わかるだろう。
とにかく中へ入ってみる。
そこは、一言で言えば、農場だった。
円形に乳白色の柵が並び、多くの亀で賑わっている。
建物のドームは、自宅よりは簡素に作られてて一面赤茶けている。
天井からは赤白い明かりが射す。
ただ、農場というには物足りなかった。
そもそも、柵の中には亀以外の生き物がいなかった。
いや、ひとりの亀が沼に脚を突っ込み掴み出した。
「え゛っ」
甲虫だった。そこまではよかった。
いや、よくはないのだが、そこからが驚いた。
なんとそのまま食べてしまったのだ。
バリバリと小気味いい音が聞こえてくる。
「おい、なに呆けてるんだよ。さっさと捕まえようぜ。」
既に沼から脚を抜いていた友人に咎められてしまった。
慌てて自分も沼から這い出し追いかけていく。
柵を乗り越えるも、戸惑う。
早くも友人は甲虫を捕まえ、咀嚼する。
バリバリ
先ほどよりも近いからかよく聞こえる。
嫌悪感よりも、食欲をそそる音に聞こえてきた。
早速捕らえてみようと思うも、そこでまた壁にぶち当たる。
沼の中にいる甲虫がどこにいるかわからないのだ。
とりあえず、手探りに探してみる。
「あー、それだと逃げちまうじゃねーかよ。本当に具合悪いのか?」
またも心配されてしまった。
そして、友人が沼に脚を突っ込み甲虫を掴み出した。
なにかの手品でも見せられているのだろうか。
その甲虫をありがたく受けとった。
独特な香りがする。
口に運び、咀嚼する。
バリバリ
うん、淡白だ。
まぁ、そのままの味なのだから、仕方がない。
よく噛み締めれば旨味が出てきた。
これはこれでいいかもしれない。
友人は、柵から出て行った。
1匹で充分なのだろうか?
それがルールなのかもしれないので、とりあえず自分も柵から出て行く。
「じゃー、俺は帰って寝る。お前も寝とけや。」
私は、ケツをど突かれて強制的に帰らされるのだった。