親しき仲の会話
「ようムゥ、出かけるのか?」
声をかけられた。
聞き慣れないようで聞き慣れたような言葉だった。
そうか。私はムゥというのか。
「タゥ。…?あぁ、散歩に出かけようとね。」
自然と、相手の名前が思い浮かんでいた。
それに、言葉もなんとなく話せていた。
「おう、俺は、今からメシを食いに行くところさ。またな。」
「!?っ、ウチ、今起きたばかりでお腹空いてたんだよ。案内…いや、一緒にいこう。」
食料をどう確保しているのか、気になったため、便乗することにした。
「そうなのか?じゃ、いこうぜ。……ん、どうした?」
「えっと、まだ眠気が取れないみたいでね。このままだと迷いそうで。先行ってくれる?」
「んだぁ、大丈夫か?メシ運んで来てやってもいいんだぞ?」
「大丈夫。ちゃんと歩けるから。」
さっきまで歩くのさえも苦労した者の言葉である。
と、自嘲しつつ見られていなくてよかったと思うのだった。
2人して歩きながら、改めて空を見ると、陽のようなものは中天にある。
このような時間まで寝ていたのか。
「タゥは、今まで何してたの?」
「俺はさっきまで寝てたさ。お前と違って迷わないけどな。」
そう、笑い飛ばした。
どうやら、普通のことだったようだ。
いや、まだわからないが。
これ以上何を話せばいいかわからなかったので、とりあえず、夢として、人が棲む世界のことを話してみた。
「あいかわらずおめぇの夢は、現実離れしてんなぁ。ま、夢ってそんなもんだけどよ。それ以上だぜ。」
どうやら、こちらの自分は早くも人の世界を認識していたようだ。
というよりも、こっちの世界のことを夢としてではなく、違和感なく受け入れてしまっていることに今更ながら気づいた。
まぁ、これはこれで夢の楽しみ方だろうと認識して。
いくらか話していると、目の前には住宅とは違う大きな建物があった。