世界を歩む
外に出れば、突風が吹き荒れた。
いや、豪風の中に自ら入ったのだろう。風がやまない。
地面を掴んではいるが、この中では脚を上げれば飛ばされるだろう。
身を低くし、なんとか凌ぐ。
改めて見渡せば、ゆっくりながらも歩く者がちらほらといる。
もちろん、亀だ。
ひとり、不思議そうな目をしながらこちらを見ながら歩いているがどうやらこちらに来る様子はない。
何故ゆっくりながらも歩けているのか。
彼らの足元を見れば納得した。
地に脚を沈めていたのだ。
早速ひとつひとつ脚を沈めていく。
なるほど。よくできた身体だ。
沈まない為のカンジキ構造だと思ったら、飛ばされない為のものでもあるとは思わなかった。
脚を沈めれば流線型の甲が風を受け流す。
これでなんとか歩けるようにはなった。
"この世界を巡り、様々なものを見てみたいものだ。"
そんな探検欲が湧いてきた。
まず、目につくのは、住宅である。
亀の流線型が1番風を受け流すのに適しているためか、甲と同じ形状である。
そして、真上に小さな窓がある。まぁ、ここからでは見えないが。
振り返れば、もちろん自分の住宅がある。
外壁は内側と違い硬いようだ。
空気はあいも変わらずゆらめいている。
甲で壁をコツコツと叩いてみる。
うむ、いい音をしている。
さて、そんなことはおいておくとして、これからどうしようか。
とりあえず集落を出てから決めようか。
私は、ゆっくりと歩き出した。
「ようムゥ、出かけるのか?」