第1章1-3 反撃開始
絶望に抗えなくなっていたとき、バルガが現れた。
「すまねぇな。レイン」
バルガが謝罪した。
「おっちゃん、遅ぇよ。こっちは死にかけたんだぞ」
レインは安堵して言った。
「でも、一つ悪い知らせがある。それは、俺はもうこの剣を振るうことができない」
バルガは言葉を続ける。
「俺の腕には傷が残っていてな、それが原因でハウンドを辞めた。
さっきの一太刀が限界だった。だから、お前が使ってくれ。
レイン!」
バルガは辛そうに言った。
「む、無理だ。俺はハウンドでもないんだぞ。しかも木剣しか
振ったことがねぇ」
レインは自信無さげに言った。
「これからハウンドになる人間がそんな弱気なこと言ってちゃならねぇ。
諦めたらそこで全て終わるんだ!!」
バルガが一喝した。
その言葉で目が覚めた。
「分かった。ハウンドになるって決意したんだ。
こんなところで終わってたまるか!」
そう言うと、バルガから剣を受け取った。
ズシリと重い。
「お、重い・・・」
声が漏れる。
「この巨剣は相当重い。だから、地面に擦るように振るうんだ」
バルガからアドバイスを受ける。
そして、バルガのアドバイスどおり地面を擦るようにして
移動して剣を振るう。
しかし、重すぎてゆっくりにしか振るえない。
そのタイムロスの間にデフュロスは軽々と避ける。
そしてデフュロスは突進を繰り出した。
避けようとしたものの、剣が重くて回避が間に合わない。
体全体に重い衝撃がはしる。
「くっ!」
歯を食いしばって衝撃に耐える。
しかし、一撃で死ぬような攻撃を喰らっても耐えることが出来た。
レインは不思議に思った。
「その剣には特殊なスキルが宿っている。
その能力は持ち主の受けるダメージを減らすことができる。
だから、一撃では死ななかったんだ」
バルガが説明した。
それは嬉しい誤算だが、何回も喰らってしまうと死に追いやられる。
「でも、この剣重くて振るえないんだよ」
レインが訴える。
「落ち着け、レイン。この剣にはもう一つスキルが宿っている。
それは持ち主の身体能力強化だ」
「さっきはそんなもの発動してなかったぞ」
―――あと、それを先に言えよ。
そう思いながらも耳を傾ける。
「いいか、レイン。体内の魔力を剣に集中させるんだ。
全ての雑念を振り払え。何も考えるな。
剣だけに意識を集中させろ。そうすれば剣はお前に応えてくれる」
「ああ、分かった。やってみるよ」
そう言うとレインは魔力を剣に集中させる。
―――剣に集中。集中。集中。
―――こんなやつに勝てるのか?
―――止めろ。そんなこと考えるな。
―――雑念を振り払え。集中!集中!集中!
そのとたんレインの回りが明るく光った。
「何が起こったんだ?」
レインは何が起こっているのか分からず焦る。
すると何者かの声がした。
―――おい、小僧。儂は封竜剣ディモンド。そなたは何を望む?
―――剣が喋っているのか?
そういう疑問が頭を過る。
しかし、そんなこと考えてる暇もない。
「俺は、力が欲しい。そんな大きな力で無くたっていい。
この最悪な運命に少しでも抗える力が欲しい。
俺は自分の夢や希望を諦めたくない。
終わりにしたくないんだ!!」
そう必死に答える。
「お主何処かで・・・、まあ良い。
分かった。お主の望み叶えてやろう」
そうディモンドが言うと、辺りが一気に明るくなり、そして現実の
風景に戻された。
「何だったんだ、今のは」
「どうしたんだ、レイン。何かあったのか?」
「ああ、剣が話しかけてきた」
「へぇ、あの剣がねぇ」
バルガは不思議そうにそう言った。
レインは己の変化に気がついた。
「ん?体が・・・軽い!」
「良かったな、レイン。剣が応えてくれたみたいだな」
試しに剣を振るってみると、今までとは大きく違った。
―――これなら!いける!
「さあ、待たせたな、デフュロス。こっからが本番だ!」
そう言い放って駆け出した。
さあ、反撃開始だ!!
毎回1000字~2000字位で投稿したいと思います。
よろしくお願いいたします。




