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冒険譚:ダンジョンズ:  作者: 深宮マサ
第2章 ダンジョン攻略
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第2章番外編「秋の収穫祭」上

ハロウィンを題材にして、番外編を書いてみました。



依頼を終えた4人は次の日の朝、街の賑わいに目を覚ました。

街は橙色のランプやコウモリの装飾、そしてカボチャで飾られていた。

朝早くだが、人々が忙しなく行き来している。

様々な店もいつもより早く開店している。

そこには非日常が広がっていた。


「なにかあってるのか?」

起きたばかりのレインは目をこすりながら言った。


「今日は年に一度の秋の収穫祭ですよ」

クレアが答えた。


秋の収穫祭。

それは、王国ゼルクで秋にある大イベント。

作物の収穫が多い秋にその収穫を祝う祭りだ。

たった1日しか開催されないが、この日のために街の人々は何日もかけて準備をする。

一年のなかでも最も街が活気づく日と言っても過言ではない。


「最近街が妙にざわついていると思ったらこれだったのか」

シオンが2階から下りて来ながら言った。


「皆さん、ギルドに行きませんか?何かあるみたいですよ」

4人の中で最も早起きだったアンネローゼが言った。

朝早くに街へ出て、情報を聞いてきたのだ。


「何かって何なんだ?」

レインが首を傾げた。


「それは行ってからのお楽しみですよ」

アンネローゼは少し笑って答えた。



4人は朝食を済ませ、身支度をした。

そして、家を出発した。


――――――――――――――――――――――――――


街を歩いていると、いつもとは違う風景が目につく。

街は橙と黒で飾られていた。

収穫祭の影響で、いつもより人の往来が激しい。

街全体がこの日を待ち望んでいたような盛り上がりを見せている。

普段は夜からしか開店しない酒場ももう開店している。

今日という日が店にとっては一番の稼ぎ時なのだろう。


そんな風景を堪能しながら、4人はギルドへの道を歩いて行く。


少し歩いて、ギルドに到着した。

ギルドの扉を開くと、そこにも普段とは違った雰囲気が漂っていた。

まず、いつもよりハウンドが多い。普段の3倍以上は集まっている。

そして、ギルドは熱気に包まれていた。



「今年も来るぞ」

「この日を楽しみにしてたんだ」

ハウンドたちからそんな声が聞こえてくる。


「おい、アンネローゼ。今から何があるん――」

レインがアンネローゼに尋ねようとした。

しかし、それは周りのハウンドの歓声によって遮られた。


「ただ今より、本日限定のダンジョンを開放します」

受付の女性が館内放送で伝えた。


次の瞬間、

「「「おおおおおおおおお――――――――!!!」」」

ハウンドたちが一斉に声をあげた。


そして、そのダンジョンへと繋がる転移門が出現した。

ハウンドたちは我先にと転移門の中に入っていった。


それをレイン、シオン、クレアは呆然として見ていた。

ギルド内に残ったのはレインたちを含め、数名だけだった。

先ほどの事が嘘だったかのようにギルド内は静まりかえっていた。



「収穫祭限定のダンジョンらしいな。行ってみる価値はあると思うが、どうする?」

レインが提案した。


「俺はレインの意見に賛成だ」

シオンが言った。


「私もです」

クレアも同意した。


「私はそれ目的でここに来ましたから」


「じゃ、早速行くか」

レインが言った。


何かあってもいいように4人は既に冒険の準備を整えている。

冒険に必要な物は一通り持ってきている。


4人は転移門に足を踏み入れた。


一瞬のうちに、4人はダンジョンへと移動した。



―――――――――――――――――――――――――――――


――第1階層


「「でけぇ」」

それがレインとシオンのダンジョンに来てからの第一声だった。

一つの部屋ですら初心者向けのダンジョンの一階層分ほどはある。


このダンジョンは普通のダンジョンとは似て非なるものだった。


4人はしばらくその場を探索した。


ダンジョンは橙色の灯りで照らされている。

そのせいか、フロア全体が橙色に見えた。


「少し進んでみるか」

レインはそう言って、歩き出した。

それに3人もついて行く。


道を歩いて行くと、エネミーが出現した。

そのエネミーはゴブリンだった。

普通のゴブリンの体皮は深い緑色をしていると聞く。

しかし、出現したゴブリンの体皮は暗い橙色だった。


「話に聞くゴブリンとは違うな」

シオンが不思議そうに呟く。


「普通のゴブリンは緑色だよね」

クレアも不思議そうな顔をした。


「オレンジ色のゴブリン、なるべく時間はかけたくありませんね」

アンネローゼは双剣を構えた。


「そうだな。さっさと倒してしまおう」

レインも剣を構え、ゴブリンに斬りかかった。


それに続いてアンネローゼも双剣を振るった。

計4体いたゴブリンは一瞬にして消滅した。


「ん?なんだこれ?」

シオンがゴブリンが落とした物を拾った。

それはコアではなかった。


「コアじゃなさそうだけど、何かな?」

クレアが横から覗き込んだ。


ゴブリンが落とした物にコアのような輝きはなかった。

透き通った色をしておらず、石のように歪な形をしていた。


「まあ、一応持って帰るか」

シオンはそれをポーチにしまった。


4人はさらに奥へ進んだ。

ほとんどのハウンドはレインたちよりも先に出発したため、

道中でハウンドを見かけることはあまりなかった。



15分ほど歩いた所で、レインたちは大きな扉を見つけた。

中からは人とエネミーの声が聞こえてきた。

どうやら、ハウンドとエネミーが戦っているようだ。


「それじゃ、開けるぞ」

レインはそう言って扉を押した。


30人ほどのハウンドが巨大なエネミーと戦っている姿がそこにはあった。

エネミーは高さ20メートルを超えている。

その姿は先ほど戦ったゴブリンとよく似た見た目をしていた。

ゴブリンが巨大化したような姿だ。


レインたちはその巨大さに圧倒された。

ただ、呆然と立っているだけだった。

すると、どこからか声が掛かった。


「君たち、一緒に戦ってくれないか?

 これだけのハウンドがいても勝てるかどうか分からない。

 戦力はなるべく多く欲しい」

名も知らない青年が頼んできた。


4人は顔を見合わせて、頷いた。


「俺たちにできることならやらせてくれ」

レインは言った。


「ありがとう!

 作戦を手短に伝えるよ。

 まず、エネミーの足や目を攻撃して、体勢を崩させる。

 そしてその隙にダメージを与える、こんな感じだ」

青年が説明した。


「分かった、やってみる」

レインは答えた。


「ご武運を」

青年はそう言って、戦いに戻った。


レインたちも巨大なゴブリンに向かって走り出した。


何人ものハウンドがゴブリンの足に攻撃している。

レインはゴブリンの足付近に寄ると、剣を抜刀した。

そして、抜刀の勢いを乗せ、剣を降り下ろした。

ゴブリンの足から鮮血がほとばしる。


レインは斬撃を続けた。


しばらくすると、足への攻撃に耐えかねたゴブリンが横転した。


「今だ!やれぇぇぇ!」

一人のハウンドの声で、一斉にハウンドは全身に攻撃を始めた。


少し時間が経って、ゴブリンがゆっくりと起き上がった。

ゴブリンの目は怒りに満ちていた。


ゴブリンはその手に持った棍棒を自らの足元目掛けて降り下ろした。


ハウンドたちはすぐさま後ろに跳びすさった。

元いた場所は巨大なクレーターができていた。

そのような一撃を食らったら、ただでは済まされない。


レインの頬を冷や汗が伝う。

他のハウンドは自分達よりもハウンド歴が長い。

それゆえ、防具も耐久性に優れた物を使っているだろう。

しかし、レイン、クレア、シオン、アンネローゼはハウンドになってまだ日が浅い。

決して耐久性が高いとはいえない、むしろ低い防具で攻撃を食らったらどうなるかは明らかだ。


レインの頭に「諦める」という言葉が過るが、首を横に振ってその言葉を押し殺した。


レインは剣を構え直した。

すると、後方から銃弾、砲弾、矢、魔法の雨がゴブリンに降り注いだ。

遠距離武器を使うハウンドたちが攻撃を開始したのだ。

シオンとクレアもその中にいる。


数秒が経って、攻撃の雨が降り終わると、またゴブリンが倒れこんだ。


「今だ!一気に畳み掛けるぞ!」

一人のハウンドが先陣を切った。

それに続いて、他のハウンドも走り出した。

レイン、アンネローゼも同じだ。


二人はゴブリンの近くまで寄ると、そのままゴブリンの体に乗った。

そして、

「はあああぁぁぁぁッ!」

「いっけえええぇぇぇぇ!」

レインとアンネローゼは剣を振るった。

剣はゴブリンの体を切り裂いた。


それがとどめの一撃になった。


ゴブリンの体がびくりと跳ね、動きが止まった。

そして、光の塵となった。


「「「おおおおおおおおお!!!」」」

ハウンドたちから歓声が上がった。



レイン、クレア、シオン、アンネローゼを含むハウンドたちは第1階層を突破した。






番外編はまだ続きます。


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