第2章2-10 シオンの隠し玉
「「――っ!」」
レインとシオンは驚愕した。
先ほどまで目の前にいたシェイドドレイクが姿を消したのだ。
シェイドドレイクが消えた事に驚いて一瞬、レインの反応が遅れた。
背中から大きな衝撃を受けて、吹き飛ばされる。
咄嗟に受け身を取るが、後方の壁に叩きつけられた。
「ぐっ!」
レインから苦悶の声が漏れる。
「レインッ!」
シオンが叫ぶ。
叫んだ瞬間にはシェイドドレイクのターゲットはシオンに移っていた。
シェイドドレイクは地面を蹴って、シオンに突っ込んでくる。
シオンはそれを紙一重で回避した。
その間にレインが体勢を立て直した。
そのままシェイドドレイクとの間合い詰め、剣を横に薙いだ。
しかし、シェイドドレイクは軽々とそれを回避した。
「ちっ!速いな」
レインは大剣を使うため、どうしても一撃一撃が遅くなってしまう。
威力が高いぶん、攻撃速度があまり速くない。
シェイドドレイクがその強靭な爪を降り下ろした。
レインは大剣の腹で爪を受け止める。
金属が引っ掻かれた音がして、火花が散る。
「シオンッ!受け止めている間に射撃を頼む!」
レインが叫んだ。
「了解ッ!」
シオンは銃のスコープを覗き込み、連続で射撃をした。
銃弾がシェイドドレイクに当たる度、電撃のようなものが散った。
レインは爪を押さえられなくなったため、後ろにステップを踏んで回避した。
その結果、爪は空振りに終わり、爪が地面に突き刺さった。
レインはそれを好機と見て、シェイドドレイクの頭に向かって大剣を振り下ろした。
大剣による重く強烈な一撃。
シェイドドレイクの頭が縦に揺れる。
レインの一撃によろめいて、シェイドドレイクは後ろに下がった。
その刹那、シェイドドレイクの体がビクンと跳ねたかと思うと、
痙攣したまま身動きが取れなくなった。
レインは唖然として、ただ呆然とその場に立っていた。
「ふぅ、やっと効いたか。何ぼーっと立ってるんだ?」
シオンはニヤリと笑った。
「シオン、何したんだ?」
レインは我に返って言った。
「言ってなかったっけ?あれは麻痺作用のある弾丸だよ。
特別に用意しておいて良かった」
シオンが説明する。
「ともあれ今がチャンスだ、レイン。
ありったけの斬撃を叩き込んでこい」
「最初から言っとけよな。分かった、後は任せろ」
レインは麻痺状態のシェイドドレイクに駆け寄り、斬撃を繰り返した。
袈裟斬り、横薙ぎ払い、振り下ろし、回転斬りと様々な方向から斬りつけた。
さらに、跳び上がり、勢いの乗った一撃を叩き込んだ。
シェイドドレイクの顔に大きな傷ができる。
そして地面に叩きつけられた。
「ふぅ、これでどうだ!」
レインは肩で息をしている。
重い剣を連続で振るったのだから無理はない。
「油断するなっ!」
シオンが叫んだ。
次の瞬間、シェイドドレイクが起き上がり、下から上に爪を振り上げた。
レインの横顔を掠めた。
掠めた所から、血が吹き出す。
幸いかすっただけなので、出血はさほど多くない。
レインは急いで後方に下がった。
シェイドドレイクの目は紅く光輝いていた。
鱗と毛が逆立っている。
レインの攻撃で怒りが頂点に達したらしい。
「だから油断するなって言っただろ?
次は命が無いかもしれないぞ」
シオンが注意した。
「すまない。気を付ける」
二人は武器を構えた。
階層ボス戦第2ラウンドの幕開けだ。




