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冒険譚:ダンジョンズ:  作者: 深宮マサ
第2章 ダンジョン攻略
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第2章2-8 二人で掴み取った勝利


アンネローゼは手に持った双剣で応戦していた。

狼の後ろに回り込んでは、刃の通る後脚を切りつける。

そして回避。

深追いはしない。

今はクレアの魔法が完成するまで、時間を稼ぐだけだ。


双剣は一撃一撃の威力が低い代わりに、手数が多いのが魅力だ。

さらに多くの斬撃を与えることが出来るので、そのぶん相手の注意を引き付けやすい。

アンネローゼは相手の注意を引き付けるには適任といえる。


アンネローゼはヒットアンドアウェイを繰り返す。

狼はどんどん傷ついていった。

それに比べアンネローゼにはほとんど傷が見当たらない。

アンネローゼが確実に攻撃を回避していった証拠だ。


次の瞬間、狼に一瞬の隙ができた。

それを好機とみたアンネローゼは狼に駆け寄り、跳び上がった。


「行きますっ!」

そう言って、狼の眉間に向かって剣を振り下ろした。

狼が後ろに大きくのけ反る。

アンネローゼが追撃をしようと近づいた、その時だった。


「ウオオオオォォォォォォォ―――ンッッ!!」

狼が咆哮した。

アンネローゼは至近距離で咆哮を浴びたため、堪らず耳を塞いでうずくまった。

うずくまって身動きが取れない中、狼が強力な前足を振るった。

アンネローゼに防御の術はなく、まともに前足の一撃を食らってしまう。

後方に吹き飛ばされ、地面を転がった。


「――っ!アンネローゼっ!」

クレアが叫ぶ。

アンネローゼはゆっくり、弱々しく立ち上がった。

クレアがアンネローゼに駆け寄ろうとする。

しかし、それをアンネローゼは手を前に出して静止した。

「私のことはいいから、そっちに集中して」と無言で出した手がそう語っていた。


クレアは一瞬躊躇って後ろに戻った。

そして魔力集中を再開した。

―――待ってて、アンネローゼ。もう少し、もう少しだから。

クレアの頭上の魔法球はみるみる大きくなっていった。

もうほぼ完成形に近い。

クレアは最後の仕上げに入った。



―――――――――――――――――――――――――――――――――


「くうっ!」

アンネローゼは無理しながらも立ち上がった。

アンネローゼの横腹からは血が出ている。

このまま血が出続ければ、死んでしまう。

アンネローゼは剣に魔力を集中させた。

剣からは熱気が溢れていた。

そしてその剣を躊躇なく血が出ている横腹に押し当てる。


「くうっ!痛いっ!」

肉が焼ける音がして、止血が完了した。

アンネローゼの顔には玉のような汗が出ている。

剣を握るが、いつもより重く感じた。

まともに剣を振るえるか分からない。


唐突に狼が跳び上がった。

そして空中からアンネローゼに狙いを定め、突っ込んでくる。

アンネローゼは身を横に投げた。

止血したての傷の痛みが容赦なく彼女を襲う。

アンネローゼは痛みで顔を歪めた。

しかし、倒れている場合ではなかった。

直ぐに立ち上がると、狼から距離をとる。


―――このままじゃ身がもちませんね。

アンネローゼは苦笑いをした。


「アンネローゼ!準備が出来た。そこ離れてっ!」

クレアから合図があった。

アンネローゼは全力で下がった。


そして、クレアの頭上にある巨大な球体を見て驚愕した。

黄色のような白のような色の球体が浮いている。

その球体は少なくとも狼の体よりは大きかった。

その球体からはかなりの魔力を感じた。


「くらえぇぇぇっ!!」

次の瞬間、クレアが杖を振り、魔法球を放った。

狼は魔法球に気がついて逃げる。

しかし、その球体は狼を追尾した。

そして、狼の体に魔法球が炸裂する。


狼が横に倒れた。

「私が行きますっ!」

アンネローゼは駆け出した。

「これで終わりです」

狼との距離を詰め、その顔に斬撃を繰り返した。

目にもとまらぬ斬撃。


クレアには美しい乱舞に見えた。

さらに、アンネローゼに紅いオーラがかかっているように見えた。

そしてアンネローゼは最後の一撃を放った。

周りの空気が振動し、衝撃波が生まれる。



狼のエネミーは光の塵となって消えた。



「アンネローゼ、終わったよ」

「そうですね。かなり体を酷使してしまいました。

 でも、私たち勝てたんですね」

二人は地面に座り込んだ。

もうしばらくは立てそうにない。


「アンネローゼ、早く回復しないと」

クレアはそう言って回復魔法を使った。

完全ではないが、傷が治癒した。

「ありがとうございます」

アンネローゼがお礼を言った。



「そう言えばレインたちはどうなったかな?」

クレアが言葉をこぼした。

「あの二人なら、きっと大丈夫ですよ」



二人は笑い合った。




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