第1章3-6 決着の時
「クレア、遅くなってすまない。後は任せてくれ」
レインは言った。
「もう!遅いよ!あと少し遅れたらどうなってたことか。
でも、戻ってきたんだね。後は任せたよ」
クレアはそう言ってからあることに気がついた。
そして、レインに質問した。
「レイン、その目、どうしたの?」
レインはもともと青い目をしていたが、今はその目は紅く染まっている。
「さあ?よくわかんないな。でも、大丈夫だと思う」
そう言ってレインは駆け出した。
「おい!かかってこい!」
レインはファルガレオを挑発した。
「グオァァァッ!」
ファルガレオも威嚇する。
そして、レイン目掛けて、突進を繰り出した。
それをレインはギリギリまで引き付けて回避、そしてすれ違いざまに一閃。
ファルガレオは少しバランスを崩したが、転倒はしなかった。
ファルガレオは態勢を立て直し、炎球を連続で放つ。
「はあああぁぁっ!」
レインはファルガレオに向かって走りながら、飛んでくる炎球を全て剣で切り伏せた。
そしてファルガレオとの間合いを詰め、剣を横に薙ぐ。
ファルガレオの横っ面を吹き飛ばし、ファルガレオは態勢を崩した。
そこにレインは的確にそして素早く斬撃を加える。
クレアも観客も驚愕した。
あんな重さの剣をあんなスピードで振れる訳がない。
明らかに人間の動きを超越している。
「あれは本当にレインなの!?」
クレアはにわかにも信じられないといった様子で言った。
さっきまで苦戦していたレインはどこにもいなかった。
今のレインはまるで全くの別人の様だった。
ファルガレオが反撃をするが、レインは最低限の動きで確実に回避した。
回避した後も斬撃を放つ。
レインが斬撃を加えていると、レインの持っている剣にヒビが入った。
そして、粉々に砕け散った。
レインの斬撃のスピードとパワーに耐えきれなくなってしまったのだ。
「ちっ!まずいな」
レインは一旦後方に下がった。
武器がないとあまりダメージは与えられない。
レインは少し考えてから、あることを思いついた。
数日前、闘技アリーナでハウンドが魔力で武器を作り出していたことを思い出した。
―――出来るか分からないが、やる価値はあるな
レインは自分の中にある魔力に意識を集中させた。
頭の中で剣を思い描く。
次の瞬間、目の前に魔力で出来た剣が現れた。
レインはその柄を持って剣を構えた。
―――おお、上手くいったみたいだな
魔力で出来ているせいかあまり剣に重さを感じない。
レインはファルガレオに向かって走り出した。
ファルガレオとの間合いを一気に詰め、剣を振るう。
先ほどよりも剣速が上がっている。
目にもとまらぬスピードで剣を振るう。
剣がファルガレオの鱗に触れる度に、火花が散り、鱗が削れていく。
ファルガレオはその大きな翼を羽ばたかせ、空中に飛び立った。
そのまま上昇し、空中で停止した。
空中から攻撃され続ければ、いずれやられてしまうだろう。
生憎、レインは地上から空中にいる敵に攻撃する術は持っていない。
レイン自身、まだ自分の身体能力がどれくらい上がっているのか分からない。
―――じゃあ、ちょっと賭けてみるか
心の中でそう呟き、思い切り地面を蹴って、ジャンプした。
すると、普通人間では到達出来ない高さまで跳躍した。
常人を遥かに越えた跳躍力だ。
レインもこれには驚いた。
レインは少し困惑しながらも冷静になり、空中で態勢を立て直した。
そしてファルガレオの眉間に剣を降り下ろした。
上からの強い衝撃により、ファルガレオは空中でバランスを崩し、落下した。
―――ここまで跳べたはいいがどうやって着地しよう?
そう考えているうちに、レインはどんどん落下していく。
特に何も思い浮かばず、結局両足で着地した。
足にかなりの衝撃が走った。
かなりの高さから着地したので、地面にクレーターのような穴が空いた。
「っ!いってぇ!」
思わず声が出る。
そんなことを考えている暇はない。
―――ファルガレオはどうなった?
レインがファルガレオの方を向くと、ファルガレオは横倒しになっていた。
あの高さから落ちれば、強靭な体をもつエネミーと言えどただではすまない。
レインはそれを好機思い、剣を構え、力を溜めた。
次の瞬間、ファルガレオが起き上がった。
落下の衝撃でかなりのダメージが入ったのか今にも倒れそうで、弱々しい。
だが、ファルガレオも最後の力を振り絞り、巨大な炎球を放とうとする。
「クレア、俺の後ろに下がれ!」
「わかった!」
クレアはレインの後ろにまわった。
そして、レインは剣に溜めたエネルギーを一気に解放し、放出した。
それに合わせてファルガレオも炎球を放つ。
「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「グワアアアアアアアァァァァァァァ!!!」
二つの大きなエネルギーがぶつかり、衝撃波を発生させた。
レインとクレア、ファルガレオともにその衝撃に対して必死に堪えた。
闘技アリーナの中心で、二つのエネルギーは押したり、押し返されたりを繰り返している。
遂に決着の時が訪れた。
レインの放ったエネルギーがファルガレオの炎球を飲み込み、ファルガレオに襲いかかった。
エネルギーはファルガレオを包むと、だんだんと小さくなっていった。
そして、一気に爆散した。
ファルガレオは光の塵となって消えて逝く。
レインとクレアが勝利した瞬間だった。
お読み頂いてありがとうございます。
まだよく小説の書き方が分かっておりません。
これから努力を重ねていきたいと思います。
次の話で第1章は完結となります。
次も読んでいただけると嬉しいです。




