第1章3-3 ファルガレオの猛攻
レインとクレアは気を引き締め、武器を構え直した。
「相手がどのような攻撃をしてくるのか分からない。
最初と同じように、牽制から始めた方がいいと思う」
レインが言った。
「私もそう思う。牽制は任せて」
「分かった、よろしくな。じゃあ、行くぞ!」
レインはそう言うと走り出した。
「グルルゥ」
ファルガレオは威嚇している。
そして、走っているレインに狙いを定め、火球を撃ち始めた。
―――通常時よりも火球のスピードが上がっている!
「くっ!」
レインは紙一重でそれらを回避した。
レインに休む暇も与えず、ファルガレオは攻撃を繰り返す。
次の瞬間、ファルガレオは突進してきた。
「まずい!」
レインはすぐさま抜刀し、剣の腹を突きだし、突進を受ける。
怒り状態のせいなのか、威力が先程よりも格段に上がっている。
剣だけでは全て受けきることが出来ず、闘技アリーナの壁に叩きつけられる。
「かはっ!」
口の中の酸素を吐き出したような声が出た。
それでも、剣を杖にしてなんとか立ち上がった。
立ち上がると目の前にはファルガレオの巨大な顔があった。
「くっ!ここまでか」
ファルガレオはレインに噛みつこうとした。
その時だった。
「これでも喰らえ!」
クレアが魔法を放ち、ファルガレオの気をレインから逸らした。
「引き付けてるうちに、体力の回復を!」
クレアが叫ぶ。
「すまない」
レインは少し離れた所で、体力の回復に努めた。
――――――――――――――――――――――――――――――
クレアはファルガレオを引き付けることに成功した。
「次は私の番だ!」
そう言って魔法を放つ。
無数の魔法弾はファルガレオに当たると、爆散した。
ファルガレオは負けじと火球を放つ。
火球と魔法弾がぶつかり、相殺する。
クレアはどの属性の魔法が効きやすいか試すために、
様々な魔法弾を放った。
まずは火の魔法。
魔法は吸い込まれるようにファルガレオの体に当たる。
しかし、ファルガレオにはあまり変化はない。
やはり相手も火を吐くので効かなかったようだ。
風の魔法、雷の魔法は火の魔法よりは効き目があったが、
あまり効いているようには見えなかった。
ファルガレオも黙っている訳ではない。
無数の魔法を浴びて、煩わしくなったのかクレアに向かって
突進を繰り返す。
クレアはそれを掻い潜って、魔法を放つ。
水の魔法、氷の魔法を放った。
どちらも同系統の魔法である。
これはかなり効いたようだ。
魔法が当たった瞬間、ファルガレオの体が大きく揺れる。
「このまま押しきる!」
クレアは水と氷の魔法を連続して放った。
「グオゥゥ」
ファルガレオがうめき声を漏らす。
クレアは魔法を放ち、畳み掛けた。
しかし、強力な魔法を浴び続けたせいで、さらにファルガレオが怒ってしまった。
そしてファルガレオは咆哮した。
「グオオオアアアァァァァ!!!」
至近距離で咆哮を浴びたクレアは堪らず耳を塞ぐ。
それが一瞬の隙になった。
ファルガレオが棘のある尻尾を降り下ろす。
―――まずい!
そう思ったが既に遅かった。
慌てて防御魔法を展開するが、間に合わない。
しかしその攻撃がクレアに当たることは無かった。
クレアに尻尾が降り下ろされる瞬間、火花が散り、ファルガレオの尻尾が弾かれた。
「クレア、引き付けてくれてありがとう。遅れてすまない」
レインがクレアとファルガレオの間に入って、ガードしたのだ。
「レイン、助けてくれてありがとう。あれを喰らってたら
かなりまずかった」
「さあ、ここから巻き返すぞ!」
二人は武器を構え直した。
その時だった。
ファルガレオの様子に変化が現れた。
ファルガレオの体が一回りほど大きくなり、皮膚が少し紫がかった。
その爪はさらに大きく、翼には棘が生え、今までより狂暴な姿に変わる。
「グオオオアアアァァァァァァァァァァ!!!」
ファルガレオは天に咆哮した。
そこにアナウンスが流れる。
「そのファルガレオは危険です。上位種に進化してしまいました。
ハウンドが討伐しに向かうので、ハウンドが到着するまで逃げて
持ちこたえて下さい!」
「まずい状況になったな。出来ることはやってみよう」
「分かった。どのくらい強くなってるのか分からない。
回避優先でいこう」
二人は上位種化したファルガレオに立ち向かう覚悟をした。




