ホラー【5】
「あ、足……?」
全員がその方を向く。
目を擦り、よく見ようと、スマホのライトを上へ移動させる。
辛うじて電池を残す街灯と共に浮かび上がる影。
「あっ、ついに現れましたーって感じか!?」
佑樹が興奮したような声を出した。
「な、何言ってんの! 興奮してる場合じゃないって!」
「こ、子供だよ……」
茶色くボロボロになった服を着た、男の子。
これが嘘だとしたら、やけに、リアルだ。
男の子が、首を、ちょこんと傾げた。
まばたきひとつしない。
うっすらと、笑ったような気さえした。
そのまま、振り返って歩いて行く。
「何、あれ……」
「ははっ、ついてこいってことなんじゃねーの? 面白そうじゃん」
一番に歩き出したのは佑樹だった。
小走りで、後を追っていく。
「お、おい佑樹、待てよ……!」
次に功太が続いた。
つられるように、真紀、奈央、私と続く。
後ろ姿を追いかけて着いたのは、大きな建物だった。
入り口の前に足をかけた男の子が、こちらを振り向く。
冷たい表情に、背筋が凍りつく。
左手の人差し指を一本立てて、それを口の前へもって行く男の子。
私たちにも見えるように、はっきりと、口許を上げた。
笑っている。
「何?」
奈央が聞き返すのも無視して、中へ入っていく。
「知らねえよ。喋んなきゃわからねえっつうの。とりあえずついて行けばいいんじゃね?」
強引な勇気に押されて、全員が中へ入る。
そこは、外が夜だということを忘れるくらい明るい場所だった。
「まっぶしい。目がチカチカする」
広い入り口。目の前に、大きな入り口がひとつ。
それを見て、佑樹が思わず「何だよこれ?」と声を出す。
入り口の前には男の子がいる。
すると、手のひらを口に当てて、肩を震わせた。
笑っているのか。
「あれ、なんかムカつかね?」
私の隣に立った功太が呟く。
「てか、ほんとに幽霊なのかな」
続けて奈央も呟いた。
男の子がまえにでると、一番前に立っていた佑樹に何かを渡す。
真紀がそれを覗き込みに前へ出た。
「何もらったの?」