ホラー【4】
「そうだね」
功太が答える。
門へ近寄っていくと、がらがらと音をたてて、大型のトラックが三台ほど通れそうな広さのそれを左右に開けた。
「案外、簡単に開くんだな」
園内に入っていく功太に続き、佑樹も歩き出す。
「ち、ちょっと、待ってってば」
私たちは少し躊躇いながら、二人の後に続いた。
園内に入ると、まず左手に受付があった。
汚れた紅白の縦縞のテントは裂けて、だらしなく垂れている。
横に扉がついていたが、もちろん覗く気はないのですぐに視線をそらした。
背の高い街灯が私たちを照らす、と言ってもほとんどは電池が切れたのか明かりがついていないのだが、残りの街灯はチカチカと点滅しながら光っているので、少し不気味だ。
まわりにはコバエのような小さな虫が集まっている。
「土地はそんなに広くないのね」
真紀の声が聞こえ、まわりを見回すのをやめてその方を向く。
真紀は受付と反対側に設置された園内の案内図を見ているようだった。
その後ろにまわって、同じように案内図を覗き込む。
「うわぁ、流石に汚いね」
デフォルメされて描かれたアトラクションの絵が数個あるようだが、砂ぼこりやらで薄汚れ、残念ながらそれらはあまり見えなかった。
「さ、肝試ししようぜ」
佑樹が言う。
「えー、結局やるんだ」
「当たり前だろ」
「でもどうするの?」
隅で園内を眺めていた奈央が、すっと肩のあたりで手をあげた。
「私ちょっと調べたんだけどさ、ここ、子供が消えるっていう噂があるらしいよ」
「え、何それ、聞いてないよ……」
「私も来るときに初めて知ったの。でも、まあネットの情報だし……」
真紀が着ていたパーカーのポケットへ手をやった。
そこからスマホを取り出すと、電源を入れる。どうやら検索をかけるようだ。
画面の上を、真紀の細い指はするすると滑っていく。
「あれっ、最悪。ここ電波悪いし」
右下の虫眼鏡のマークをした場所をタップしてから、真紀は唇を尖らせた。
眉を寄せて不機嫌そうに呟くと、スマホを持つ手を上の方へ伸ばして電波を確保しようとしている。
そのついでか、空を見上げた真紀が続けて私たちに言葉を投げ掛けた。
「それにしても暗くない? なんか怖くなってきたんだけど」
それに奈央が答える。
「確かに。私充電減るのやだからさ、真紀がライトお願い」
「あー、はいはい」
電波の回復は無理だと悟ったのか、めんどくさそうに腕を下ろすと、スマホのライトをつけてくれた。
明るくなった周囲に、佑樹や功太もこちらを向いた。
「うっわ、ルール違反だぜ、それ」
「いいじゃない。肝試しの時にはちゃんと消すわよ」
黄色に近い光が前方を照らす。
「ここの園内を一周するってのでいいんじゃね?」という功太に、「んじゃあ、二人と三人に分かれて……」と佑樹が提案しようとしたときだった。
「……ねえ、あれ、何?」
真っ直ぐと向こうの地面に伸びた光の線。
薄くなって行くその光の一番先に、なにかがある。