ホラー【3】
「結月~、お母さん、もう寝るからね?」
「うん、私もすぐ寝るよ。おやすみ~……」
机に向かっていた私は、自室のドアを開けて眠そうに顔を出したお母さんに向けて返事をする。
机の上に広がる夏休みの課題を眺めたあと、時計を見た。まだ九時を少し回ったところだった。
すぐ寝ると言ったが、まだ寝る気はない。
それに今日は__
__ピロンッ
その時、横に置いていたスマホの通知音が鳴った。
椅子の背に体を預けながら、私はゆっくりと、それを手に取る。
ロック画面を開くと、メールの差出人である佑樹の名前が表示された。
宛先は自分だけではなく、いつものメンバーである残りの三人にも送られている。
グループメールだ。
「やっぱり、みんな行くんだ……」
ピコピコという通知音と共に出てくる吹き出しの文字を目で追いながら、呟く。
『結月も行くでしょ?』
奈央のそんなメールで、会話が一瞬止まった。
私は画面をタップすると『うん、行くよ』と送った。
そう。
__それに今日は、金曜日。
裏野ドリームランドで、肝試しの約束をした日だった。
音をたてないようにそっと玄関の扉を開けると、外に出た。
むっとした空気が全身にあたり汗が出る。
薄いレースの胸元をつかんでパタパタとあおぐと少しだけ涼しくなるが、あおぐ手を止めれば、また服は肌に張り付いてくる。
空には数個、星が見える。月は雲に半分ほど隠されながらも、黄色く光っていた。
ズボンについている大きめのポケットからスマホを出し、地図を開く。上の入力画面に『裏野ドリームランド』と入力してみた。ここから二十分ほど。廃園になっても地図には登録されたままなのかと思って目的地である場所を拡大してみるが、その場所に建物らしき影はなかった。
なんだか不気味だ、と思ってしまうのは、そこへこれから肝試しにいくからか。
「あっ、来た来た~」
スマホから顔をあげると、前の暗闇から誰かが走ってきた。
声からして奈央だとわかる。
スマホに視線を戻すと、自分はもう目的地にいるようだった。
「みんなもう集まってるよ! 結月も早くこっちおいで~」
地図アプリを閉じて履歴から消すと、とびはねながら手招きする奈央に苦笑しながら、私は小走りで近寄っていった。
「遅いぞ~」
「ごめんごめんっ」
奈央の後をついて少し歩くと、先に待っていたメンバーとも合流できた。
まだ集合時間までには20分ほどあるが、佑樹はふてくされたように唇を尖らせている。
「んで、ここで肝試しするのね」
腕を組んで立っていた真紀が、顎で私たちの横を指した。
つられて見ると、そこには深緑色の大きな門がある。遊園地の入口だ。






