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妻の散文  作者: 朝な夕な
9/11

嬉しいだけじゃ物足りない。

 先日、誕生日を迎えました。

 もう30歳をすぎているのでおめでたいものでもないのですが、宴会好きの家族に招待され、旦那さんと娘と実家に行きました。

 おいしい物をいっぱい食べて、楽しく酔っぱらって、20時頃。そろそろ子どもを寝かせる準備をしなきゃと考えていると、旦那さんが見当たりません。

 オムツ替えから逃げたのか? などと考えていた私の元に、なんと旦那さんがケーキを持って登場。

「キャー」と盛り上がる家族も、旦那さんがお小遣い0円生活をしていることを知っています。上司からもらう飲み物代を地道に溜め込んで購入したケーキは、まさに努力と貧乏根性の結晶。

 性格の悪い私でも、流石に感動しました。

 何より、照れ屋な旦那さんが私の家族の前でサプライズを決行するなんて。何だか胸が熱くなってきます。

 ここまで聞くとただのノロケに聞こえますが、本題はここからです。


 母が私に、「ホラ、写真撮りな」と急かします。私は間髪入れず「え、いいよ。早く切っちゃおう」と返しました。

 呆気にとられる母。だって私、インスタとかやってないし。

 そもそも、苺の生クリームデコレーションケーキ。お祝い事といえば定番ですが、これ去年ももらったしね。チョコレートでできたネームプレートには私の名前。うん。当然一緒だよね。

 同じところで購入しているので、去年もらった誕生日ケーキとデザインはほぼ一緒。これ毎年写真に残していっても、同じケーキばかりで代わり映えしませんよね? むしろこれ幾つの時だったかな~って時系列分からなくなるパターンですよね?

 性格の悪い私は、それを無駄と判断しました。

 かといって、これ以上のサプライズを要求している訳ではありません。お金がないのは私が一番よく知っているし、大好きなケーキを買ってくれただけでも胸がいっぱいなんです。

 なので私は考えました。お金がないなりに、サプライズする方法を。

「――――ネームプレートを工夫する、とか?」

 旦那さんと上の姉が食い付きました。

「どういうこと?」

「だからさ、私の名前にするからワンパターンになるんじゃないかなって。例えばここに、『大切なあなたへ』とか書かれてたら、開けた時ビックリするじゃん。『愛し君へ』とか」

「何で歌詞とか歌のタイトルなんだよ!」

 素早くツッコむ旦那さんの隣で、姉が悪ノリしだします。

「なるほど。『愛を込めて花束を』とかね」

「いいね~! そういうこと!」

「そういうことじゃねぇよ! アホかお前ら!」

 旦那さんと上の姉は中学の同級生なので、鋭いツッコミも可能です。いちいちツッコんでもらえるため、私達もどんどん調子にのります。

「『愛のままにワガママに僕は君だけを傷付けない』とか!」

「長ぇよ! プレートに書ききれねぇよ!」

「『愛されるよりも愛したい』!」

「イヤおかしいから! 誕生日のケーキなのに何の宣言!? ってなっちゃうから!」

「『あの鐘を鳴らすのはあなた』!」

「もう意味が分かんねー!」

 照れ屋の旦那さんから全て却下されてしまいました。いいアイディアだと思ったんですけどね。


 *数々の名曲タイトルを勝手に使わせていただきました。これが何かに引っ掛かったら、削除されるかもしれません。



 翌日。旦那さんが食べなかったケーキを娘と分け合っていると(もちろん例の『おいしいとこ食べ』です)母が旦那さんとの会話を話し出しました。

 昨晩、キッチンに立っていた母にこっそり近付き、旦那さんが耳打ちをしたそうです。「娘にほとんど取られて食べられないだろうから、俺の分残しておいてやってください。あいつ、ケーキ好きだから……」と。

「普通、嫁の親にそんなノロケ言う~? もう本人には当然の行為で、恥ずかしいなんて感じてないんだろうね。無自覚なんだね。本当に愛してるんだな~って感動しちゃった~」

 旦那さんから同じことを言われ、「え、いいよ。もうお腹いっぱいだし。旦那さん食べな?」と返していた私とは違い、なぜか母がキュンキュンしていました。

 ……あの人が羞恥心を発動させる条件が分かりません。


 あ、結局ノロケでオチた。


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