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妻の散文  作者: 朝な夕な
8/11

娘の話です。

 先月二歳になった娘は、よくしゃべるようになりました。


 おせんべいの欠片を取り出したいなら袋を逆さにすればいい、という機転はないため、頭は決してよくありません。けれど「届かないよ」と訴える程度には堪能な語学力です。


 ア○パンマンが大好きな娘。

 夢中でア○パンマン体操を踊る子どもに、私は何気なく質問してみました。

「ア○パンマンとバ○キンマン、どっちが好き?」

「えっとねぇ、バ○キンマン」

 娘はニコニコしながら答えます。

 私はどんどん問いを重ねました。

「バ○キンマンとドキ○ちゃん、どっちが好き?」

「ドキ○ちゃん」

「ドキ○ちゃんとショ○パンマン、どっちが好き?」

「ショ○パンマン」

「ショ○パンマンとカレーパ○マン、どっちが好き?」

「カレーパ○マン」

「カレーパ○マンとバ○コさん、どっちが好き?」

「バ○コさん」


 ……法則が見えてきました。

 どうやら、あとに言った方を繰り返しているだけのようです。

 やっぱり頭はあんまりよくないな、と思いながら、ちょっとしたイタズラ心が湧いた私はまた質問しました。

「じゃあ、バ○コさんとパパ、どっちが好き?」

「パパ」

「パパとママ、どっちが好き?」

 パパっ子の娘ですが、この質問のやり方ならば「ママ」と言うはず。かなり小賢しい手段ですが、私は内心ほくそ笑んでいました。これでパパより好きだと言ってもらえる!

 しかし娘は、浅はかな私の想像を軽く上回ってきました。

「……………………」

 何と彼女は、聞こえないふりを選択したのです!

 何でそこだけマジで答えるんだよ! と私は血涙を流しました。

 頭はよくないけど、思ったよりは知能があると分かった瞬間でした。というより、私の知能指数が低すぎるのか……。


 娘にはなぜかこのように、私をイジる傾向があります。

 まるで『ママをイジるならこのやり方が一番面白い』と、誰かから学んだような気さえします。


 例えばちょっとした動作を、とても面白いもののように笑ってくれたとします。

 すると子どもという生き物は、それを何度も強要します。何度も何度も、アホのようにやらされます。その内やりすぎて、娘も段々笑わなくなっていきます。

 私だって笑ってもらえないことを何度も繰り返したい訳ではありません。けれど、娘自身がやらせるのです。

 どうせ面白くなくなってるのに、なぜ子どもというのは惰性でギャグを求めてくるのか。

 絶対もう飽きてるのに、付き合ってやると言わんばかりにネタをふってくる娘。

 ここで「ヤだよ~、全然笑ってくれないじゃん」なんて言ったところで無駄。敵はすぐ泣き出してしまうからです。

 親に、やる以外の選択肢はない。

 私は意を決して、全身全霊をもって、こすりまくったギャグを繰り広げます。

 私をちらとも見ることなく、大好きなCMに飛び付く娘。

 ……こうなることは、分かっていました……。分かっているのに毎回微妙に傷付くのはなぜなのでしょうか…………。

 敗北感さえ感じながら、私はスゴスゴ引き下がります。どうせまたCMが終わったあと、「さっき見てなかったからもう一回やって~」と言わんばかりに求められることを予感しながら。



 こんな仕打ちを受け続けていても、子どもって可愛いから不思議です。旦那さんにやられたら絶対腹が立つことでも許せます。

 これが無償の愛ってヤツなのかもしれませんね。

 なんて綺麗事を言いながら、クリームパンの一番おいしいところを横取りしています。

 甘すぎるから、まだ小さいから、と明確な理由はあるのですが、何とも罪悪感の込み上げてくる行為です。娘のために用意された誕生日ケーキだって、私は生クリームを食べ、娘にはほぼスポンジのみをあげるというね……。何かイジメみたいですよね。

 同じレベルになってケンカする私達を見て、いつも旦那さんが呆れています。

 けれど、3,200円のケーキと3,500円のケーキの合計金額を、3,700円と書き間違える女だから、「母親なんだしお前が引けよ」という正論は吐きません。


 娘は本当にもう、完全なパパっ子で、私の後追いもしますが旦那さんへの後追いはもっとヒドイ。

 旦那さんがトイレにいると泣きながらドアを叩くので、いつも仕方なく抱っこ状態で用を足しているそうです。

 ちなみに私の時はニヤニヤしながら扉の外から覗いてきます。たまにノリノリの曲を歌わされます。トイレで。


 旦那さんの仕事は朝が早いので、娘が起き出す前に出勤してしまうことが多いです。

 普段なら目を覚ました時の日の登り具合で、旦那さんがもういないことを察知する娘ですが、その日はたまたま薄暗い時間に起き出しました。

 娘、泣きながらトイレに駆け付けます。泣きながらパパを呼ぶ娘。扉にドンドンと頭を叩き付け、「痛い、痛い」と自業自得な泣き声を上げています。けれど中に旦那さんはいません。

 娘はとうとう、自力でドアを開けました。いると思っていたパパがいない。しばらく無言でいたあと、彼女は泣き叫びながら弾丸のように逃げ帰ってくるのでした……。

 この間私が何をしていたかというと、もちろん娘がどれくらいで気付くかの計測です。血も涙もない母親です。

 むしろ可愛すぎて面白すぎて、もう笑いが止まらなかったんですけど。


 思ったより頭はいいけれど、やっぱりどこか抜けているので、行動全てが愛くるしいです。

 犬程度の知能を感じます。しかも柴犬とかじゃなく、チワワとかシーズーくらいの。

 今日も私は娘ラブです。 

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