表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妻の散文  作者: 朝な夕な


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/11

アラサー女達が朝のアニメを語る。

 前述したように、私の実家は近い。歩いて5分程の場所にある。なので行き来はとても頻繁で、夕食にもよくお呼ばれする。

 おいしいお酒とご飯を楽しんだ翌早朝、日曜日。

 小さな子どもがいると、自然と朝が早くなる。私と、実家住まいの一番上の姉、それぞれの娘の合計四人がリビングに集合した。ちなみに私の旦那さんは、地区内の公園の草取りに行っているため不在です。

 日曜日の朝は、レンジャーやライダー、美少女戦士のアニメと、楽しい番組がめじろ押し。いわば子ども達のゴールデンタイムだ。

 時間が近付くと、姉がいそいそとテレビをつけた。なぜ少し照れているのか、不思議に思っていると「実はレンジャーのレッドがカッコよくて……」と恥ずかしそうな答え。なるほど。姪っこちゃんというより姉がはまっているようだ。

 でも確かにカッコいい。彫りが深すぎるということもなく、今流行りの塩顔イケメンだった。体つきはしっかりしているのに、爽やかで人懐っこい笑顔が眩しい。前向きすぎるアホっぽいキャラも好感度が高い。

 次に始まったライダーもイケメンだらけで、世の主婦がハマる理由も分かる。かなりシリアスな雰囲気なので、続けて観ていないとつまらないだろうな、とは思ったが。その点レンジャーはストーリーがわりとよくできているのにコミカルで、楽しく観賞できた。単発で観ても楽しめる仕上がりだった。

 ライダーが終わり、いよいよ美少女戦士モノが始まった。子ども二人も女の子のため相当盛り上がるかと思いきや、姉のテンションが見事に下がった。カワイイが沢山詰まったアニメを観る顔じゃない。不思議に思っていると、姉が呟いた。

「私、プ○キュア観てるとイライラするんだよね……」

「え。そうなの?」

「うん……。何でだろ。こういうアニメ、子どもの頃はスゴく好きだったのに」

「確かに……。ぶっちゃけ私も少し、イラっとしてたんだよね」

 私達兄弟は全員、少女漫画が大好きだった。小学生が読む三大コミック雑誌、『り○ん』『な○よし』『ちゃ○』も全て網羅していた。あのセーラー○ーンだって世代どストライクだ。なのになぜ、見ていてこんなにイライラするのだろう、と姉は奥悩していた。

 私はおずおずと口を開く。

「ってゆーか今気付いちゃったんだけど、プ○キュアの主人公とレンジャーのレッド、キャラ被ってない?」

「ホントだ…………」

 明るく元気すぎる程の前向きさ、ちょっとドジ。ザ⋅主人公という感じだ。

 姉と私は絶望した。同じキャラなのに、片やカッコいいと騒ぎ、片やイラつくとこき下ろす。やっぱりイケメンなら何でも許せちゃうということなのか。それでいて前向きにガンバる女は鼻につくと。もう最低の人種ではないか。

 でも何か違う気がする。それもあるのかもしれないけど、それだけではない気がする。私は胸の内の違和感を徹底的に分析した。そして答えにたどり着いた。

「分かった!ツッコミだ!」

 レンジャーのレッドがアホなことをやらかすと、周りが『また始まった』とばかり呆れたり、ツッコミを入れたりする。それに引き換え、プ○キュアはツッコミ不在でストーリーが進んでいる。主人公の言動を否定する者はおらず、むしろ皆肯定的すぎて怖い。だから何となくもやっとするのだ。お前ら本当にそれでいいのか、と。

「なるほど…………」

「まぁ、少女漫画を楽しく読めなくなっちゃったのは確かだね」

「セーラー○ーンだってツッコミ所満載だったはずだもんねぇ」

 子ども達が理解できないのをいいことに、その後も延々アニメへのツッコミとは名ばかりの悪口大会が続いた。

 悩んでる時のベッドへのダイブが主人公過ぎてウザい。しょんぼり肩を落として歩く姿が嫌。落ち込んでるの丸分かりで周りからの『どうしたの』待ちかよ。解決の仕方がおかしい、金にもの言わせてるじゃん。そもそも何で子どもがスイーツ店を経営しているんだ。等々。


 少女達よ。これが大人になるということだ。

 そしてこれが悪い大人の見本なのだ。

 自分の娘がこんな醜い人間にならないよう、切に願っています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ