私の家族。
私は旦那さんと娘と三人で暮らしています。
旦那さんの実家も自分の実家もごく近所にあるし、そこに姉夫婦とバツイチの姉まで暮らしているため寂しさは一切ない。子育てに疲れたらすぐ頼れる所も利点だと思う。
ちなみに私の旦那さんと上の姉は中学校の同級生、二番目の姉の彼氏は旦那さんの友達、というように、相関図がスゴい。
しかし田舎の狭いコミュニティと馬鹿にするなかれ。スゴいのは、旦那さんの顔の広さなのだ。
例えばこんな事があった。
ほろ酔い気分で二軒目の居酒屋へ移動中、たった数百メートルの距離だというのに、旦那さんは三度も知り合いに声を掛けられた。馬鹿らしくなる程進めないため、結局置いて行った覚えがある。
いざ居酒屋にたどり着いても、旦那さんの特徴的な笑い声を聞きつけ、先輩やら後輩やらが顔を出すのも一度や二度ではない。完全個室の意味。いや、いいんだけど。
ちなみに旦那さんは中卒でマジのアホ。話していて切なくなるくらいのアホ。
まだ恋人同士だった頃、二人で入った居酒屋で、私は『明太マヨチーズポテト』なる品に目を付けた。どうしよう。好きな物しか入ってない、というヤツだ。
しかし旦那さん、私が頼みたい物を代わりに頼んでくれました。ここまでは男らしくて素敵な場面なのですが。
ちょっと強面で、目が細いため睨んでいると誤解されがちな旦那さん。けれど結構優しいので、店員さんが聞き漏らさないようにと、大きな声でハキハキ言ったのです。
「めんたマヨチーズポテト、一つ」
……付き合い始めた当初から、「あれ?」とは思っていました。私の聞き違いかな、と。
でも私と同じように、店員さんも困惑顔。「明太マヨチーズポテトで、よろしいですか?」と聞き返している始末。この瞬間、疑惑は確信になりました。私は勇気を出して、恐る恐る聞き返す。
「……ねぇ、『めんた』って言った?」
「うん」
旦那さん、本気で分かってません。言い間違いの様子もない。三十歳にもなって、何てアホな間違いを。私は可笑しく思いながら訂正しました。
彼は恥ずかしそうにしながら、「何でもっと早く教えてくれなかったんだ」と訴えますが、しばらくすると居直り強盗よろしく開き直りました。
『太』という字は『た』と読むのが普通。つまり『めん た いこ』となるため、『明太』と表記されている場合、自分の読み方が本当は正しいのだと。
あまりに堂々とした言い振りに、先程と同じように「あれ?おかしいのは私なのかな?」と自信がなくなってきます。流されやすい私。けれどここは私が踏ん張らねばと言い返した。
「その理論でいくと、『子』は『いこ』って読むことになるけど、それっておかしくない?」
「それはオレが知らないだけで、そういう読み方があるんだ」
じゃあ『太』も旦那さんが知らないだけで『たい』って読むってことだよ。もうこの時点で論理は崩壊しているのですが、私も酔っているので確実に言い負かそうと必死でした。
「『太』は『たい』って読むでしょ!他にも『太鼓』とか!」
「オレ『太鼓』の下の字知らないもん。『た いこ』って読むのかもしんないじゃん」
「あれはどう考えても『こ』としか読まないでしょ!」
のらりくらりとかわすヤツに突き付ける言葉を回らない頭で必死に探し、私はとうとう見つけたのです。
「太⋅平⋅洋はどう?」
……旦那さんはぐうの音も出なくなりました。簡単な漢字だけに、『たい へい よう』以外の区切りを探すのは難しいですからね。
とはいえ、こんな低レベルな会話に時間を費やしてしまうなんて、中卒と高卒に学歴の差ってほとんどないんだな、と感じました。というか例え話が全部居酒屋エピソードって、どんだけ酒飲みなんだか。
長くなりましたが、次は娘の説明を。
うちの子ははっきり言って、オムツのCMに出ているモデルのような赤ちゃんには程遠い。
つぶらな一重のタレ目、ぺちゃんこの鼻、鳥のくちばしのようにツンと尖った唇。ちょっとポッチャリ気味の頬は色白も相まって、まるでつきたてのお餅のよう。
きっと可愛い大人になるだろうな、というモデル赤ちゃんとは一線を画した、今が命の可愛らしさを有している。と、親バカながら断言します。
彼らを天使に例えるなら、うちの娘はゆるキャラ。間抜けな顔が段々愛しくなってくるタイプ。
もうすぐ一歳五ヶ月。自我が芽生え始め、何でも自分でやりたがるようになってきましたが、まだ個性と呼べる程のものはありません。ちょっとのんびり屋さんかな、くらいでしょうか。思いきり頭をぶつけても『あれ?』という顔で患部を撫でるだけ。ほぼ泣きません。ですがそこも、これからどんどん変化していくのでしょうね。
本当に長々と語ってしまいましたが、こんな感じに馬鹿なことばかりやってる家族です。よろしくお願いします。おしまい。