エピローグ
壁の一面がモニターで埋め尽くされた部屋で、とある画面を注視している者が一人。
「見抜かれたか。やりおる、やりおる」
悔しがるのではなく、手を打ち鳴らして網綱を称賛するのは邪神だ。
自分が送り込んだ手先の正体がバレたというのに、悔しさはない。いっそ清々しいぐらいだ。
それよりも、未だに手元に置き続けている網綱の豪胆さに感心しているように見える。
気が遠くなるような時間をこの塔で過ごしてきた邪神だったが、挑んできたプレイヤーの中で網綱はトップ10に入る実力者だと確信していた。
それどころか彼の実力は自分の想像を超えるのではないかと胸が高鳴る。
これまでも期待以上の活躍を見せてはいた。だが、あのやり取りを見せつけられると……いやがうえにも期待が高まる。
「七階層を突破できるか、否か。越えられたとしても次なる難関はどうだ。楽しい、ああ、楽しいよ、網綱」
顔面を両手で覆うが、指の隙間から歓喜の笑い声が漏れ出る。
浮かれた気分を隠す気もないようで、モニターに背を向けると軽い足取りで部屋の反対側へ向かい、設置されているジオラマのような精密な模型をいじり始めた。
要塞のような建物に置かれていた人形を更に増やしていく。
それでは物足りぬようで、一度離れ作業台の前に移動すると粘土のようなものを使い、何かを作り上げようとしている。
「歓迎の準備を整えておくとするか。彼ならこの程度では満足しないだろう。もっと、もっと、もっと、もっと、もっと……」
モニターに背を向けて一心不乱に作業をする姿は、邪悪な神というよりは遊びに夢中な子供のようだった。
ということで二章の終了です!
三章についてはのんびり書いております。が、別作品の執筆や新作もありますので、すぐにというわけにはいきません。
三章もいずれ投稿する予定にはしています。さすがに一章と二章ほど間が空いたりはしませんので!




