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姿


第六話



あれからホテルに戻っていた私は妹と2人、ベッドの中でひたすら喋っていた。妹は高校生になったばかりで話題は尽きることがない。


「今さ、クラスに気になってる人いるんだぁ。まだあんまし喋ったことないんだけど!」

と、風香が嬉しそうに話し始める。

「朱里ちゃんは今彼氏いないの?」

今日はあまり触れたくないような話題に苦笑いしつつも、いないと答えておいた。

こんな時に私の頭をよぎるのは今日の浜辺での出来事だ。しばらく放心状態だったのだが、徐々に感覚が戻ってきたのだが隠しきれない表情は歪んでいく。今もまだ口にあの男の舌の感触が残っている。

(あいつの顔、全然思い出せない……)

ふと自分の唇を触ると思い出してしまう、あのキス。呼吸のスピードが気持ち早くなったような気がする。

「あっついねー!!」

顔の火照りを誤魔化す為に思いっきり大声を張り上げると、妹も笑いながら部屋のクーラー温度を下げたのだった。





目が覚めると体に汗をべったりとかいていた。かけていたはずのタオルケットは床に落ち、着ているシャツは胸のあたりまでめくれ上がっていた。

妹はまだ目を覚ましていない。


昨日のせいか、夢の中に例の男が現れた。やはり顔はわからなかったが何故か、私は彼と海に浸かっていた。所々内容が途切れていて、どういった経緯でそうなったのか全くわからない。彼は海の中で私の首の後ろから前に腕を回し、そのまま私を引っ張り沖の方へ連れて行く。体は彼の力に任せゆっくりと後ろへ進む。

そして信じられないことに私は首に回された彼の腕に手を置き頬を赤く染め、彼に満面の笑顔を向けていたのだ。


(絶対におかしい、旅行でテンションおかしくなってるんだ。)


自分でもよくわからなくなってきた。夢のことを考えることをやめて、妹を起こしてから朝食へと向かった。

ホテルの一階にバイキング形式で並べられた様々な料理を順に取って行く。この時間は意外と混んでいて前にも後ろにも人が続いていた。

だが、そこに信じられない姿を目にした。


(まさか……!?)


前の方に少し列から飛び出した頭が見える。髪色が黒い。それだけなら普通にいる男性かもしれないがどうしても目が離せない。急に動悸がしてきて彼の動向を目で追った。なかなか全身が見えず、妹の後ろからさりげなく背伸びをして覗いた。

だが顔も知らない相手で今は服も着ているから、昨日見た姿のまましかわからない私にはあの男なのかわかるはずもなかった。



第七話へ続く。


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