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過去


-第二話-



中学も2年に上がりクラスが変わって間も無くの、体育祭を控えた前日。

グラウンドの石拾いをしていた私や友達2人は、日差しの強さにそろそろ日陰に避難したい気持ちの我慢が切れそうだった。



「朱里、おんなじクラスの橋本悠って知ってる?」


突然、咲希が話題を振ってきた。

名前ぐらいは聞いたことはあるが、はっきり言って初めてクラスが一緒になったばかりで顔もいまいち覚えていなかった。

「あー、聞いたことはあるけどその人、なんか女の子と何人も付き合ったことある人でしょー? 確か出席番号が私の後ろだったと思うけど。」

その受け答えに咲希だけではなく、真梨も反応したかと思うと2人が顔を合わせてしまったので私は戸惑って言い繕う。

「え…と、彼女とかっていう話は噂でしか聞いたことないからよく知らないよ?」

しかしこの対応は特に意味を成さなかったのか、咲希ではなく真梨の方が先に口を開いた。

「いや、合ってる合ってる。 話したことは無いんだよね?」

「うん、だって初めてクラスが同じになったばっかだし、ぶっちゃけ顔も見覚えないよー。 あ、でも陸部だっけ? 運動部の友達が前に言ってた気がする。」

「そうそう、陸部。 結構結果残してて、大会とかほとんど上位に食い込んでるんだって。 で、その悠のことなんだけど……」

真梨が喋るのを止めて咲希に目配せした後、咲希が真梨の残した言葉を続けた。



「朱里のこと、気になってるらしいよ?」





石拾いでひたすら座っていたため腰が疲れて、家に帰るなり自分で風呂をためて一番風呂に浸かっていた。


(……どういうことなんだろう。 むこうだって私のこと何も知らないはずなのに。)

石拾い中結局話題が途切れることはなく、2人に橋本と一度話してみてはどうかと催促ばかりされた。しかしこちらとしても全く知らない、しかも異性に声をかける勇気があるはずもなくその場は適当に頷いたものの、私が実行に移すことはあり得ないだろう。

そして何より納得出来ない点があった。


(確か、橋本って可愛い子ばかりとしか付き合ってなくないか?)


そして自分と正反対のタイプばかりで、一体どういう意味の"気になる"なのかもはや理解できなかった。





体育祭当日。

天気は曇りだという予報であったのに、誰かが晴れ女なのか晴れ男なのか快晴だった。その為日差しが肌を突き刺すように上から照らしつける。

昨日話したことのせいで、なんだかクラスの列に並ぶことに緊張していた。


それぞれのスケジュールが問題なく進んで行き、クラス対抗リレーまで順番が回ってきた。

陸上部ということで橋本はもちろん選手に選ばれている。

応援席で咲希と真梨の間に座っていたら、案の定咲希から声をかけられた。

「朱里、橋本走るよ! ちゃんと応援しないとねー!」

「応援はするけど……橋本だけじゃないから。」

妙に落ち着かない気持ちを抱いたままレース開始のピストル音がグラウンド中に響き渡った。

一番走者から順にバトンが渡る。応援もヒートアップし、皆の熱気が最高潮に達する瞬間を迎えた。


橋本にバトンが手渡され、今まで2位だった順位は前の走者を抜き1位に上り詰めた。そして橋本は余裕の表情でクラス応援席に向かって手を振り上げたのだ。女子たちは甲高い声を張り上げ、男子は橋本を笑いながら応援の熱を上げた。

私はというと一瞬で心臓が跳ね上がり、まるで私に向けられたものではないかという錯覚を感じていた。顔が日差しとは違う熱を持つ。


リレーは堂々の1位でゴールし終了した。選手がクラス席に戻っている間もしばらくグラウンドから目が離せずにいた私は、後ろの端から目線を感じ振り返る。

ほんの一瞬のことだった。

橋本がこっちを見ていたかと思うと目があった途端、はっとしたむこうが顔を逸らした。私はその一瞬で、抑えられないほど胸の奥が絞られているかの如く苦しくなったのだった。


その後は橋本の方を見ることが出来ず、そのまま体育祭は幕を閉じていったが顔に残る熱だけはなかなか冷めることはなかった……。





「朱里ー! ねぇ、土曜遊びに行かない? 真梨も空いてるって言ってたし!」


そしてその日からあいつ、橋本との関係に変化が訪れることとなったのである_。





第三話に続く_。

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