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夢を

-第一話-



もうどれくらいになるだろう。

あの頃のような胸を締め付ける思いをすることは、これから先待っているのだろうか。


恋とは何だろう。


それを考える時、以前にある人からもらった言葉を思い出す。


"恋とは意識するものじゃない。

自然と心の容積を支配されていくものだ。

そして人は、己を自らの無意識で惑わすようになってしまう。


でもそのタイミングと出会いは決して偶然なんかじゃない。

目が離せなくなったらそれは必然へと変わるからさ。"


その時はどういうことか私には理解できなかったけれど、言葉の本当の意味を私はようやく見つけられそうだ……。





おしゃれ雑誌にも化粧にもさして興味なんてなかった。

だから私はいつだって跳ねた髪を肩の上で揺らしていた。


「ねぇ朱里ー、もう大学生なんだからちゃんと髪ぐらいセットしなよ。 ほらまた今日も同じような格好して来て……」

毎朝私の姿に誰よりも早く気づいてくれた彼女は友達の、律。

「だってりっちゃん、これが一番落ち着くんだもん。 髪だってちゃんとといては来てるんだよ? でも頑固なんだよ、私の寝癖。」

もうこのやり取りも何度目だろう。手足の指では数え切れるはずもなくまた同じことを繰り返す私に、律も飽きずに反応してくれることが今となっては救いだったのかもしれない。




日が登る頃から空気に熱を持ちはじめる季節を迎え、周りを見渡せば半袖の色とりどりの服が室内を飾っていた。


「はぁー、夏は好きなんだけど、こうも暑いと服着てるのも邪魔な気がしてくるよ。 ブラ付けてるのも暑苦しいー。」

「ブラとか言わない。 朱里も女の子なんだから。 それに男子だっているんだからね。」

「…はーい。 あ、夏といえばさ、水着着れるような体型になるように痩せなきゃなー。」

元々は平均的で、どちらかといえば細かった私も二次性徴の時期を迎えたからか、高校入学時には一気に体型が変わってしまっていた。

その為だろうか、中学生だった頃のあの特別な感情をその後は一度として感じることは無かった。


「朱里、今年の夏海に行くの?」

「うん、そうなのー。 家族と久々に旅行行くことになってるんだ! 楽しみなんだけど今のままじゃ水着、着れそうにないかも……。」

「じゃあ今日からダイエットね。 お菓子、禁止だよ?」

「もうりっちゃん、今日は許して! アイス、最後のアイスー!!」

律は溜息をつきつつも微笑み、その後は2人で一緒にこれからの旅行に向けた計画を考えながら過ごした。





律と共に立てた計画をぼちぼちのペースで、出来ることから取り組んでいた私は少しずつ元の自分の体型に戻りつつあった。

そして旅行の日にちが近づいていたそんなある日の夜。

私は何故か中学の頃の、きっとこの先忘れられない思いをしたあの出来事の夢を、長い長い時間目を覚ますことなく見続けていた……。






第二話に続く_。

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