それはまるで・・・・・・の、ような
「……え、なんて今、言いました?」
「いや、何でもないさ。たいしたことじゃない」
「そういわれると、気になるんですけど。もう一度言って下さいよ」
「何でもないって。……なんだ、その顔は」
「余計に気になるんですけど。いいじゃないですか、言って下さいってば」
「いやだ」
「……ああそうですか、じゃあコレはもうお仕舞いですからね」
「おいこら、それを人質に取る気か?お前卑怯だぞ」
「なんとでも言ってくださいな。いい加減お酒も呑んだでしょう?桜の木が酔っ払ってどうするんですか。ああ、それとも酔って桜色に染まるんですか?」
「つくづく、可愛くなくなったぞお前……」
「はいはい、それで?答えてくれたら、呑ませてあげますよ」
「言えばいいんだろう、まったく……あのな」
「はい、なんでしょう」
「あのな、牽牛と織女の話があるだろう?それと同じみたいだなって思ったんだよ」
「……誰が?」
「……っ、それは、俺とお前に決まってるだろうがっ」
「ああもう、そんな真っ赤な顔して怒鳴らなくても聞こえますって。織姫と彦星ねえ……確かに、少しの間だけしか会えないってのは……似てますねえ……」
「違うだろう」
「何がですか?ああ、はいどうぞ、注ぎましたよ」
「会える時間が短くても、それを大事にしてるって事が、似てるんじゃないか。おや、どうした、顔が赤いぞ?」
「まったく、貴方も意地悪ですよ。涼しい顔して、そんなこと言うんですから。もう、どんどん呑んじゃって下さい」
「ああ、呑むぞ。お前も呑め」
「はい、勿論呑みますよ……まったくもう、流石花精ですね」
「なにが」
「無意識にも、ひとを惑わすんですから」