第四話 翌日
俺の声が、聞こえるか?
聞こえていても別に返事はいらんよ。
『夢の中の夢』・・・か上手く言ったもんだな、『夢の連鎖』。とも言ってたな。
まぁ、どっちにしろお前に全てが把握できるわけが無いんだ。
無理をするんじゃあない。
崩れていくんだよ。
ここで会えたのも一興。お前が動いたのもまた一興。
でも、一線は超えるな。こっちに来てはいけないんだ。知ろうとするな。
分かったら、今はただ深く、眠れ。
「また・・・」
俺は確か学校をサボって寝てたんだっけ・・・。
枕もとにある一冊のマンガ雑誌。寝る前に気分を紛らわそうと読んだのを覚えている。が、内容は覚えていない。
「チッ!」
舌打ちはしてはいけない。そう小さいころ母の習った。今はそんな小言をいったりする母はいない。
いるのは、反抗期に入った息子を受け入れられていない、息子から見たら狂った母だ。
「・・・くそ、またあいつか。いい加減出てくんなよな。」
『一線は超えるな』って・・・そんな言い方すっから『線』を探すんだろうが!
イライラしていた。思いっきり床に転がっているクッションを蹴飛ばす。ついでに壁を殴る。
バンッ!殴った音が響いた。
「あっ、これ母さんに聞こえたかな?」
怒られる・・・一瞬そう思ったがすぐに撤回した。
反抗期の息子の言葉遣いに傷つくのを恐れて、最近では『おかえり』と『ご飯だよ』と『お風呂空いたわよ』くらいしか言わなくなった。
早すぎる昼寝をしたためか、眠気は全く無く、スッキリするどころか逆に逃げ道が無くなったようで、苛つく。
夢によって繋がれる理解不能な現実、それが俺の心を縛る。
前だけを見据えていても、つい横目に入ってくる、興味をそそるそれら全てにたぶん意味は無く、
体に残る、アザと痛みと、そしてあの言葉・・・あいつ。
夢によって起こる連鎖があると言うなら、この世界はまるで『夢』そのものじゃないか・・・
『夢』そのもの・・・そうだ!たぶん全部悪い夢に過ぎないんだ!
深く考えるな、そう一人言で繰り返しても、自分の奥底にしまった扉を叩く音はそれを否定した。