作戦会議
リア充に報復すると決めた日から、既に3日が経っていた。実はというと、未だに何をするか決まっていない。いや、決める事が出来ない。
まず、普通の高校生に出来る事の範囲が決められてくる。爆発しろというものの、爆弾なんて持ち歩く事なんて出来ない。ってか、当てたら死んじゃう。
ちなみに、俺の目の前には渡辺璃亜っていう奴がいる。俺が報復を決めた日に出会った女子だ。なぜか知らんが、意気投合してしまい、共にリア充共に報復するために俺の家で作戦会議中なのだ。
――3日前――
「そうと決まれば何か考えるか」
そう吐いてトイレを出たら、女子トイレからも人が出てくるのが見えた。
思わずその人の方を向くと、目元が赤くなっていた。恐らく泣いていたのだろう。
「あの…「三河君も泣いていたの?」
声を掛けようとしたら、女子の方から声を掛けてきた。
って、忘れてた。俺もさっきまで泣いてたんだった。事実も事実なので取り敢えず頷いておく。
「奇遇だね、私も泣いてたの。たぶん理由は同じでだろうけど…」
同じ理由…
まさか仲間が居たなんて…………でも、今考えてみるとしょうもない事で泣いてた気が…ってだめだ、それを言ってしまったら終わりだぁ!!!ん?なんでこいつは俺の名を知ってるんだ?
「「誰コイツ」みたいな顔してるね、私はA組の渡辺璃亜よ」
A組?俺と同じクラスじゃねぇか。……なるほどな、どうりで知ってるはずだ。って、クラスのメンバーも名前を覚えていない俺って……ん?ちょっとまて、同じ組?ってことはさっき扉を強く閉めたのはこいつだったのか。
「ってことは、お前がさっき扉を強く閉めていったのか」
俺がそう言うなり、渡辺は顔を赤く染めた。
「み、みてたの?」
「いや、その時は他の事を考えてたし、音だけかな?でも、あれはきっとクラスの皆が知ってると思うよ」
俺は素直に渡辺の質問に答えた。
「今思うと恥ずかしい事をした気がする…」
「同感だ…けど、俺はリア充共に復讐することを決めたからな。ここでメソメソしてる訳にはいかねぇ」
「ふふ、やることが同じようだと、考える事も一緒だね」
何故か嬉しそうに微笑む渡辺、まあいいか。
「なら、俺と一緒にみんなを爆発させてやろう!」
「え?いいの?なら、よろしくしようかな。でも、この一週間でリア充になったらただじゃおかないよ?」
笑顔が怖いよ…笑顔が……
「だ、大丈夫だって、俺には彼女になる相手がいないからな」
すると渡辺は少し嬉しそうに微笑み、満足した感じだった。
なんだよ、俺に相手が居ないってのがそんなに良いのかよ。失礼な!
声には出さずに心の中で吐いておいたけれども……
「それじゃBKB団の結成だね!」
「BKBってなんだよ…」
「バカップル爆発させようの略だよ」
「なんかメチャクチャだな…分かったよそれでいいよ」
はぁ…とため息を吐きながら承諾する。ため息が気に障ったのか、つま先を潰された。
すごい地味な痛みに悶絶する。
その後教室に戻り、とっくに授業が始まっていたため、先生に怒られた。
それから、終業式までの2日間、全ての休み時間に渡辺は俺の机にやって来た。
そのため周りからは、「お前ら付き合ってんの?」とよく言われた。まあ、言われる度に俺は「別にそんなんじゃねぇよ、ただの友達だ」と返しておいたが。しかし、俺が友達にそう言う度、渡辺が何処となく残念そうな顔をするのは気のせいだったのだろうか?
で、そんなことがあり、今に至る。
「それで…集まったけど何か良い案でもある?」
渡辺が首を傾げて聞いてくる。その何気ない行動に思わずドキッ、ってしてしまった自分が居る事は内緒にしておこう。
「いや…爆発しろとは言ったけど、爆弾なんて持ち歩けるわけ無いよな…どうする?」
そんな感じで俺が悩むと、渡辺は訝しい目でこちらを見てきた。
「まさかと思うけど、三河君はリア充爆発の意味って知ってる?」
「なんだよ渡辺。あたりまえじゃねぇか。あれだろ?いちゃいちゃしているカップルに爆弾投げつけて、逃げるみたいな感じだろ?」
俺がそう答えると、渡辺は大きなため息を吐いた。
「三河君はその言葉だけ知ってるって感じだね……まさか本当はピュア?」
「ままま、まさか!そんな訳ないだろ!じょ、冗談きついぞ!わ、渡辺」
まるで、漫画やアニメみたいなほど分かり易い慌てっぷりだ。渡辺はため息を吐きながら、「図星だね?」と一言いうと、三河は「うっ」と声を漏らした。もう、ほぼ肯定しているようなものである。
「まあ、平たく言うと、恋人同士のカップルを別れさせる、仲違いさせようみたいな感じよ」
「は、初めて知った……な、なんて酷いものなんだ!!!」
いや、爆弾投げつけて逃亡する方がもっと酷いでしょ!と、渡辺はツッコミそうになったが、三河が変に傷ついて欲しくなかったため、心の中だけのツッコミにした。
「でもここまで来たのだから、やるっきゃないっしょ!!」
無駄にポジティブな三河を視界に、今日だけで何度目か分からないため息を零す渡辺であった。