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04

長くなってしまった…!orz ※あと少しシリアスかもしれません。


「まさか、リツキちゃんがアンタの恋人とはね!」


 メルヴィさんが、からかうように笑ってハーブのお茶を出してくれた。

あ。昨日出してもらって、すごい美味しかったお茶だ。嬉しいなぁ。


「ありがとうございます!」


「………。」


…うん。戦わなくちゃ、現実と。

隣にいるラウちゃんから、明らかに不機嫌な黒いオーラが出ている。


口を(とが)らせて、頬をぷくっとフグみたいに膨らませる姿は、

とても18歳の青年(しかもイケメン)のする顔じゃない。

あーぁ、眉間にシワまで寄せちゃって…。


 さて。ここで問題。

彼は、何に対して怒っているのか?


1、私が勝手に、自宅から抜け出して危険いっぱいの外を出歩いていたこと。


2、メルヴィさんに、お世話になったお礼を言いに行ったら、『今日は、

もう遅いから、夕ご飯食べて泊まって行きなさいよ!』と半ば強制的に、

泊まることになったこと。


3、昼間の、ヤンネ君とオルヴォ君を吊り下げ事件がメルヴィさんバレて、

スリーパーホールドや逆エビ固め、キャメルクラッチを決められたこと。

(なんで、技知ってるんだろうメルヴィさん…。)


4、技をかけられて、相当なダメージをうけてフラフラ戻って来て、

『ひざ枕してよー』と、言った矢先に『おねーちゃーん!!』と、

カティちゃん(4歳)が、私のひざを独占してしまったこと。



正解はーーー…たぶん全部です。



 あー!もう!どうしよう…っ!!

謝るタイミングを完全に逃してしまったよぉお!!


しっかり、お夕飯食べて食後のお茶まで出してもらってしまった…!!


うぅ、私が自分勝手したせいで、ラウちゃんに心配とか迷惑かけたって、

重々わかってるんだよ。だから、土下座でもなんでもするよ…!


 私は決意し、カティちゃんを横に降ろして、スクッと立ち上がる。

よ、よし!うだうだ、タイミングとか言ってないで謝ろう。


「あのっ!ラウty「そろそろ寝たら?疲れたでしょ、リツキちゃん。

あっ!忘れてた…今、長男のアルヴィの部屋しか空いてないのよ!

どうしましょう…。」



「「……………。」」



かみさま、これはもしや罰なのですか。


「(気まずい…。空気が鉛のように重いんだが。)」


 1人用の簡素なベットがひとつ。家具も必要最低限のものしか、

置いていないシンプルな部屋。部屋の主の趣味だろうか。


そこに、私と彼は腰掛けている。

こんな状況じゃなければ、ドキドキしたんだろうけど…。


と、いうか。

なぜ、私も意地を張って同室で良いと言ったんだろう。私のバカ!


「ハァ…。」


 横から、ため息が聞こえた。

あ、もしかして…。

『召喚』なんてするんじゃなかったって、後悔してるのかな…。


思考が後ろ向きになってきた、その時、


「うわぁああああぁあぁんっ!」


バターンッ!


 突然。

ドアが音を立てて大きく開いて、小さなものが飛び込んできて、

泣き声と一緒に、強烈なタックルを私のお腹に食らわせた。


「うぐぅっ!」


「りったん!?」


驚いて、立ち上がる彼を片手で止めて、なるべく優しい声で、私は言う。


「どうしたの?カティちゃん。何かあった?」


赤みがかった茶色の真っ直ぐな髪を、ツインテールに結ったカティちゃん。

昨日から、私になぜか(なつ)いてくれていて、さっきまで私のひざの上を、

占領していた女の子だ。


「うう、うっ…ひっく。」


「あー。涙と鼻水で、せっかくの可愛い顔が台無しだよー。」


私は自分のカバンから、タオルをひっぱってきて、顔を拭いてあげた。


「はい。きれいになったよ。どうしたの?」


カティちゃんは、まだ涙で(うる)んだ瞳をうるうるさせながら、叫ぶように言った。


「あたしっ…!おねーちゃんとおにーさんの、こどもになる!!」



ええええええええっ!?



私たちは驚いた拍子に、ばっちり目が合った。


どちらも同時に、ボッと火がついたみたいに赤くなってうつむいたが、

私は数秒、考えて。彼女が泣いている原因に思い当たってしまった。


ゆっくり、内緒の話をするようにカティちゃんに答える。


「…お姉ちゃんは、良いよ?カティちゃん好きだもん。」


「り、りったん?」


ラウちゃんが戸惑い、カティちゃんは、ぱっと明るい表情になる。

でもね、と私はイジワルな質問を彼女に尋ねてみる。


「もしも、ウチの子になったらさ。お母さんにも、お父さんにも、

お兄ちゃんたちにも、妹のロッタちゃんにも会えなくなっちゃうよ?

カティちゃんは、それでもいいの?」


妹のロッタちゃんは2歳。まだ手がかかるのは仕方ない。

でもこの子は、妹の世話でお母さんが忙しいのが寂しいのだと思う。


カティちゃんは、くちびるをキュッと結んで、どう言おうか迷っている。

また泣き始めてしまいそうだったので、抱きしめて背中をさすってあげて、

言ってあげる。


「あのね。お姉ちゃんはさ、カティちゃんがすごーく羨ましいの。」


「ずび…っ、なんで?」


私は微笑んで、カティちゃんを抱っこしてベットに入れてあげる。

そして。ギュッと、もう一度、抱きしめる。


「だって。お母さんが忙しくっても、他に兄ちゃんたちや、お父さんがさ、

カティちゃんと遊んでくれるでしょう?」


「…うん。」


「お姉ちゃんはね。一人っ子だから、家の中は私しかいなかったの。

だから、兄妹のいる友達が、羨ましかったぁ。」


気が付くと、ラウちゃんもベットに入って来ている。

あはは。ラウちゃんまで泣きそうな顔しちゃってるじゃない。


「ふふふ…。」


「…梨月、ちゃん?」


そんな真剣に聞かなくていいのにね。ラウちゃんもカティちゃんも。

顔は似てないのに、さすが親戚(しんせき)。ちょっと似てるかも。


「そういえば、こうやって並んで寝てみたいって、昔思ってたなぁ。

こうやってると、本当に家族みたい。ふふっ。」


すると、急にカティちゃんが強くしがみついてくる。


「きょうだけ。

きょうだけ、あたし、おねえちゃんのこども、してあげる!」


カティちゃんは、いつものかわいい笑顔に戻っている。よかった。


「じゃあ。今日だけ、梨月ママがカティちゃんが眠れるまで、

おとぎ話をしてあげようね。」


カティちゃんは、私の世界のおとぎ話を目をキラキラさせながら聞いていて、

4話目の白雪姫が終わった辺りで、夢の中へ旅立ったみたいだった。



「ラウちゃん。」


今なら言える。と思い、カティちゃんをはさんで向かいに居る彼に、

呼びかける。


「うん?」


「私、焦ってたんだ。

この世界に来て、私は守られているばっかりで、何もできなくて。

どうしたら、役に立てるんだろうって考えてた。

私は、1人でも出来るんだってところを、どうしても見せたくて、

ここまで来ちゃった。…本当に、ごめんなさい…。

結局、ラウちゃんに迷惑かけちゃったね。」


ふいに、毛布の上に出ていた左手が、彼の右手に包み込まれる。


「僕も、ごめん。

梨月ちゃんは、慣れない世界に来て不安だったのに、全然、

気付いてあげられなかった…。

…今度は、2人で一緒にどこかへ行こうよ。デートしよう?

景色がいいところでお弁当食べるの。」


それは、ピクニックなんじゃないの?心の中で、ツッコミを入れる。

…まぁ、いいや。もう眠くて目蓋(まぶた)が重い。


「うん、いいよー…。唐揚げと、卵焼きと…何入れよっかなぁ。」


うとうとしながら、相づちを打つ。

彼が、クスクス笑いながら私の髪を撫でる。きもちいいなぁ。


「楽しみにしてるよ。」


「うん。」


「ねぇ。りったんは、子ども好きなんだね。」


「うん。すき。」


目を閉じて、半分眠っているみたいな状態で、私は彼に聞く。


「ラウちゃんは、きらい?」


「嫌い、じゃあないよ?ただ接し方がわからないから、怖いのかも。」


「そっかぁ…。でも、そういう人ほど、こどもができると、

子煩悩になるってだれかが、」


私を撫でる彼の手が、背中にまわる。


「じゃあ、今から作ってみる?」


…うーん。


「えっちなのはいけないと、おもいます。」


「好きなものは好きだから、しょーがないんですよー。」


すぐ近くでささやかれる甘い言葉が、くすぐったい。

目をゆるゆると、うっすら開いてみる。


薄暗いけど、彼の顔が近づくのを感じる。

彼の前髪が、私の前髪に触れる。


ガシッ


「…アンタ。なにしてんのよ、ウチの娘とリツキちゃんに…!!」


ドスッ!シュルシュル


「グァ…!?もが、もがが!?」


「アンタには、じっくり聞きたいことがあるのよ!

話。盗み聞いて悪いけど、明日『召喚』のことについても、

詳しく説明してもらうからね!」


「もがぁっ!」


よくみえない。でもメルヴィさんのこえだ。

ラウちゃんのけはいが、はなれて、とおのいていく。


「…カティを寝かしつけてくれてありがとう。

この子は、私が連れて行くから大丈夫だ。

…ゆっくり眠りなさい。」


大きな手が、わたしのあたまをワシャワシャなでる。

アレクシスさん…?なんか…おとうさんになでられてるみたい…。


あったかいな。


めを、そっと とじて。


わたしは、ゆっくり、ゆめにおちていく。




 ーー夢の中。

  私は、あの日の小さな私を、後ろから見つめていた。


  水族館で両親と手を繋いで、イルカを見た日。

  まだ、お父さんもお母さんも仲が良くて。

  嬉しそうに、笑っている。私。


  あの日買ってもらったイルカのぬいぐるみは、

  どこへ行ってしまったのかなぁ…。



*****



 翌朝。

顔を洗おうと、家の裏手の井戸へ行ったら。

庭の木に、ラウちゃんが寝間着でイエス様みたいな格好で、

吊るされていた。


なぜ…!?


私が眠った後で、一体何が起こっていたんだ!?

冷や汗をかきながら、私はその場をそっと後にした。



次回あたり、梨月とラウリのなれそめを書けたら、と思います…!

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