03
※今回は、雑貨屋の三男のヤンネ君(8歳)視点です。
きのう、へんな姉ちゃんがこの村にやってきた。
さいしょ、目ぇ見て、『黒』なのか?ってみんながビビってたけど、
よーく見たらちょっとかわった『銅』だってわかった。
オレはぜんぜんビビってなかったけどな!
でさ。なまってないキレーな発音ではなすし、
スッゲー世間しらずなんだ。
カネの単位もしらねーってへんだよな?
毛の色はうすちゃで、肩くらいの長さでフワフワしてた。
(そーいや、オレや母ちゃんと一緒だな!)
服がみたことないカンジだったけど、キレイな服だったな。
だから、どっかのおひめさまなんじゃねーのってオレは思った!
オレ、あったまいーじゃん!と、うれしくなった。
で。この姉ちゃんが、
「なんでもするので、一晩泊めてください!」
って、おねがいしてた。
「女の子が”何でも”とか簡単に言うんじゃありません!」
って母ちゃんがプリプリ怒った。
姉ちゃんは、なににびっくりしたのか、ポカーンとしてた。
泊まっていいって言われてからも、母ちゃんにされるがままでさ、
服きせかえられたり、父ちゃんに『もっとメシ食え』って言われてた。
2番目のアニキのエルメル兄とオレは、それがなんかおかしくって笑った。
姉ちゃんの名前は、リツキっていうらしい。
名前までへんだな!ってオレは思った。
妹のカティが、めちゃくちゃよろこんで、
「あそんで!あそんで!」
って、スゲーうるさかったけど、リツキ姉ちゃんはたのしそうに、
にこにこ笑ってた。
リツキ姉ちゃんは、きっと良い人なんだろうな。
きょう、友だちのオルヴォとあそんでたらさ、リツキ姉ちゃんが、
『追われてる、たすけて』って言うじゃん!
だから、『オレたちが守ってやろう!』って、オルヴォとはなし合って、
オレたちのひみつきちによんであげたんだ。
なんか、オレこーいうのすきだ。だれかを守るぞー!いうの。
どーせ三男だし、お城の兵士にでもなろうかなー。
あ、それでさ。
リツキ姉ちゃん、スゲーあたまよくってさ。
いよいよ、ただモンじゃねーな、って思ってたんだよ。
あのキチクのラウリのこと、聞いてきたりしたしな!
なんか知り合いっぽかったけど、どーいうカンケーなんだろうな?
オルヴォは、『だまされてる』とか言ってたけど…。
オレにはサッパリわかんねぇや。
でさ!!
アイツがいきなりあらわれてさ!
リツキ姉ちゃんが、つかまっちまったんだ!
オレは、すぐに姉ちゃんをたすけてやりたかったんだけどさ、
…アイツ笑ってんのに、目が笑ってねーんだよ!
姉ちゃん気付いて!ソイツめっちゃこえーよ!
ヘタに動いたらヤバイ!
虫になるノロイとか、かけられるかもしんねーし!
こうなったら…。
オレは、オルヴォに目で合図をおくる。
オルヴォも、わかったみたいで小さくうなずいた。
「おい、オッサン!リツキ姉ちゃんがいやがってんだろ!」
オレが、そう大声で言うと、『あぁ、いたの?』みたいなカオしやがる。
キィーッ!ムカツクぜ!
「おやぁ〜?ヤンネくんじゃないか。オネショはもう治ったのかい?」
ギャアアア!!3年前シーツかくそうとしたの、みられてたんだった!
オレがイチバン忘れたいことを…!
「うっせぇー!とっくのむかしに治ったっつーの!
…こんのぉ!ヒキコモリのオッサンのくせにバカにしやがって!!」
「ひっどいなぁ〜。実の小父さんに。」
「え、ヤンネ君とラウちゃんって親戚なの?」
今まで、オッサンにしがみつかれてグッタリしていた姉ちゃんが、
おどろいたみたいに目をパチパチさせていた。
「うん。従姉妹のメルヴィの子どもだからねー。」
あんまり、知られたくなかったけどな!
みんなウチがこのオッサンのしんせきって知ると、スゲーおびえるか、
カワイソウな目でみるんだ。
でも、オルヴォはちがった。
『ヤンネは、ヤンネだ。』って言ってくれた。ホントにうれしかった。
オルヴォはオレの親友だ。オレは、おまえをしんじてるぜ!!
いけぇ!!オルヴォ!!
ドゴッ
「きゃあああ!ラ、ラウちゃん大丈夫!?」
オッサンの上に、オレのアタマと同じくらいの岩が1つあらわれて、
モロにあたった!
オッサンが地面にバタリとたおれて、姉ちゃんがしんぱいそうにみてる。
さすがオルヴォ、まほう上手いな!カンペキだぜ!
…てか、オッサンよわくないか?かんたんにたおせたぞ…?
ひるませて、にげるくらいのつもりだったのに。
まぁいいか。
とりあえず姉ちゃんに『べつの場所であそぼう』って、
言おうとした、つぎのしゅんかん、
ボコッ
シュルルルルルルルルル!!
みどりのツルが、たくさん地面から生えてオレたちをグルグルまきにして、
木にさかさまにつるした!
「な、なんだこれぇええ!?」
「うぅ、苦しい…」
オレたちがジタバタもがいていると、さっき地面にたおれたはずのオッサンが、
服についた土をはたきながらニヤニヤ笑ってた。
オッサンは、ピンピンしてる。あたったんじゃなかったのかよ!?
「この僕が、君たちみたいなガキんちょに負けるわけないでしょ〜?
おバカさんだなっ★しばらくそこで反省してなよ。」
そう言って、オッサンは姉ちゃんの手をひいて去っていった。
姉ちゃんが、みえなくなるまでずっと、口パクで『ごめんね!』って、
してた。
ちょっとうれしいけど、それよりたすけてくれぇーー!!
「チクショー!ぜってーつぎは負けねーぞーーー!!」
そのあとウチの父ちゃんが通りかかるまで、オレたちはミノ虫みたいに、
木にぶらさげられたままだった。
自分の息子とその友達が木に吊るされているのを発見した、雑貨屋の旦那さん(アレクシスさん・39歳)は普段無口で冷静だが、この時ばかりは驚いて「うお!?」と声を漏らしてしまったという。
修正:2012/10/02
誤字脱字を直しました。