02
ーーー「クルタ・ピサラ」
科学の代わりに、魔法がすごく発達している世界。
私の親愛なる幼馴染が住んでいて、私が今生きている世界の名前。
ここは北の小国、キルシッカ王国の東の端のパールナ村。
気候は、北海道みたいに夏涼しくて冬に雪がたくさん降るらしいので、
亜寒帯気候じゃないかな。(うろ覚えだけど、多分。)
この村しかまだ見てないけど、静かで緑豊かな良い場所だなぁ。
母方のおばあちゃんの田舎も好きだったけど、ここも好きだなって思った。
景色を見ていて、ムーミン谷に少し似てる!って興奮しちゃったのは、
秘密にしておこう。
「で、3人が5個ずつ木の実が欲しいとすると、3×5で15だから、15個になるんだよー。」
「おー!じゃあ、3人が6こ、集めたらー…あれ、いくつ?」
茶色のくせっ毛の男の子が、指を折って数えようとして混乱している。
「ヤンネ、両手の指じゃ足りない。地面に3つ輪っか書いて、石をおいて数えよう。」
こっちは濃い茶の髪で、短めの髪の男の子が木の枝で輪を書いている。
「オルヴォ、あったまいーな!」
私は微笑ましく、それを見守っている。
くせっ毛の子はヤンネ君。雑貨屋の奥さんの三男坊で、8歳の元気な男の子。
深い栗色の毛で短髪の子が、ヤンネ君と同じ歳で、友達のオルヴォ君。
なぜ、のんきにこの2人にかけ算を教えているかというと。
時間は戻って、30分ほど前。
雑貨屋さんの近くまで戻って来た時、遊んでいた2人を見つけて、
『追われて困っているんだけど、隠れられるところ無い?』と聞いたら、
『だったら、オレたちのひみつ基地においでよ!』
と、ヤンネ君とオルヴォ君が言ってくれて、秘密基地の『森の中の廃屋』に案内してもらえた。
雑貨屋さんから、歩いて5分くらいの森の中の荒れた小屋だったよ。
基地に着いたら、おやつに木の実があるから3人で食べようってことになって、
「ひとり何個だ?」
と、2人が指で数えていたので、かけ算を少し教えてあげたのだ。
そしたら、もっともっと、言われてね。
私もノリノリで算数の授業をしてしまっていたんだよ。
「3×6は18か。…これ、便利だね。それに、おもしろいよ。」
「すげーなぁ、オルヴォ!くやしいけど、オレ、もうムリ!
走ったり、体動かすことの方がすきだぜー!」
あはは。
オルヴォ君は興味津々なのに、ヤンネ君は体育会系なのかなぁ?
「じゃあ、オルヴォ君。もうちょっとやってみる?
ちなみに、これは私の国では九九って言うの。
かけ算とも言うけどね。…昔、表を作って頑張って覚えたっけなぁ。」
「へぇ。ぼくも覚えたい、これ。教えて、リツキさん。」
おぉ!お姉さん、頼られると嬉しくなっちゃうよ!
書いてあげたくなるじゃないかっ!
「よーし!枝、貸してくれる?はりきって書くね!」
・
・
・
しばらくして。
ふと、気になっていたことを聞いてみようと思った。
昨日、村の人々に色々と教えてもらったのだが、聞くとなぜか苦笑いされる質問がひとつあったのだ。
彼らなら、答えてくれるかもしれない。
地面に1から9までの九九を書きながら、ヤンネ君とオルヴォ君に問いかける。
「ねえ、魔術師のラウリって知ってる?」
2人は、ピシッと一瞬固まってこう言った。
「あぁ、あのキチクの?」
「…冷血漢。」
ええええええっ!?まさかの答えが!
「それ、名前が同じの違う人じゃないのかな…?
優しくて、いつもニコニコ楽しそうな人なんだけど。」
まぁ、あれってポワっとしてる、とか天然って言いそうだけどね。
「ラウリってアイツしかいないと思うぜ?
ってか、それダレだよ!?アイツがやさしいとか…ヒィーーッ!
ないない!キモチわりぃー!!」
「もし、同一人物だとして。リツキさん、だまされてる。」
ヤンネ君は鳥肌が出ているのか、必死に腕をさすっていて、
オルヴォ君は可哀想なものを見る目で、こちらを見ている。
や、やめて!そんな目で見ないで!
「うーん。でも私は、彼はそんなヒドイ人じゃないと思うよ。」
彼は、私を救ってくれた人で、大事な幼馴染で、恋い焦がれた想い人だ。
もしも。
彼らの言う通り、だまされているとしても、私はそれでもいいって思えちゃう。
…って、ぐはーっ!!
なに考えてるのか、私!恥ずかしい!!ポエマーかっ!!
さっさと、九九書いちゃおう!
「と、とにかく。私は、優しい人って信じてるよ。」
「ふふっ、ありがと〜♪」
彼特有の間延びした声にハッとして、とっさ逃げようと飛び上がった。
だが、背後からムギュウゥウウと抱きついている腕はビクともせず、
とてもじゃないが勝てないと悟って、もがくのを止めた。
「ラウちゃん…?」
「そーだよ〜?あはっ♪……りったん、つーかまえた★」
あれぇ…?なんか黒い笑みに見えるのは、気のせいだよね?
なかなか、お話が進まないですね;
頑張ります!子ども達書くの楽しいです。
これからもっと活躍する予定ですw
修正:2012/10/02
誤字脱字を直しました。