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結構、シリアス注意です。

次回から、全年齢推奨出来なくなりそうです…orz



「大丈夫って、言ったじゃんかよ…。」


私たちは今、大樹の枝を伝って慎重に地上に降りている途中だ。


「ぐぬぅ…。でも、かなり遠くまで飛んで来られたよ?」


「ピニャー?」


 あの後、アルヴィ君の得意な属性の『風』の魔法で、牢屋の壁に

開いた大穴から飛び出し、言葉のままに”風任せ”に飛んでいたのだが…。



…突然の風でバランスを崩して、木に引っかかってしまったんだ。


「突風は、予想外。仕方ないと思う。」


「そうだよ!横風に吹かれる前までは完璧だったよ!すごい!」


オルヴォ君のフォローに乗って、アルヴィ君を褒めちぎってみた。


「フ、フンッ!褒めたって、何も出ないんだからな…!」


うふふ。そういう割に、耳が赤いよ?



*****



 全員が地上に到着して、フゥ…と一息つく。

だが、のんびりはしていられない。じきに脱出がバレて追っ手が

やって来る。

それまでにもっと、もっと遠くへ逃げなくては。…あぁ、こんな時。


「(ラウちゃんに連絡する方法があったらなぁ!!)」


他力本願かもしれない。


しかし、この危機的状況を打破出来そうな人物の心当たりは、

私には彼しか居ない。…彼の顔を思い出して泣きそうになって、

急いで気を引き締める。


「…まぁ、出来ないものは、どうしようもないよね。

とりあえず進もう。ここ、足場がかなり悪いから気をつけて。」


「…湿地、なのか?ぐ、歩きにくい…。」


アルヴィ君が言う通り、ここは恐らく湿地帯だ。

泥に足を取られて、進みにくい…。

さらに、オルヴォ君の灯す照明の魔法もローソクほどの光量しかない。

足元はとてもじゃないが、見えない。


追っ手はまだ来ないだろうけど、速度が落ちるのは現状ではかなりマズイ。



 それに、さっきから訳が分からない、すごく嫌な予感がしている。

背筋がザワザワして、手に汗をかいている。不安で、オルヴォ君の手を握る手に

力が入る。


「リツキさん。」


「あっ、ごめん。強く握り過ぎた? 痛かったかな?」


暗闇だが、ふるふるとオルヴォ君が首を横に振ったのが分かった。


「無茶は、ダメだからね?」


その言葉に、私は微笑む。うーん、心配させちゃったか。


「だーいじょうぶ。2人は、ちゃんと帰れるようにしてあげるから!」


「…そうじゃ、ないんだけどな。」



ドォオンッ!!バチバチバチ…!


私が、彼の悲しげな呟く声に気付く前に、目の前で轟音(ごうおん)と共に

電撃が走った。


「…っ!?」



「ギャハハッ!惜しかったなぁ、もうちっとで黒コゲだったのによ!」



腕から出した電撃の余韻で弾ける火花でぼんやり見える人影。

品のない笑い声と、口調。声の太さからして、若い男だ。

私は正直、焦りを隠せない。


「(こんな早いなんて嘘でしょ!? まだ30分も経ってないのに…!)」


急いで、私はアルヴィ君とオルヴォ君を抱き寄せて、男と距離を取る。


「クックック…。オレはツイてんなぁ〜?

たまったま、下っ端の様子を見に来てみりゃぁ、ガキが逃げて来たトコに

出くわしちまった! …おっ!いいコト思いついたぜぇ。」


鼓動がドクドクうるさく暴れる。手足が凍えたみたいに冷たい。


考えろ。どうやってこの男から逃げる?


こちらには、さっき全力を出して力がほとんど残ってないアルヴィ君と、

小さな術を1回分が限界のオルヴォ君、そして役立たずの私。

どう見たって、圧倒的に不利だ。何か、何かないの!?



「今から、あそぼーぜぇ?

オレから逃げ切れば、見逃してやってもいいかもなぁ〜?

クククッ!…そーらっ!逃げ回れぇー!!」



男の言葉を聞き終わる前に、私は2人の腕を引いて走り出す。

あの男は、私たちを逃がす気は毛頭ないのだろう。

…あれは、ただ楽しんでいる。私たちが怯えて逃げ惑うのを。


捕まる訳にはいかない…!


「!!」


ジョキジョキジョキッ!



 背の高い、ススキのような草むらを進んでいたら、背後から

やって来る不審な音に気付き、慌てて2人に被さって頭を低くする。


ズシャッ!


「…ッ!」


右腕に衝撃を感じた。その後にジワジワと痛みと熱さが襲って来る。

そっと右腕に触れると、ヌルリとした嫌な感触がした。

腕が切られた…刃物!? 


「どーこかなー!ギャハハハハハハハッ!!」


飛び道具まで持っているなんて…っ。状況はもっと悪くなったなぁ。

こうなったら…。



「…2人とも、私が(おとり)になるから逃げなさい。

なんとか、あの男の注意を逸らすから。」


「な、何言ってんだ!そんなことしたら、アンタは…!」


 分かってる。

それに、この方法は正直 危険だ。


途中で敵に見つかるかもしれない。

だけど。


「行って。私、こんな方法じゃなきゃ役に立たないんだから。

…お姉さんにも、かっこつけさせてよ。」


アルヴィ君は悔しそうに(うつむ)いている。

…あぁ、泣いているの?



「どうして、どうして俺は、こんなに無力なんだ…っ」



私は、何も言わず彼を抱きしめる。


君はきっと、これから、もっと強くなれる。

大丈夫。今は生きて帰ることだけ考えていればいいの。


「…リツキさん、ルーちゃんを連れて行って。」


え?ルーちゃんを?


「でも、」


「必ず、帰って来て。必ずだよ。」


必死に涙をこらえるオルヴォ君に負けて、ルーちゃんを肩に乗せて

私は、彼に誓う。


「…わかった。絶対に生きて帰るね。」


日本式に、小指を絡めて指切りもした。約束、必ず守るからね。



*****



 私の合図で、オルヴォ君がこの場にランダムに石や小岩を落下させ、

アルヴィ君も今ある精一杯の力で、風を起こす。

その間に、私が(おとり)になり2人はここから出来るだけ、

遠くへ逃れる。


作戦としては、穴だらけだ。しかし、今はこれしかない。




 この世界の神様。どんな神様か、私は知らないけれど どうか。

どうか、2人をお守り下さい。


目を数秒閉じて、深呼吸し、私は2人に合図を送った。




次回、謎の誘拐編の完結になります。

今回の倍くらいに、長くなってしまうことが予想されます…。

…良ければ、お付き合い頂ければ幸いです。

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