1・そうだ、塾へ行こう
1・そうだ、塾行こう
勉強というのはどうも好きになれない。
社会に出てから「大政奉還」なんて役に立たないし、「論語」なんてもの、いつ使う。
「棚橋、聞いているのか?」
はいはい、聞いていますよ。
「じゃあ、□1、この問題、答えは。」
『宗教改革を行った人物を答えよ。』
「ル・・・ルター・カルヴァン?」
「そうだ。」
棚橋悠斗。
先ほど返された中間テストの氏名を書く所を見ていた。
そして点数。57点。
その横に書いてある平均点。68点。
先ほど答えた問題は、僕が間違えた所だった。
宗教改革。
いっそこの世界を勉強の無い世界に改革してくれればよかったのに。
そう思った。
「そういえばさ、今回も1位、吉井だとよ。」
部活の帰り、カラスが鳴いている、不気味な住宅街。
時刻は・・・7時半、というところか。
「へぇ。」
僕はあいまいな返事をした。
友達と一緒に帰る。いつもの日課。
中学に入学して7ヶ月。
同じ部活。同じクラス。
同じ小学校の出身。
クラスのムードメーカー。
そして、男子で5番目の成績という天才だ。
「じゃあな」
そこで友達とは別れた。
家に帰り
「テストの結果はどうだったんだ?」
という父親の声。
過去のテストのときとまったく同じときの質問。
「まあまあ」
と答えるのも同じ。
しかし、次に父親が発した言葉は違かった。
「次に、平均点以下をとったら、部活辞めさせるから。」
「はぁ?」
それは困る、僕の唯一の学校での楽しみが。
どうしよう。家庭教師を雇うのはいやだ。
真面目に勉強?やり方がわからない。
そのとき、旅行会社の広告で、京都へのツアーというのが目に入った。
僕は無意識のうちにつぶやいた。
「そうだ、塾へ行こう」