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第八章 包囲の中の決断

 塔の周囲に人影が集まってきた。十人、二十人、それ以上。松明の光が夜の闇を赤く照らしていた。

 ルードは父を支えながら、後方に下がった。エルネが前に出て、剣を抜いた。

「多すぎる」エルネが静かに言った。「正面突破は難しい」

「逃げ道は?」

「来た道に戻るしかないが、囲まれている。少しでも引き付ける時間を作らないと」

 父が口を開いた。「待て。逃げなくていい」

 ルードとエルネが父を見た。

「ここで逃げても意味がない。奴らはまた追ってくる。この機会に話をするべきだ」

「話?」ルードは言った。「あいつらは父さんを七年間も閉じ込めていたんだぞ」

「七年間ずっと監禁されていたわけではない」父は静かに言った。「最初の五年は、俺も向こう側の者たちと協力関係にあった。決裂したのは二年前だ。あの封印の扱いについて、意見が分かれた」

 集まってきた人影の中から、一人が前に出てきた。

 背の高い男だった。五十代くらいで、長い白髪を後ろに束ねている。装備は豪華で、明らかに指導者格だ。その眼はルードが今まで会った誰の眼とも違う色をしていた。深い紫色で、夜の闇の中でも光っているように見えた。

「クレント・アルヴェン」男は穏やかな声で言った。「また会えたな。今度は息子まで連れてきたか」

「ヴァルム」父が言った。「もう終わりにしよう。七年も十分だ」

「終わりにする、とはどういう意味かな」ヴァルムと呼ばれた男はルードを見た。「息子よ、お前が来ることはわかっていた。光の感応者がここに向かってくることを、塔は感知している。お前たちの血が光と共鳴するから、近づくと塔が反応する」

「俺たちをどうするつもりだ」

「どうもしない。話したいだけだ。剣を下ろすなら、安全を保証する」

 ルードはエルネを見た。エルネは眉をひそめていた。

「信用できるか」ルードは父に聞いた。

「……信用できないが、この状況では他に選択肢がない」父は言った。「ヴァルムは残酷な男ではない。ただ、考え方が違う。それだけだ」

 エルネはゆっくりと剣を鞘に収めた。

 ヴァルムは頷いて、手下たちを下がらせた。「来い。話をしよう。夜の外は寒い」

 一行は塔の内部に戻った。今度は地下ではなく、塔の中層の部屋に案内された。広くて暖かい部屋で、テーブルと椅子があった。食事が用意されていた。

「座れ」ヴァルムは言った。「食事をしながら話そう。お前たちは長い旅をしてきた」

 ルードは父を椅子に座らせた。父は食事に手を伸ばした。七年間、こういった食事をしていなかったのかもしれない。あるいは今は緊張で腹が減っているのか。

「父さん、体は大丈夫か」

「大丈夫だ。最初の一年は辛かったが、後は慣れた。食事は出ていた。むしろこちら側の食べ物の方がうまいとさえ思うようになった」

 ヴァルムが椅子に座った。ルードと向き合う形で。

「息子よ、名前を聞いていいか」

「ルード・アルヴェンだ」

「ルード。いい名前だ。お前の父が選んだのか」

「そうらしい」

「クレントらしい名だ」ヴァルムは微かに笑った。「シンプルで、力強い。あの男の性格そのものだ」

 父は黙って食べていた。

「お前に話したいことがある、ルード」ヴァルムは言った。「お前はここに来るまでに、どんな話を聞いてきた。組織の者たちから」

「父が三百年前の封印に関わって捕まった。封印の真実を解き明かすために動いていた。そう聞いた」

「大筋は正しい。だが、肝心なことが抜けている」

「何が抜けている」

 ヴァルムは少し間を置いた。「封印を解いたら世界はどうなるか、という話が」

「世界が一つに戻ると父から聞いた」

「そうだ。では、世界が一つに戻ったら何が起きるか。それをお前は聞いたか」

 ルードは黙った。聞いていなかった。

「教えてくれ」

「こちら側とあちら側、二つの世界がある。三百年前に一つだった世界が二つに分かれた。その分断によって、多くのものが失われた。人々は分断され、文明は退行し、こちら側の生き物たちは孤立した」ヴァルムは言った。「だが三百年間で、両側の世界はそれぞれ独自に発展した。それぞれに文化がある。それぞれに人々が生きている。それぞれに歴史がある」

「封印を解いて世界が一つに戻ったら、その独自の発展が消える可能性がある、ということか」

「そうだ」ヴァルムは頷いた。「封印を解放する力は、世界を元に戻す力だ。だがそれは同時に、三百年分の積み重ねを消す力でもあるかもしれない」

 ルードは父を見た。父は食事の手を止めていた。

「父さん、それを知っていたか」

「……知っていた」父は静かに言った。「だからヴァルムと意見が分かれた。俺は、それでも封印を解くべきだと思った。ヴァルムは、解くべきでないと言った」

「なぜ解くべきだと思ったんだ」

 父はしばらく黙っていた。それからゆっくりと言った。「あの封印の中にいるものが、苦しんでいるからだ」


 沈黙が落ちた。


「苦しんでいる?」ルードは言った。

「あの光は、生きている」父は言った。「三百年前に空から落ちてきたものは、ただの物体ではない。意志を持っている。そして三百年間、封印の中に閉じ込められて、苦しんでいる。俺はその苦しみを感じた。お前の血筋だからわかる。光を知覚できるからこそ、その意志も感じることができる」

 ヴァルムは静かに頷いた。「その点は私も否定しない。確かにあの光は苦しんでいる。だが、苦しんでいるからといって、それを解放することが正しいとは言えない。解放した結果、さらに大きな悲劇が起きる可能性がある」

「どんな悲劇だ」ルードは言った。

「あの光が完全に解放されたとき、その力がどれほどのものかは誰にもわからない。三百年前に世界を二つに割ったほどの力だ。制御できなければ、今度は世界を完全に壊してしまうかもしれない」

 ルードは頭の中で情報を整理しようとした。封印の中の光。苦しんでいる存在。解放すれば世界が一つに戻るかもしれないが、世界を壊してしまうかもしれない。

「どちらが正しいとも言えない問題だ」ルードは言った。

「そうだ」ヴァルムは言った。「だから七年間、クレントと議論し続けた。答えは出なかった。二年前に決裂したのは、クレントが独断で行動しようとしたからだ」

「行動というのは、封印を解こうとした、ということか」

「そうだ。だから止めた。傷つけるつもりはなかったが、放っておくわけにもいかなかった」

 父は静かに言った。「俺はあの光の苦しみに耐えられなかった。七年間、毎日感じていた。それが分かるのは俺たちの血筋だけだ。ヴァルムにはわからない感覚だ」

 ルードは立ち上がった。「扉を見せてくれ。あの光のある場所だ。自分で確かめたい」

 ヴァルムはルードを見た。長い間。そして静かに言った。「見せよう。ただし私も同行する


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