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第十章 夜明けの前に

 ルードはその夜、父と同じ部屋で眠った。二つのベッドがある小さな部屋で、塔の中層にあった。

 エルネは入り口を守ると言って廊下に残った。信用するとは言ったが、警戒を怠る性格ではない。

 ルードと父は並んでベッドに座って、長い時間話をした。

「七年間、何をしていたんだ」

「最初の五年は、ヴァルムたちと研究をしていた。あの光の正体を解明しようとした。それからヴァルムと決裂して、閉じ込められた。残りの二年は、あの光の声を聞いていた。直接触れることはできなかったが、声なら届いていた」

「それで意識が通じたんだな。俺が触れたとき、すぐに対話ができた」

「そうだ。俺が七年間かけて作った道を、お前が一気に渡った」父は苦笑した。「お前の方が俺より才能がある。子どもはそうあるべきだが、複雑な気持ちだ」

「父さんにしかできなかったことがある」ルードは言った。「七年間ここにいて、情報を集めて、俺に手紙を送った。俺に来る理由を作ってくれた」

「それは……そうだな」父はしばらく黙った。「お前に来てほしかったのは本当だ。助けに来てほしかったのは本当だ。だが同時に、来てほしくなかった気持ちもあった。危険だから」

「でも来た」

「来た。お前らしい」

 父が笑った。ルードも笑った。

「母さんは二年後に死んだ」ルードは言った。「父さんが消えてから二年後に。病気だった。あまり苦しまずに逝けた、と近所の人は言っていた」

 父の表情が変わった。言葉が出なかった。

「母さんは最後まで父さんのことを話していたらしい。俺はそのときはガルクの師匠のところにいたから、直接は聞いていない。近所の人から後で聞いた」

「……そうか」

「母さんのことは、ここではほとんど考えなかったんだろうな」

「考えていた。毎日考えていた」父は静かに言った。「だからこそ、考えすぎて辛くなって、あの光の声を聞くことに集中した。逃げていたのかもしれない」

「逃げてもいい」ルードは言った。「辛いんだから」

 父は驚いたような顔をした。それからまた笑った。「お前は俺よりずっと大人だな」

「師匠のガルクに育てられたから。ガルクは感情を効率よく処理する人間だ。見習った」

「ガルク爺には一度礼を言わなければならない」

「帰ったら会えるよ。ミルヴェにいる」

 外が静かだった。夜の音がした。こちら側の夜の音だ。知らない鳥の声と、風の音と、何か遠くのものが動く気配。

「父さん、一つ聞いていいか」

「何だ」

「なぜ最初から組織に言わなかった。封印を解くことを」

 父は少し考えた。「言えば止められると思ったから。マルクスたちは慎重だ。あの光を解放するリスクを話せば、必ず反対する。俺は行動を優先した。それで判断を誤った」

「誤ったとは思わない」ルードは言った。「父さんがここまで来て、七年間研究してくれたから、今夜こうなっている」

「楽観的だな」

「現実的だ」

 また沈黙があった。今度は穏やかな沈黙だった。

「明日の夜明けが来たら、どうなると思う」ルードは言った。

「わからない」父は言った。「だが、あの光が言ったことを信じるなら、世界は静かに一つになる。裂け目が消える。こちら側とあちら側の区別がなくなる。そして俺たちは、向こう側に帰れるようになる」

「帰れるようになる」

「そうだ。裂け目がなくなれば、渡り機も必要ない。どこからでも行き来できる。境界線がなくなるから」

 ルードはそれを想像した。世界に境界線がない状態。どこからでもどこへでも行ける世界。

「それは……いいことだな」

「そうだと思う」父は言った。「ただし、向こう側の人々とこちら側の人々が同じ世界に生きることになる。摩擦が起きないとは言えない。長い時間がかかる統合が始まる」

「それでも今より良い」

「そう思いたい」

 二人は黙った。窓の外が少しずつ白んでいった。

 夜明けが近づいていた。

 ルードはベッドに横になった。眠れるかどうかわからなかったが、体を休めようとした。

 父も横になった。しばらくして、父の呼吸が規則的になった。眠ったようだ。

 ルードは天井を見た。石造りの天井だ。その向こうに、空がある。夜明けの空が。

 もうすぐ、三百年前から続く何かが終わる。

 そしてまた、何かが始まる。

 ルードは静かに目を閉じた。


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