第九章 光との対話
地下への石段を三人で降りた。エルネも来た。ヴァルムの部下が数人、距離を置いてついてきた。
あの扉の前に立った。父が閉じ込められていた部屋の奥の扉だ。扉の隙間から赤い光が漏れている。
「開けていいか」
「どうぞ」ヴァルムが言った。
ルードは扉に手をかけた。触れると、扉は熱かった。物理的な熱ではなく、先ほどと同じ感覚の熱だ。内側から来る何かの。
扉を押し開けた。
光が溢れ出た。
目が慣れると、部屋の奥が見えた。
そこには石があった。大きさはルードの頭ほど。形は不規則で、複数の面がある。表面は完全に赤く光っていて、周囲に熱気を放っている。物理的な熱ではない。感覚の熱だ。
ルードは近づいた。一歩、また一歩。石に近づくにつれて、何かが大きくなった。声ではない。映像でもない。だが確かに何かがそこにある。
ルードは石の前で立ち止まった。手を伸ばした。
「待て」ヴァルムが言った。「触れると何が起きるかわからない」
「わかっている」ルードは言った。「でもやらなければならない」
父が言った。「ルード、お前が触れれば何かが変わる。俺も触ろうとしたが、毎回直前で止められた。お前は今、俺より深くここまで来ることができた。お前には俺より強い力がある。試してみろ」
ルードは石に触れた。
瞬間、世界が変わった。
体が動かせなかった。場所が変わったわけではない。同じ部屋の同じ場所に立っているが、意識が別の場所に行った。
広大な、暗い場所だった。
そしてそこに、何かがいた。
形は不定だった。大きくなったり小さくなったりして、定まらない。だが存在感は圧倒的で、ルードはそれが「生きている」ことを全身で感じた。
何かが声を発した。言葉ではなかった。だがルードには理解できた。
苦しい、という意味だった。
「わかる」ルードは言った。声が出るかどうかわからなかったが、言葉が出た。「三百年間、ここに閉じ込められているのか」
肯定の意味が伝わってきた。
「お前は何だ。どこから来た」
映像が来た。夜の空だ。星がある。そして何かが星の間を移動している。光の球だ。それが地球に向かってきて、大気に突入して、地面に落ちた。その衝撃で何かが壊れた。世界が割れた。
あれは大断絶だ。三百年前の出来事だ。
「お前が落ちてきたことで、世界が割れたのか。意図したことか」
否定の意味が来た。
「意図しなかった。事故だったのか」
肯定。そして悲しみの感覚が来た。三百年間の悲しみだ。何万日分もの後悔と苦しみが、一瞬でルードに流れ込んできた。
ルードは息ができなかった。その感情の重さに押しつぶされそうになった。
だが耐えた。
「わかった。お前は意図せず世界を壊した。そしてその責任を取るために、封印の中に留まっていた。自分で自分を封じていたのか」
沈黙。それから、複雑な意味が来た。
自分で封じていた、というのは半分正しく半分間違いだった。三百年前の人間たちが封印を作った。だがその封印に協力したのは、この存在自身でもあった。自分の力を恐れて、封印に同意した。
「外に出たいか」
肯定。強い肯定。三百年間の渇望だ。
「外に出てどうする。世界を壊す力があると聞いた」
否定。強い否定。そして映像が来た。二つに分かれた世界が、静かに一つに戻る映像だ。爆発でも崩壊でも壊滅でもなく、穏やかに、静かに、二枚の紙が一枚になるように。
「制御できるのか」
肯定。三百年間、学んだ、という意味の感覚が来た。三百年間、自分の力を完全に制御する方法を学び続けた。今なら大丈夫だ、という確信が伝わってきた。
ルードは少し考えた。
この存在を信じるべきか。信じなければ、父は正しかったが行動できなかったことになる。信じれば、世界が変わるかもしれない。あるいはヴァルムが恐れる通り、世界が壊れるかもしれない。
だが、ルードには確信があった。
この存在が苦しんでいることは、本当だ。その苦しみは嘘をつけない。三百年分の後悔と悲しみと渇望は、作り物ではない。
意識が戻ってきた。
ルードは手を石から離した。部屋が見えた。エルネが心配そうにこちらを見ていた。父も。ヴァルムも。
「どうだった」父が言った。
「話ができた」ルードは言った。「この存在は、三百年間、自分で自分を封じていた。外に出たがっている。そして世界を壊すつもりはない。制御できると言っている」
「信じるか」ヴァルムが言った。
「信じる」
ヴァルムは深い溜め息をついた。「七年間で、誰もあの光と直接対話できた者はいなかった。お前の父も、私も。触れることさえできなかった。それをお前はやってのけた」
「父さんの準備があったから」ルードは父を見た。「父さんが七年間研究して、道を切り開いてくれた。俺はその道の上を歩いただけだ」
父は黙っていた。目が潤んでいた。
「ヴァルム」ルードは言った。「封印を解くことに同意してくれるか」
ヴァルムは長い間黙っていた。部屋の中が静かだった。石の光だけが赤く揺れていた。
「条件がある」ヴァルムはようやく言った。「解放は今夜ではなく、明日の夜明けだ。その間に、こちら側の者たちに知らせる必要がある。長年ここで生きてきた者たちが、変化に備えられるように」
「わかった」
「それと」ヴァルムは続けた。「封印を解く際には、私も立ち会う。賛成はしないが、反対もしない。ただ見届けたい。三百年前からの問題が終わる瞬間を」
「もちろんだ」
ヴァルムは静かに頷いた。「では、今夜は休め。明日の夜明けに始めよう」




