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星砕きの剣 ―覚醒―

作者:もたきち
最新エピソード掲載日:2026/03/17
 世界が割れたのは、三百年前のことだった。
 いまでは誰もがその話を知っている。学者たちは「大断絶」と呼び、吟遊詩人たちは「神々の泣き声」と歌い、老人たちは子どもたちに「空が赤く染まった夜があった」と語り聞かせる。だが実際にその夜を生き延びた者は、もはや一人も残っていない。
 残っているのは傷跡だけだ。
 大陸の中央部に走る巨大な亀裂、通称「裂け目」は、今も昔も塞がることなく大地を東西に分断している。幅は最も狭い場所でも三百メートル、最も広い場所では一キロメートルを超える。深さは誰も知らない。測ろうとした者が何人もいるが、全員が途中で命綱を切られ、あるいは自分から綱を手放して落ちていった。裂け目の底には何かがいる、と人々は信じている。あるいは何かが「いた」と。
 ルード・アルヴェンが初めて裂け目を見たのは、七歳の誕生日のことだった。
 父親に連れられて、王都グラニスから四日かけて馬車で移動した先に、裂け目の観光用展望台があった。父は商人で、その旅は取引のついでだったが、ルードにとっては生涯忘れられない経験になった。
 展望台の柵に摑まって、ルードは黒い深淵を覗き込んだ。風が吹き上げてきて、帽子が飛んだ。父親が笑いながら新しい帽子を買ってくれると言った。だがルードは帽子のことなど気にならなかった。
 裂け目の向こう側に、何かが光っていた。
 赤い光だった。規則的に、脈打つように明滅している。まるで何か巨大なものの、心臓の鼓動のように。
 父親には見えなかったらしい。周りの大人たちにも。ルードが「あそこが光ってる」と言うと、みんなが優しく笑った。「子どもは想像力が豊かだね」と言いながら。
 十二年後、ルードはその光の正体を知ることになる。
 そしてその知識が、彼の人生を、そしてこの世界を、根本から変えてしまうのだった。
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