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Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
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9/30

9.お化け屋敷

天気のいい朝。カーテンの隙間から射し込む光が、ロイのまぶたをくすぐった。


「……支度しないと」


ベッドから起き上がった瞬間、スマホが震える。画面には「ルイーザ」。


「もしもし――」


『ロイ!起きた? 早く準備しなさいよ。スクールバス、時間ぴったりに来るんだから!』


「分かってるって。二年も通ってる。朝から大声はやめて」


『……心配してるだけ』


電話はそこで切れた。


(ほんとに毎日毎日……。でも、あれがルイーザなりの優しさなんだよな)


ロイたちが通う公立の中学校へは、スクールバスで通う。

制服に着替え、トーストをかじってマグの紅茶を飲み、家を出た。


バス停で風に吹かれながら、ロイは小さく愚痴る。


「……僕、子どもじゃないのに」


それでも、心のどこかは少し温かい。ルイーザの“おせっかい”が、嫌いではないのだ。


⸻


教室に入ると、すぐに声が飛んだ。


「おはよう、ロイ」


ジョセフだ。言葉は控えめだが、理科の話になると目が変わる。

ロイは彼から科学の知識を教わることが多い。


「お前ってさ、寝坊しないよな。なんで?」


「規則正しい生活をしてるから。夜更かしもしない」


そう答えると、前の席から明るい声。


「でもルイーザが毎日モーニングコールしてるって聞いたよ?」


ソフィが振り返った。柔らかく笑っている。

(……今日もソフィは、やっぱり可愛い)


「おはよう、ソフィ」


「おはよう、ロイ君」


そこへウィギンズが肩を揺らして笑う。


「なーんだ。ルイーザのおかげか。そりゃ寝坊しねぇわ」


「違うよ。電話が鳴る前にちゃんと起きてる。ルイーザが勝手に――」


「悪かったわね。“勝手に”」


背後から冷たい声。

振り向くと、ルイーザが腕を組んで立っていた。


「ル、ルイーザ……おはよう。……いつからいた?」


「『ルイーザが勝手に』って言ったところから」


(まずい。今日は夕飯、抜きかも……)


前に本気で怒らせたとき、彼女は本当に料理を作ってくれなかった。


空気が凍りかけたところへ、ソフィが話題を切り替えるように言った。


「ねえ、ニュース見た? 二週間前、隣町ストーンブリッジで宝石強盗があったんだって。二人組で、まだ捕まってないらしいよ」


ジョセフが眉をひそめる。


「僕も見た。ここから近いし……怖いよね」


ストーンブリッジは、レイヴンフォードの隣町――バスで二十分ほど、境界の川を越えた先だ。


ウィギンズが身を乗り出した。


「怖い話ならもう一個。レイヴンフォードの町外れ、旧道の先に廃屋敷があるだろ。あそこで“光る化け物”が出るって噂知ってるか?」


「光る化け物?」


「ああ。全身が光ってて、人は襲わない。最後は屋敷に戻ってったってさ。白い煙も出て、ひんやりするらしい」


ウィギンズは声を潜めた。


「屋敷の前に煙みたいなのが出てて、ひんやりしてるらしい。物音もして、近所の人が通報したんだって。……でも警察が行ったら、誰もいなかった」


「物音がするのに?」


シャロンが眉をひそめる。


「しかも“ガシャーン”ってガラスが割れる音までしたらしいぜ。シャンデリアが落ちて割れてたって」


ウィギンズは声を潜めた。


「屋敷の前に煙みたいなのが出てて、ひんやりしてるらしい。物音もして、近所の人が通報したんだって。……でも警察が行ったら、誰もいなかった」

ウィギンズはニヤリと笑う


「今日の放課後、行こうぜ。噂の“お化け屋敷”」


「やだよ……」


ジョセフが即答。


「私はパス」


ルイーザもきっぱり。


「わざわざ怖いところに行きたくないもの」


シャロンも首を横に振る。


ウィギンズはロイを見る。


「ロイは?」


ロイは少しだけ考え、答えた。


「……行く。噂の正体、確かめたい」


「おし!」


ウィギンズは勢いよく立ち上がる。


「ジョセフも一緒に来い!」


「えっ、僕も!?」


ロイはジョセフへ静かに言う。



「原因が分かれば怖くないと思うんだ。……それに、何かあったらすぐに引き返す。無理はしないから。」


ジョセフは逡巡して、やっと頷いた。


「……うん。皆と一緒なら」


ルイーザがソフィの腕を引く。


「私たちは放課後は喫茶店で温かい紅茶でも飲みましょう。」


「いいわね」


こうしてロイ、ウィギンズ、ジョセフの三人は、廃屋敷へ向かうことになった。


⸻


放課後。

町外れ――旧道の先に、黒ずんだ屋敷が立っていた。石垣は崩れ、庭には雑草が伸び放題だ。


「……ボロボロだな」


「七年前に住人が消えたって話だ。父ちゃんが言ってた」


ジョセフが不安そうに言う。


「本当に入るの……?」


「まず外から確認しよう。危なかったら引き返す」


ロイはそう言って、スマホを取り出す。


「……念のため。本屋のジェームズさんに、場所だけ送っておく。すぐ戻るって」


「慎重だな」


「当たり前。噂が本当なら、子どもだけで突っ込むのは無謀だ」


ロイが送信を終えると、ウィギンズがドアに手をかけた。


そのとき、足元に色とりどりの石が散らばっているのが目に入った。


ロイがしゃがみ込む。


「……この石、変だ」


「どうしたの?」


「色が派手すぎるのが混ざってる。しかも、自然な散らばり方じゃない」


ウィギンズが肩をすくめる。


「最近、急に置かれるようになったって近所の人が言ってた。噂が出始めた頃からだって」


(二週間前……宝石強盗と同じ時期)


ロイは胸の奥に小さな引っかかりを抱えたまま、屋敷に足を踏み入れた。


ひんやりした空気。

白い“もや”のようなものが漂い、喉の奥が冷たくなる。


「寒っ……」


「錆の匂いがする……」


ガラスと金属の装飾、埃をかぶったシャンデリア。

(七年でここまで……? いや、違う。作られた“古さ”に見える)


ロイはスマホのライトを点け、足元と壁際を照らした。


光がガラス片に当たった瞬間、反射の具合がわずかに妙に見えた。


(……あとで確かめよう)


居間。机の上に若い男二人の写真。

ソファの上に白い毛。毛先に、かすかに光る粉。

ジョセフが小さく言う。


「ねえ、早く帰ろうよ……」


そのとき。


「しーっ」


ウィギンズが台所を指差した。


薄暗い奥。全身が発光して見える“大きな影”が、何かを食べている。


影が振り向き――こちらへ走ってきた。


「――っ!」


三人は反射的に目をつぶった。


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