表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
9/11

9.お化け屋敷

天気のいい朝。カーテンの隙間から射し込む光が、ロイのまぶたをくすぐった。


「……支度しないと」


ベッドから起き上がった瞬間、スマホが震える。画面には「ルイーザ」。


「もしもし――」


『ロイ!起きた? 早く準備しなさいよ。スクールバス、時間ぴったりに来るんだから!』


「分かってるって。二年も通ってる。朝から大声はやめて」


『……心配してるだけ』


電話はそこで切れた。


(ほんとに毎日毎日……。でも、あれがルイーザなりの優しさなんだよな)


ロイたちが通う公立の中学校へは、スクールバスで通う。

制服に着替え、トーストをかじってマグの紅茶を飲み、家を出た。


バス停で風に吹かれながら、ロイは小さく愚痴る。


「……僕、子どもじゃないのに」


それでも、心のどこかは少し温かい。ルイーザの“おせっかい”が、嫌いではないのだ。



教室に入ると、すぐに声が飛んだ。


「おはよう、ロイ」


ジョセフだ。言葉は控えめだが、理科の話になると目が変わる。

ロイは彼から科学の知識を教わることが多い。


「お前ってさ、寝坊しないよな。なんで?」


「規則正しい生活をしてるから。夜更かしもしない」


そう答えると、前の席から明るい声。


「でもルイーザが毎日モーニングコールしてるって聞いたよ?」


ソフィが振り返った。柔らかく笑っている。

(……今日もソフィは、やっぱり可愛い)


「おはよう、ソフィ」


「おはよう、ロイ君」


そこへウィギンズが肩を揺らして笑う。


「なーんだ。ルイーザのおかげか。そりゃ寝坊しねぇわ」


「違うよ。電話が鳴る前にちゃんと起きてる。ルイーザが勝手に――」


「悪かったわね。“勝手に”」


背後から冷たい声。

振り向くと、ルイーザが腕を組んで立っていた。


「ル、ルイーザ……おはよう。……いつからいた?」


「『ルイーザが勝手に』って言ったところから」


(まずい。今日は夕飯、抜きかも……)


前に本気で怒らせたとき、彼女は本当に料理を作ってくれなかった。


空気が凍りかけたところへ、ソフィが話題を切り替えるように言った。


「ねえ、ニュース見た? 二週間前、隣町ストーンブリッジで宝石強盗があったんだって。二人組で、まだ捕まってないらしいよ」


ジョセフが眉をひそめる。


「僕も見た。ここから近いし……怖いよね」


ストーンブリッジは、レイヴンフォードの隣町――バスで二十分ほど、境界の川を越えた先だ。


ウィギンズが身を乗り出した。


「怖い話ならもう一個。レイヴンフォードの町外れ、旧道の先に廃屋敷があるだろ。あそこで“光る化け物”が出るって噂知ってるか?」


「光る化け物?」


「ああ。全身が光ってて、人は襲わない。最後は屋敷に戻ってったってさ。白い煙も出て、ひんやりするらしい」


ウィギンズは声を潜めた。


「屋敷の前に煙みたいなのが出てて、ひんやりしてるらしい。物音もして、近所の人が通報したんだって。……でも警察が行ったら、誰もいなかった」


「物音がするのに?」


シャロンが眉をひそめる。


「しかも“ガシャーン”ってガラスが割れる音までしたらしいぜ。シャンデリアが落ちて割れてたって」


ウィギンズは声を潜めた。


「屋敷の前に煙みたいなのが出てて、ひんやりしてるらしい。物音もして、近所の人が通報したんだって。……でも警察が行ったら、誰もいなかった」

ウィギンズはニヤリと笑う


「今日の放課後、行こうぜ。噂の“お化け屋敷”」


「やだよ……」


ジョセフが即答。


「私はパス」


ルイーザもきっぱり。


「わざわざ怖いところに行きたくないもの」


シャロンも首を横に振る。


ウィギンズはロイを見る。


「ロイは?」


ロイは少しだけ考え、答えた。


「……行く。噂の正体、確かめたい」


「おし!」


ウィギンズは勢いよく立ち上がる。


「ジョセフも一緒に来い!」


「えっ、僕も!?」


ロイはジョセフへ静かに言う。



「原因が分かれば怖くないと思うんだ。……それに、何かあったらすぐに引き返す。無理はしないから。」


ジョセフは逡巡して、やっと頷いた。


「……うん。皆と一緒なら」


ルイーザがソフィの腕を引く。


「私たちは放課後は喫茶店で温かい紅茶でも飲みましょう。」


「いいわね」


こうしてロイ、ウィギンズ、ジョセフの三人は、廃屋敷へ向かうことになった。



放課後。

町外れ――旧道の先に、黒ずんだ屋敷が立っていた。石垣は崩れ、庭には雑草が伸び放題だ。


「……ボロボロだな」


「七年前に住人が消えたって話だ。父ちゃんが言ってた」


ジョセフが不安そうに言う。


「本当に入るの……?」


「まず外から確認しよう。危なかったら引き返す」


ロイはそう言って、スマホを取り出す。


「……念のため。本屋のジェームズさんに、場所だけ送っておく。すぐ戻るって」


「慎重だな」


「当たり前。噂が本当なら、子どもだけで突っ込むのは無謀だ」


ロイが送信を終えると、ウィギンズがドアに手をかけた。


そのとき、足元に色とりどりの石が散らばっているのが目に入った。


ロイがしゃがみ込む。


「……この石、変だ」


「どうしたの?」


「色が派手すぎるのが混ざってる。しかも、自然な散らばり方じゃない」


ウィギンズが肩をすくめる。


「最近、急に置かれるようになったって近所の人が言ってた。噂が出始めた頃からだって」


(二週間前……宝石強盗と同じ時期)


ロイは胸の奥に小さな引っかかりを抱えたまま、屋敷に足を踏み入れた。


ひんやりした空気。

白い“もや”のようなものが漂い、喉の奥が冷たくなる。


「寒っ……」


「錆の匂いがする……」


ガラスと金属の装飾、埃をかぶったシャンデリア。

(七年でここまで……? いや、違う。作られた“古さ”に見える)


ロイはスマホのライトを点け、足元と壁際を照らした。


光がガラス片に当たった瞬間、反射の具合がわずかに妙に見えた。


(……あとで確かめよう)


居間。机の上に若い男二人の写真。

ソファの上に白い毛。毛先に、かすかに光る粉。

ジョセフが小さく言う。


「ねえ、早く帰ろうよ……」


そのとき。


「しーっ」


ウィギンズが台所を指差した。


薄暗い奥。全身が発光して見える“大きな影”が、何かを食べている。


影が振り向き――こちらへ走ってきた。


「――っ!」


三人は反射的に目をつぶった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ