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Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
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7/30

7.暗号

「ロイ、頼み事があるんだが」


「何?」


「クラウンの常連さんのリチャードさんからな、どうしても解読できない暗号があるから、代わりに解いてほしいって頼まれたんだ。お前に、だ」


クラウンとは、ジェームズさんの本屋の名前だ。


「別にいいけど……どうして僕に?」


「レストランで、お前が推理したことを知っているみたいだった」


「えーっ!」


思わず大きな声が出る。

一体、どこから聞いたんだろう。


「……嫌なら断っておくが」


「うーん……」


(悩むな。レストランの一件を知っているなら、断りづらい。

僕が推理できるってことを、もう分かっているわけだし。

かといって、安易に引き受けたら次も頼まれそうで嫌だな……)


リチャードは実業家で、顔が広く、本が好きな感じのいい人だ。

ロイと同じで、本が好きだという。


(確か……最近、娘さんを亡くされたって聞いたけど……)


「報酬はな、本を十冊。好きなものを選んでいいらしい」


「えっ……本を十冊?」


その言葉に、思わず目が輝く。


「本当に十冊も(・)、くれるの?」


「ああ。間違いなくそう言っていた」


「やる! 絶対やらせて!」


ロイのやる気スイッチが、完全に入った。


「それは助かる。リチャードさんも喜ぶだろう。

今日は休みだと聞いている。早速、今から行ってきてくれ」


「はーい! 行ってきまーす!」


ウキウキした気分で、ロイは本屋を飛び出した。


(本を十冊も(・)くれるなんて……なんていい人なんだろう)


ロイが上機嫌で去った後、ジェームズは小さくため息をついた。


「本当は“十冊”じゃなくて、“好きなだけ”って言われてたんだが……

それはロイには内緒にしておこう。

そんなことを言ったら、家中の本を持っていきかねないからな」


独り言のように呟く。


⸻


「よし、頑張るぞ!」


(絶対に、本を手に入れる!)


気合十分で歩いていると、ふと気づいた。


「……で、何で二人がいるの?」


気づけば、ロイの両隣にスティーブとルイーザが立っている。


「何でって? 可愛い弟には保護者が必要だろ。

それに、またお前の名推理が聞けるかと思うと楽しみでな」


スティーブ兄さんが、にこりと笑う。


「私は見張りよ。

誰かさんが本に浮かれて、仕事をサボらないように」


ルイーザは淡々と言った。


「わー、二人とも優しいねー」


ロイは棒読みで返す。

どうやら、ジェームズさんが二人にも同行を頼んだらしい。


(僕だけじゃ、頼りないって思われたのかな……)


⸻


「大きな家ね。さすがお金持ち」


「庭も綺麗だしな。俺もこんな家に住んでみたいよ」


ドアベルを鳴らすと、リチャードが出てきた。


「リチャードさん、こんにちは。暗号の件で来ました」


「おお、ロイくん。来てくれてありがとう。

ジェームズさんから連絡はもらっているよ」


リチャードは、ヒゲを生やした感じのいい男性だった。


「そちらの二人は?」


「初めまして。ロイの近所に住んでいるスティーブと申します」


「幼馴染のルイーザです」


「よろしく。イケメン君と、可愛いお嬢さんだ」


「いえいえ」「いやいや」


二人は慌てて否定した。


「さあ、上がってくれ。お茶を入れよう」


居間に案内され、三人はソファに腰を下ろす。

紅茶とお菓子が運ばれてきた。


(これ……高級なお菓子だわ。さすがお金持ちね)


ルイーザは心の中で呟いた。


⸻


リチャードは、三人の前に三枚の紙を置いた。


「これが、問題の暗号だ」


一枚目の紙には、こう書かれていた。


雲と豆、銀と星、姫とりんご、少女とマッチ

ヒント:私の好きな言葉


二枚目は、青い文字で書かれている。


A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z


男の子と女の子が青い花を探しに出かけました。

二歩進むと、可愛い花がありましたが青色ではありません。

七歩進み、おじいさんに聞いたら、まっすぐ進むと花畑があると教えてくれました。

九歩進むと花畑がありましたが、青色はありません。

十四歩戻ると、おじいさんが待っていて、青い花をくれました。

その瞬間、とても幸せな気持ちになりました。


ヒント:文章をよく読んで。


三枚目には、童話のタイトルが並んでいた。


マッチ売りの少女

人魚姫

赤い靴

眠り姫


ヒント:私はお父さんの体が心配です


これだけでは、すぐには意味が分からない。


「……これは、娘の遺書なんだ」


(遺書……?)


「先日、病気で娘を亡くしてね。

最期まで、ずっと私の体を心配していて……

穏やかな顔で逝ったよ。まだ十歳だった。

本当に、心の優しい子でね」


リチャードの声は、少し震えていた。


「娘さんのお名前は?」


スティーブが静かに尋ねる。


「グウェンだ」


「……いい名前ですね」


ルイーザがそう言うと、リチャードは小さく頷いた。


「亡くなった妻が名付けたんだ。

グウェンは、最期にこの暗号を遺していった。

娘の最後の言葉だから、何とか解きたくてね……」


部屋に、重い沈黙が落ちる。


⸻


「あの……グウェンちゃんの部屋を、見せてもらえますか」


「……ああ、いいよ」


案内された部屋は、青を基調とした内装で、星の飾りが散りばめられていた。

まるで星空の下にいるような空間だ。


「綺麗な部屋……」


「娘がいなくなってからも、手をつけていないんだ」


(……この部屋の本、全部童話だ)


「グウェンちゃん、童話が好きだったんですか?」


「ああ。特に『マッチ売りの少女』がお気に入りだった」


(なるほど……そういうことか)


ロイは、ハンチング帽の鍔を少し上げて、静かに笑った。


「他の部屋も、見せてもらえますか。

娘さんが、どんな生活をしていたのか知りたいんです」


「構わないよ。好きに見て回ってくれ」


⸻


家の中を見て回る。


(一見すると、どこも綺麗な家だ。

でも……おかしいのは台所だ)


(男の一人暮らしだから仕方ないかもしれないけど、散らかっている。

酒瓶も多い……ざっと見ても三十本はありそうだ。

それに、タバコの吸い殻も……)


(娘さんを亡くしてから…きっと眠れなかったんだろうな。“お父さんの体が心配”……三枚目のヒントは、これだな)


「書斎も見てみるかい? 本がたくさんある」


(本……!?)


「ぜひ見たいです!」


書斎に入った瞬間、ロイは息をのんだ。


見渡す限り、本棚が並んでいる。

どの棚にも、ぎっしりと本が詰まっていた。


「……ここは天国ですか!?」


(見たことのない本ばかりだ……

十冊だけなんて、とても選べそうにない……)


(よし、頑張るぞ!)


(……本も嬉しいけど、ちゃんと役に立たないとな)


「私もグウェンも、本が好きでね。

小さい頃は、よく読み聞かせをしたものだよ」


(童話……

やっぱり、あの三枚の答えは――)


ロイの中で、点と点が静かにつながり始めていた。



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