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Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
17/28

17.赤い印

「いくら私が案内したからって、敵に背中を見せるなんて――殺してくれと言っているようなものよ」


耳元で、エンジェルが囁いた。

頬の横に押し当てられていた冷たい金属が、わずかに角度を変える。


引き金にかかる指の気配。


(まずい)


ロイは喉を鳴らした。息が浅い。

足音も、叫び声も、ここでは意味がない。――立ち入り禁止区域だ。


(時間を稼げ)


その瞬間だった。


銃口が、すっと離れた。


「……なーんてね」


エンジェルが軽く笑う。

けれど、笑い声は乾いていた。

銃は下げられていない。ロイの頬に残った金属の冷たさが、まだ消えない。


「ちょっと脅しただけよ。あなたには“身をもって”我々の恐ろしさを知ってもらいたかったの」


「……え?」


ロイは息の仕方を忘れた。心臓だけが暴れている。


「いい? これは警告よ。“赤”はあなたのすぐ近くにいる。とても厄介で、大きい存在。あなたは嫌でも関与することになるわ。あなたのお父さん――リチャードが関わっているから」


「“赤”って……何だ?」


「それは自分で解き明かしなさい。あなたなら――真実を暴いてくれると信じてる」


ロイは唇を噛む。


「……エンジェル。組織の一員でありながら、なぜ僕に――」


「裏口から出て。早く」


エンジェルが指差す。


「またはぐらかすつもりか」


「勘違いしないで。どれだけ情報を与えようと、私が“敵”であることに変わりはない。決して気を許さないこと。……じゃないと」


一瞬だけ、瞳が細くなる。


「本当に死ぬわよ」


その時――通路の奥から、軽薄な声が近づいてきた。


「おーい、エンジェルー。終わったぞー。そっちの見張りはどうだ?」


若い男がこちらへ歩いてくる。


「ほら、早く」


エンジェルの声が低くなる。


ロイは頷くしかなかった。

息を呑み、裏口へ駆け出す。



ロイの背中が闇に溶けたのを確認すると、エンジェルは目を伏せた。


(アーサー王。あなたが、希望の光になって)


「おいエンジェル。さっき誰かと話してなかったか?」


「いいえ。私一人よ。気のせいじゃない?」


男は肩をすくめる。


「なー、さっきジジイが死ぬところ見たか? 人って死ぬ時、あっけないよなー」


ケラケラ笑いながら、馴れ馴れしくエンジェルの肩に手を置いた。


「……触らないで」


バシッ、と乾いた音。

エンジェルが手を払いのける。

そして、触れられた肩口を、汚れを払うみたいに指先で一度だけ拭った。


「ハッハッハッ。冷たいなー。でも相変わらず怒った顔も美人だなー」


「黙りなさい。悪魔〈サタン〉」


苛立ちを隠しもせず、エンジェルが言い捨てる。


「なあ。“あいつ”は?」


「車で待機しているわ。あなたが殺し損ねたら、いつでも呼べるように」


「俺って信用されてねーんだなー」


サタンは軽薄な笑みを浮かべる。

エンジェルは視線だけで突き刺した。


「さっきの発砲音なんだけどさー」


「分かっているわ。今日は客が少ないし、館内アナウンスで誤魔化しておく。館長がいなくなったこの美術館は、どうせ潰れるでしょうけど。……騒ぎになってニュースにならないよう、念のためにね」


「さすがだな。まー潰れなくても、組織に関わった痕跡を消すために燃やすつもりだったし」


サタンはふっと笑い、何かに気づいたように目を細めた。


「でもさー、子ネズミ一匹逃すと……いくらお前でも、最高幹部(うえ)が黙ってないと思うぜ?」


「フフッ。私がそんなヘマするわけないじゃない。私は忠誠を誓っているのよ?」


「そうか。なら良かった。すべては――」


「REDのために」


二人の声が、重なった。



その頃ロイは、裏口から飛び出し、息を切らして走っていた。


靴底が石畳を叩く。

肺が痛い。吐く息が白くほどける。


(……何なんだ、あいつら)


視界が揺れる。背中に、まだ銃口の感覚が残っている。


(落ち着け。まず――生き延びるんだ。)


建物の角を曲がった瞬間、視界の端に停車中の車が映った。


――車内に、男がいる。

指先に、**赤い紙片(十字架マーク)**が挟まっていた


ロイは息を呑んだ。


(……目が、赤い)


血のように濃い赤だ。


男が、こちらを見た。


(まずい。目が合った)


ロイは反射的に速度を上げた。

足音が早くなる。呼吸が乱れる。視界の端で、街灯が流れていく。

角を曲がり、路地へ飛び込んで視界を切る。


それでも――背中の皮膚だけが、見られていると告げ続けた。


(親父は……あんな危険な奴らと関わっていたのか)


答えはない。

5年前に親父は死んでいる。


ふと、エンジェルの言葉が脳裏に蘇る。


『あなたなら真実を暴いてくれると信じてる』


「……やってやるさ」


声は小さくても、芯は硬い。


ロイは角を曲がりながら、さっき見えた赤い紙片を思い出す。

十字架の印。ーー覚えておこう


赤い影は、すぐ近くにいる。

――なら、追いつくまでだ。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

次回は一転して、**花屋で“なくしもの探し”**の回になります。


もしよければ、一言だけでも感想もらえるとすごく励みになります。

例:「怖かった」「エンジェル好き」「サタンむかつく」「赤い目こわ…」みたいな短文で大丈夫です!

評価やブクマも、続きを書く力になります。よろしくお願いします!


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