吾輩は猫であった。名前はまだない。そして、、
散歩中に見つけた、ひっそりとした路地裏。
誰も滅多に通らない道に何となく人の残り香みたいなものを感じました。
人が生きた痕跡、何かあったのかもしれないし何もなかったかもしれない。だけどそこにはなんともいえない、人の温かさを感じるんです。
それを表現しようと思って書きました。
共感できる人がいたら嬉しいです。
吾輩は猫である。
いや、猫であった。名前はまだない。
この星には、昔
ヒトといういきものがいたという。
彼らはこの世界を制し、争いを繰り広げ、最後には消えていったという。まあよくあることだ。この世は弱肉強食。他にもいなくなったいきものは沢山いる。弱いものは淘汰され、強いものが生き残る。そうやって星は生きているのだ。そういえば、イヌといういきものも居たらしいが、ヒトがいなくなった後、少ししていなくなったという。
彼らが居なくなって、どうやら星はようやく息を吹き返したらしい。ヒトがいた時代は星はたいそう体調が悪かったらしい。なぜなら、ヒトは"ぶんめい"とかいういきものを自ら作り出し、それは星を喰らって生きていた。肥大化した"ぶんめい"はこの星のいのちを喰い尽くし、別の星に飛び去ってしまったという。
なんて、めーわくないきものなのだろうか。。。
星は生きている。星の中にいる吾輩たちも星の一部である。いずれ星に帰り、また生まれる。それが自然の摂理だ。
星をめちゃくちゃにして、最後は"ぶんめい"の死骸を残して消えてしまった。死骸は星が、自然が作ったものではないから、ずっと消えないのだ。星に帰れるのは星から生まれたものだけなのである。星は消えない傷を抱えてしまったのだ。
が、しかし、
なぜだろうか。。。そんな罪深きいきものを
私は懐かしく愛おしく感じるのである。
彼らが残した"ぶんめい"の死骸。
その全てからまだほんのりとヒトの残り香がするのだ。
まるでそれは、ひだまりのような、夕焼けのような。
この大きな建物には、どんなヒトたちがいたんだろうか。
この狭い路地裏には、秘密の楽園があったのだろうか。
どんなふうに鳴いていたのだろうか?笑っていたのだろうか?怒っていたのだろうか?
全てわからないのである。
が、彼らもまた星から生まれたいきもの。
我々と同様に母なる星の子供達。つまりは兄弟のようなものなのだ。
どこに行ってしまったのだろうか。
星は時々泣いている。我が子を失った悲しみだろうか。
傷が痛むのだろうか。
冷たい雨がしんしんと降り注ぐ。
また帰ってきてはくれぬだろうか。
星にはまだ残された傷がある。
傷は創り出したものしか治せないのだ。
キミたちがいない星はとても静かだ。
今日もヒトの残り香を元に路地裏を歩く。
吾輩は猫である。名前はまだない。
どうやら猫というのは、ヒトが名付けたらしい。
吾輩は猫であった。名前はもうない。
そして、またヒトの夢を見る。
終わり