軸になるもの
2023年 絵を描いている時のお話
人にはそれぞれ「軸になるもの」がある。
RPGゲームを始めるとき、最初にキャラメイキングをしたりする。知力・体力・すばやさ・幸運などに持っているポイントを振り分け、ステイタスを決めるのだ。
現実世界でも、人はそれぞれ異なるステイタスを持って生まれてくる。才能ってやつなのか。個性ってやつなのか。どんなに野球が好きだったとしても、プロになれるのはごく僅か。ああ、ステイタスが足りないのだ。
それなのに、ステイタスが足りないのに、どうしようもなくやめられないものがある。私にとってはイラストだ。
もうダメだ、とか、才能ない、とか言って、全部捨てて関係ない仕事に就いたはずなのに、いつの間にか鉛筆を走らせている。どんなに浮気したって、切り離そうとしたって、気が付けばそこに戻っている、きっとそれが私にとっての「軸になるもの」なのだ。
だけど、圧倒的に足りないステイタス。それが分かるほど苦しい。悔しい。
なんだか、ブタの手札からロイヤルストレートフラッシュを狙っている気分だ。
こんなに好きなのに、自分にとっての軸なのに、ステイタスが足りないってどういうこと? バランス悪くない? 誰? 私のステイタス割り振ったの。いや、おそらく人よりは高いのだろう。あるいはフルハウスくらいなら揃っているのかもしれない。でも作りたいのはロイヤルストレートフラッシュなんだ。それを狙って揃えたいんだ。こればっかりは一生やめられる気がしない。
でも。
そんな「軸になるもの」に気付けた者が、果たしてどれくらいいるのだろうか。それだけでもとても幸せなことなのに、それを実行でき、多くの作品にも触れられる環境にある。たくさんの素晴らしいイラストが、まだ上があることを教えてくれる、まだ上にいけると思わせてくれる。
描くのが楽しい。そんなものがあることが嬉しい。
いくつになっても、私はイラストを描き続けるだろう。ステイタスを積み上げるだろう。仕事で全く描く時間が取れなくても、思うように描けず途方に暮れたとしても、自分の怠惰に落ち込むことがあっても、例えそれがどこにも結びつかなくても。
それが私の「軸になるもの」なのだから。