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捨てら令嬢。はずれギフト『キノコ』を理由に家族から追放されましたが、菌の力とおばあちゃん力で快適生活始めます  作者: 渡里あずま


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遭逢

「食べられるキノコを出せ。近くには川があるし、小屋には鍋や道具もある……今なら、ゲルダにも『解る』だろう?」

「……キノコ」


 知らない、けれど随分と耳に心地良い声の主に、倒れた体が受け留められたのを感じた。いや、それだけではなくふわり、と抱き上げられたのを感じた。

 痛みが来ないことに安堵し、けれど空腹と一気に思い出したことで朦朧としながらも、言われるままゲルダは手を出した。

 ……すると眩い光と共に、その手いっぱいにエリンギやしめじが現れた。

 霞んだ瞳にぼんやりとだがそれが映った途端、揺らいでいたゲルダの目に光が宿った。


「キノコ! バター焼き……は今は無理だけど、ショーユ……醤油があるから、焼いて食べられる! それでまずは、お腹を膨らませて。あと菌も思うがままなら、土を豊かにして畑にして……忘れちゃいけない、酵母を使ったふかふかパンに、ワイン!」

「よく一瞬で、それだけ思いつくな」

「昔は色々、作ってたから、ね……?」


 人格が変わった訳ではないが、前世の記憶の影響か思いつくままに言葉が出る。

 しかし、相変わらず話しかけられる声に覚えはなく――そこでようやく「ん?」と引っかかり、ゲルダは自分を横抱きにしている相手を見上げた。

 声同様に美しい、肩までの白銀の髪と同じ色の瞳をした、二十歳くらいの青年を。


「……どちらさま?」

「ゲルダの守護者だ」

「えっ……ああ! 女神様が言ってた……って、菌つながり? 喋れるけど、菌の……妖精?」

「ああ、クローストリディウムだ」

「クロ……ディ?」

「……クロム、ならいいか?」

「ええ、ありがとうクロム!」


 前世の記憶の影響か、咄嗟に長い名前を聞き取れなかった。

 けれど気分を害することなく、むしろ呼びやすい名前を提示してくれた相手に笑ってお礼を言う。

 すると整いすぎて怖いくらいだった顔に、ふわふわと花が舞うような嬉しそうな笑みが浮かび――途端に孫のように(あくまでも前世であり、現世ではゲルダの方が年下だが)可愛く見えて、つられてますます笑顔になった。

 ……ゲルダは、まだ知らない。

 青年の正式な名は、クローストリディウム・ボトゥリヌム。

 強い毒性を持つ、ボツリヌス菌が具現化した存在なのだと。

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