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捨てら令嬢。はずれギフト『キノコ』を理由に家族から追放されましたが、菌の力とおばあちゃん力で快適生活始めます  作者: 渡里あずま


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利運

クロム視点。

 クロムの力を使えば、それこそ後妻や異母妹の装飾品を持ってくることも可能だった。

 しかし、とにかくゲルダはお人好しである。いくら酷い目にあっても、ゲルダが知らなかったにしろ盗みを働いてしまえば気に病んでしまうだろう。

 だからゲルダに少しでも抵抗がないよう、母親の形見だけいくつか持ってきた。とは言え、売るのに抵抗があるようなら他の金策も考えるつもりだったが――ゲルダは物より思い出やぬくもり、あと現実の方が大切らしい。躊躇せず頷いてくれたので、クロムは安堵した。直前に「髪を売る」などと言っていたから尚更だ。


(ゲルダは、思いきりが良すぎる)


 これからも、気を付けなければならない。そうクロムが心に誓ったところで種植えが終わったので、ゲルダと一緒に小屋へと戻った。

 そして手を洗ったところで、ゲルダがエプロンをつけて気合いを入れるように拳を握った。


「クロムに、お米を買ってきて貰ったから……今夜は、キノコと銀杏の醤油ピラフにするわ!」

「俺が」

「ご飯は、私が作るから! これだけは、譲らないからっ」

「……解った。ただ、良ければ作っているのを見ていていいか?」

「? ええ、良いわよ」


 キッパリと言い切るゲルダが、格好良くて可愛くてときめいてしまう。だからクロムは頷き、竈に火をつけるのだけを手伝うと、少し離れたところでゲルダが料理を作るのを眺めていた。


「ピラフは、前世の孫が好きだったのよ」


 懐かしそうに目を細めながら呟くと、まず買ってきた干し肉をぬるま湯で戻した。その戻し汁は醤油を足し、小鍋に入れてスープにする。

 それからピラフ用に干し肉やギフトで出したキノコ、そして玉ねぎを同じくらいの一口大に切った。


「あ、どうせならバターを作ろうかしら……クロム、手伝ってくれる?」

「任せろ」

「この牛乳が入った瓶を、中身が固まるまで振って欲しいんだけど……十分くらい? 疲れたら、休憩しながらやってね?」

「解った」


 気遣ってくれる優しさが嬉しい。そして人間ではないので疲れることなく、中身が固まるまでずっと振り続けた。


「すごい! クロム、ありがとう!」


 そんなクロムに感動したように、ゲルダが弾んだ声を上げる。  

 可愛いと思っているクロムの視線の先で、鍋に牛乳から作ったバターを入れ、次いで玉ねぎを炒めた。やがて玉ねぎがしんなりしたところで、干し肉とキノコを入れてサッと炒めた。

 米は洗わずに加え、透き通るまで炒める。そしてスープを入れ、沸騰したら蓋をしてピラフを炊く。

 それから蒸らした後、ピラフの鍋の蓋を取ると美味しそうな匂いが厨房スペースだけではなく、小屋全体に広がった。キラキラと、ゲルダは緑の瞳を輝かせ――それを見たクロムも、花のような笑みを浮かべていた。

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