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最終話 行くべき所へ

 雑誌社をクビになってから20年が経ち、俺は介護保険の第1号被保険者になっていた。


 俺はあれからも臼臼教の非道を街頭で訴え続けたが、俺の言葉に耳を貸す市民は一人もおらず、警備員のアルバイトを続けるうちに俺も臼臼教のことを次第に忘れていった。



 日本における老人の死因の一位は窒息死となり、高齢者が次々に臼臼教の施設からこの世を去っていく中で、日本国の財政収支(プライマリーバランス)はついに黒字へと転じた。


 3割以上も削減された社会保障予算のおかげで教育予算や安全保障予算は充実し、街頭を歩く若者たちの目にも活気が蘇ってきたように見えた。



 そして69歳になった俺は、警備員アルバイトの定年退職を翌年に控えて暴走車に追突され、車椅子生活を送らざるを得なくなった。


 治療を終えて退院してからも自宅での生活には不自由し、大して金を残してやれなかった長男と長女は俺の介護に苦労していた。


 親の介護に苦しむ子供たちと4年前に膵癌で死亡した妻に申し訳ないと思いつつ、俺はできる限りこの世で生きていきたいと思っていた。



 そんなある日……



「お父さん、ちょっと話があるんだけど」

「いつもすまないね。何だい?」


 自宅1階の寝室に入ってきた娘は、ベッドに横たわっている俺の枕元にぴしゃりとパンフレットを置いた。



「近くにある臼臼教の施設に空きができたらしいんだけど、明日から入居してくれない? 私たちがやるより、ずっといい介護をしてくれるよ。幸せにこの世を旅立てるんだって」


 笑顔を浮かべて言った娘に、俺は何を答えることもできなかった。



 (END)

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