11・運命共同体
ここ数日体調を崩してしまい更新が滞っていましたが、また本日からよろしくお願い致します。
この小説のPVなんて物を作ってみました。
Youtubeにてこの小説のタイトルで検索して頂くと視聴が可能です。
それの副産物としてタイトルのロゴなんて物も作ってしまいました。
エデンにおいてネズミという敵性モブは人の集まる場所周辺でよく見掛ける、害獣もしくは被食者として扱われているために敵としては全く驚異にはならない。
見た目が愛らしいものも存在し、その種類もそれなりに居る事からペット育成の入門用としてそれなりの人気はあるが、戦力として考えれば、能力の全てを愛くるしさ振ってしまったと言わんばかりに特筆するものは何も無い。
それはミラちゃんが可愛がっている白ネズミも同様で、時間を掛けて育てればそれなりの戦力にはなるだろうが、あくまでそれなりの域を超える事は無い。
そんな戦力としては微妙と言ってしまっても過言では無い白ネズミであるが、ここ最近はすっかりミラちゃんの腕の中で抱かれたままの扱いで落ち着きを見せている。
もちろん戦いともなれば、彼女の騎士として果敢に戦いに赴くが、それ以外がまるでぬいぐるみの様に脇から彼女の両腕を回され、その腹を見せて緊張感のカケラも無い絵面を晒している。
しかし、そんな無抵抗な大きなネズミを抱く幼女は庇護欲を掻き立てられる。
可愛いプラス可愛いは、物凄く可愛い事になるのを否定なんてさせない。
「白ちゃん頑張れぇ!」
ミラちゃんは戦うべき相手を見付けると、抱えていた白ネズミをそれに向かって投げ付ける。
先日、彼女は巨大な蜘蛛を目の前にした時に怯み、そして運命共同体でもある相棒への指示を怠り、白ネズミは死にかけた。
実際には何の指示も無かった事から、その命尽きるまで敵性モブに攻撃を繰り返すだけなのではあるが、お互いで生命力を削り合う戦いを続ければ生命力の低い方が先に力尽きる。
多少見た目の違いでいくつかの種類は存在するが、エデンにおいてネズは最底辺に位置する存在の為、生命を削り合う戦いをしたらサポートが無い限り単独で勝利する事は難しい。
その指摘を先日ミラちゃんにしたところ、それから彼女は常に相棒をぬいぐるみのように抱きかかえ、戦いになると相棒を投げ付けて戦闘するようになった。
彼女なりの覚悟の現れなのだろうが、何とも個性的過ぎる行動故に完全に理解できない状態であった。
それともこれは運営側が狙って実装させた行動なのだろうか?
もしそうなのだとしたら運営のあざとさを少なからず感じてしまうのは私自身だ純粋では無いからだろうか。
そして投げられる白ネズミの方も最初の頃は投げられるままに明後日の方向に飛んで行ってしまう事も多かったが、最近では空中での姿勢制御によって敵性相手の近くに着地したり、時にはそのまま体当たりして初手の無条件ダメージを与える事も多くなっていた。
これも運営の……いや、やめておこう。
先日はじめてクモを見た時はそのおぞましさに身動きの取れなくなっていたミラちゃんだったが、今では白ネズミを投げる事を楽しんでいるようにすら見える。
足が竦んで身動きすら取れなくなった時は肝を冷やしたが、いまのこの状態なら常に気を張っていなくても大丈夫だろう。
私はそう感じ、今後について考えを巡らす。
私もツヨシ君も育てている熟練に関しては上限であるキャップの五十近くまで成長しているのも多い。
五十を超えて熟練を育成させるには、それを開放する為のアイテムが必要になる。
とはいえ八十を超える種類の熟練があるこのゲームで、狙った熟練の開放アイテムだけを入手するのはことらの世界では絶望的と言える。
向こうの……エデンであれば、多くの参加者から使わないアイテム同士の交換をする事によって、思うままに熟練の上限解放も行えたが、こちらではそれも期待できないだろう。
そうなるとアイテム入手できる手段の回数を増やして、欲しいアイテムを引き当てるしか無いよなぁ……
あぁ、また物欲レーダーとの戦いがはじまるのか。
その考えに辿り着くと途端に気が重くなる。
そんな私の思いなんて無関係とばかりにミラちゃんは楽しそうに白ネズミを放り投げているのだった。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「師匠、何難しい顔してるんです?」
闘技場から戻り、ツヨシ君と宿で顔を合わせるとそんな事を言われた。
そんなにいつもと違う様子だったのだろうか?
「ちょっと聞くけどさ、ツヨシ君ってメインで上げてる熟練って今どれくらい?」
「えっと……格闘がそろそろ四十九に上がるかもって感じですね。四十までは結構簡単に上がったのに、それ以降の上がり方は良くないのは何でですかね?」
「あぁ、それはね。ミラちゃんが一緒に行動するようにもなったから熟練が上がり易い敵性モブを避けているからもあるんだよ。でもツヨシ君は闘技場で対人戦をやっているから、ミラちゃんに付き合うよりは熟練が上がり易いはずだよ」
ここ最近、ツヨシ君は闘技場でNPC相手に熟練上げをしている感じだ。
私の知っているエデンなら闘技場には熟練を上げ終わったプレイヤーの猛者達が集まる為に熟練上げをしているる余裕も無く、その実力のみを示す施設だったのだが、ここではその様な猛者も居ないに等しく、熟練上げの施設として充分機能するのである。
ミラちゃんの可愛がっている白ネズミの育成であっても、もうしばらくすれば可能だろうが、多分その頃に私達はこの傭兵の街と呼ばれているアンビティオの地は離れているだろうな。
「でも何でそんな事聞くんですよね?」
何故私がそんな事を聞いたのか、その意図が掴めず聞き返して来る。
「以前にも少し説明したと思うけど熟練を五十以上に育てたいなら特別なアイテムを使かわないと、それ以上の成長は出来ないんだよ。私自身もそろそろその限界値が近付いて来たから、そのアイテムの入手をどうしようかと思ってさ。場合によっては金銭的にかなり苦労しないといけない可能性もあるからね。そうなる前に相談しておこうと思ってさ」
私はツヨシ君に現在の熟練がどれ程のものかを確認したその意図を伝える。
「それなら、あまり心配しなくて良いかもしれませんよ。師匠が欲しがってるアイテムってコレですよね?」
そういってツヨシ君は自分の荷物枠から琥珀色の宝石らしきアイテムを取り出した。
それは熟練の上限を開放する為に必要なアイテムである開放石そのものであった。
「それ、どうやって手に入れたの?」
開放石をツヨシ君が持っていたのに違和感を感じて思わず聞いてしまう。
「これ、三連勝した時の試合報酬なんですよ。はじめて貰った時はそこらの説明が無かったんで驚きましたよ」
ツヨシ君はその入手した経緯を説明してくれたが、どうも納得がいかない。
何故なら、私の知っているエデンでの闘技場における報酬はお金のみで、その他の追加報酬などは無かったはずだ。
この違いも私の知っているエデンとの違いなのだろう。
「それ使ってみた?」
納得はいかないが、とりあえず彼が手にしている開放石の効果について聞いてみる。
「使ってみましたけど、これって微妙じゃないですか? 確定で上げたいものを上げられるのって無いんですか?」
ツヨシ君が言うのは私も最もだと思う。
だってこの開放石というアイテムは八十種を超える熟練の中からランダムでその上限を五だけ上昇させるアイテムなのである。
つまり運が悪ければいつまで経っても自身が求める熟練の上限は開放されないし、その上限が開放されたとしても一回で必要とされる熟練の上限に届く事は少ないので、複数回開放する事となる。
結果、大量の開放石が消費される事になるのである。
「確定で上げられるのねぇ……あるにはある。でも多分こっちの世界では入手出来ないか、入手できるにしても極稀にしか入手できないと思われる」
もちろんツヨシ君が言うように特定の熟練だけを狙い撃ちにする開放石というのも存在はする。
だが、きっとこの世界で入手はほぼ不可能だろう。
「なんでです?」
「それは課金アイテム扱いだから、さ。この世界に来てから、課金アイテムを入手する手段をまだ見付けていない」
自分で言っていておかしな事を言っている自覚はある。
このエデンに似た世界は、限りなくエデンに近いが全く別の世界であるのは確定している。
だから可能性としては課金で入手可能なアイテムの類があってもおかしくは無いのだが、ではそのアイテムはどうやって入手するのだ? と、いう疑問も同時に沸く。
しかもこの特定の熟練を狙い撃ちする開放石すらも、排出はランダムだった為、結局のところ能力に直結する基本熟練や人気の武器熟練ばかりが高値で取引されたり、好条件の交換材料になったりしていた程だ。
とにかく現状ではどうやっても入手出来ない事には変わらない。
「課金……って、なんですか?」
あぁ、そうか。
ツヨシ君は私の予想ではエデンのアカウントを作る事を許された年齢に達していない子だったのをすっかり失念していた。
「課金と云うのはね……」
私はツヨシ君に対して課金と云うシステムについて説明するのだった。
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「やっぱり意味分かりません。そんなに早く成長させたり装備だけ強くしても使いこなせなきゃ意味無くないです?」
課金について説明したが、ツヨシ君はその有用性の理解にまでは至らなかった。
ってか、課金の有用性に毒されたら戻って来れなくなるから、純粋なツヨシ君のままでいてくださいとも思ってしまったのはナイショだ。
「お姉ちゃん、カキンってのをしたらもっと美味しいハンバーグ食べられる?」
ミラちゃんは私達が話をしていた脇でおとなしく聞いていたが、課金についての説明を終えるとそんな事を聞いて来た。
ってか、すっかりハンバーガーの魅力にハマってしまい、今も作ってあげたそれを食べながら聞いてきたけど、彼女の中ではハンバーガーは美味しいハンバーグと云う、ハンバーグと同列の料理として認識されているらしい。
「課金してもハンバーガーの味は変わらないかなぁ……」
そんな的外れな事を聞きつつも、そんな彼女の言葉に愛らしさを感じながら返事をする。
「ならミラもカキンする意味わからない」
うん、分からなくて良いよ。
君は可愛いものを愛でる可愛い癒やし枠の存在でいてくれたら、それだけで良いからね。
「とにかく当面は目的とする熟練の上限解放の為に私も闘技場通いになるのかねぇ……」
自身の熟練育成の事も考えると、いつまでもミラちゃんだけに時間を割いている訳には行かない。
かと言って遺跡を調査する為にはミラちゃんもある程度の戦力になって貰わないと困るのも事実ではあるし、その為に白ネズミがある程度強くなっていて貰わないと困るのもまた事実なのだ。
単独なら自身のペースで多少の無茶を押し通しても問題無い事でも、人数が増え、それが運命共同体として動かなければならないとなると、途端に身動きの制限が大きくなる。
私自身、集団行動ってやつはそれ程得意な人物で無いのは予想がついている。
だからって他人が参加する場の中で単独だけを推し進めようとも思ってはいない。
「とにかく色々やりながら様子見ていくしか無いだろうね」
私は運命共同体として一緒に行動している年下の仲間達を見ながら言葉を漏らすのだった。
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