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もしかしてストーカー?

 違う、なんか違う。妖精さんでもなんでもない。

 差出人の名前は書いてないのに、字の合間に赤い指紋つけられているのもよく分からない。

 赤いインクが時折り大きなシミになって文字を潰してしまっているのも、可愛らしい丸文字に似つかわしくない乱雑さだ。ちょっと黒ずみを帯びた独特の赤み……

「血文字かあ……情熱的だなあ」

 鉄錆じみた匂いに、ぞ、ぞと鳥肌立つ。

 手紙を捨てようと思ったが。ふと裏面の一節が目に入った。

『捨てないで下さい二人の絆を』

 その部分を囲うように金色の糸が便箋が縫い付けられている。多分、髪の毛ではないだろうか。下手なことをしたら呪われかねないという迫力があった。

「ごめんなさい捨てません」

 引き出しに便箋を突っ込んで自室を出た。心なしかさっきと比べて体も重苦しくて、一日の活力を使い果たしてしまった感すらある。

 ふらつきながら四天王達の所へ向かった。

 開きっぱなしの四天王会議の扉から日常的な声が聞こえる。不気味な手紙を忘れさせてくれるであろう。

「みんなおはよーう!」

 声を張り上げて、砂漠でオアシスを見つけた旅人の様にまっしぐら。

 四天王達もまた笑顔で迎え入れてくれた。

「待ってました魔王様」

「よっ、色男!」

 妙にテンションの高い四天王達に揉まれる様にして、四天王会議の自席へ。

「いやぁ、ありがとうありがとう、みんなの笑顔がありがたい!」

「何を言ってるんですか、この女殺し」

「私達より素敵な彼女が待ってますよ」

 四天王達がさも楽しげに手の平で示す先には。自席の机の上。

 そこに紅が刻まれていた。

 彫刻刀で彫り込まれたと思しき文字列に赤いものがこびりついていた。

 多分、手紙に使われたインクと思しきものではないだろうか。

「誰だ……!いっだいだれのいたずらだ!」

 魔王は血相を変えて喚き散らした。文面など確かめるまでもない。

『誰でもありませんよ、魔王様がさっき来た時にはそうなってましたよ』

 四天王達がニヤニヤしているのはザマァ見ろという意味合いなのだろう。これもまた日常的な嫌味なのだろうが、せっぱ詰まった魔王にはことさら効く。

「ちくしょう……俺が何をしたっていうんだ」

 なんだかもう泣きたい。

「まさか……」

 机の中を覗いて見ると、封筒がぎっしり詰まっていた。

「もしかして世に言うストーカーってやつか?」

『おめでとう熱烈彼女の誕生ですねー』

 拍手してくる四天王達を最上位魔法で吹っ飛ばせたらさぞかし胸が空くだろうなぁと思った。

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