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違和感を感じはじめる魔王

夢を見た。

まだ俺が魔王になっていない頃の夢だ。

エリンがまだ村娘だったころ。

近所の村にエリンの声が轟いた。

「あたし、おっきくなったら魔王さんのお嫁さんになる!」

 いつもの口癖。いつも通り手を握って離さないエリン。

 日常の風景だった。

 他の手や体に抱きついてるのも四天王達のも日常の一景色。

「では私達も、大きくなったら魔王様のお嫁さんになりましょう」

「じゃあ四天王さん達もおっぱいが大きくなってからね」

「その条件は却下します」

「なんで。俺、おっぱい好きなのに」

「必ずしも大きくなるわけではありませんし、おっぱい以外に好きな物が出来るかもしれないでしょう?」

 当時から四天王達は言葉遣いを心がけていた。育ちの違いをひしひしと感じる。

「きっと魔王様はありのままの私たちを大好きになってくれる人たちです。だから、おっぱいなどいりません」

「そーゆーのじしんかじょーってゆーの!」

 エリンが膨れっ面で近くに落ちていた棒切れを掴んだ。

 四天王達は微笑みのまま握り拳を握る。

 得体の知れぬ威圧感に挟まれて、魔王は吐き気感じた。

 おそらく生まれて初めて殺気という物を知った瞬間だろう。

「わ、わかった、わかったから!五人ともお嫁さんにしてあげるから!」

 とっさの裁定で五人の表情が輝き、殺気が霧散した。

 ああ、なんて可愛らしい女の子達だろう。


「魔王城から出る必要はありません」

 朝食中、四天王達がそう言った。

「外に出たらエリンさんの餌食ですから」

「野生動物じゃあるまいし……」

 言いつつも、あの勇者なら何をしでかすかわからないというのも間違いない。

「魔王城で鍛錬を行いましょう」

「なるほど、完全に籠城作戦か……でも、そこまでしてもらっていいのか?」

「四天王達は咳払いすると、ケチャップのついたウィンナーを箸でつまみ、テーブルの向かいから身を乗り出す彼女たちらしくない無作法だが、その意図はすぐわかった。

「はい、あーん、アナタ」

 テーブル越しの魔王に食べさせるとなると、この行為自体が彼女達らしくない。

 だが、魔王も彼女達の意図に気付いた。そこにはエリンの仕掛けた盗聴盗撮機器が設置されている。

「あ、あーん」

 ウィンナーにかぶりつく。

「うむ、うまいよ、オマエたち」

「うふふ、アナタったらケチャップが顎についてますよ」

 四天王達が手招きするので魔王もまた身を乗り出した。彼女達の指でケチャップがぬぐいとられる。その指を舐める仕草もまた、彼女達らしくない不作法だ。

(エリンに見せつけるための演技だろうけど)

 でも、なにかがズレているような気がした。

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