勇者に拉致られた!?
「魔王さん言ったよね……朝起きたらオッパイ揺らして起こしてくれるお嫁さんが欲しいって。ついでにオッパイで顔を……」
魔王はなにかの台に寝かせられているので、彼女が少し屈むと視界いっぱいに白鎧の張り詰め部位が広がるのだ。そしてついに、豊熟した曲面で鼻面をポムポムと叩いてくる。
「こんな風にされたら一発で目が醒めるって言ったよね?」
「言ったかも、ふおっ、言っ、言ふえあっ」
自分の顔で乳肉が弾む感覚に惑わされ、呂律が回らない。
なぜだ。なぜ、自分はこんな場所で、オッパイにいじめられているのだろう。
(たしか俺、城でエリンと飯を食べてて……トマトを食べたら意識が遠くなって、気がつくとオッパイの餌食になっていた)
ものすごい状況だが喜んでいる場合じゃない。
意識は鮮明になってきたが、手足は未だに痺れて動かない。
「な、なんだエリン!一体何がどういう事だ!」
「トマトにお薬を入れておいて、魔王さんが眠っている間にここまで運んだの」
「サラッと酷いこと言うなお前!」
「あぁー、魔王さん、顔赤くしちやって。体熱くなってきちゃった?」
オッパイによる重圧で体が熱を帯びてきていることは確かだ。
「熱くなったってことは、汗もかいちゃうってことだよね」
乳房がようやく顔から離れた。
エリンは鼻をスンッと鳴らすと、幸せそうに頬を赤らめる。
「魔王さんの汗の匂い……昔より濃くなって、男らしいよ」
スンスンと鼻を鳴らして、顔を胸板に寄せてくる。触れられているわけでもないのに、匂いを嗅がれていると思うだけで妙にこそばゆい。
「ちょっぴり苦くて、甘ったるくて、魔王さんの匂い、好き……」
胸から首筋へ鼻を近づけてくる。明るい色の髪が魔王の口元に寄せられ、シャンプーの爽やかな匂いが鼻孔をくすぐる。
一向に状況はわからないけれど、とびきりの美少女が特大の胸を押しつけ密着、自分の匂いに耽溺している姿には、得も言われぬ感動と官能があった。
でも、ダメだ。ここは魔王としてガツンと言わないと。
「エリン、離れるんだ……!」
語気を強めると、カリンは顔を上げてキョトンとする。
「こういう事は人間同士とやるもんだ」
「やだもう、魔王さんったら。愛は種族の壁を超えるんだよ」
「違う、そうじゃない!そもそもここはどこだよ!」
「隠れ家だよ」
意外とあっさり返答が来た。
「先週からここを根城にして、魔王さんとか魔王さんの城とか調べてたの」