第32話 連行
前回のあらすじ
ゼクスを守るためにノインが投降した
ゼクスの元上司であるルイさんに拘束されながら、異端審問官達がいる部隊に連行された。
ちなみに、わたしの動きを封じるように、ルイさんの左手から伸びたワイヤーがわたしの身体に巻き付いていた。
ルイさんが姿を現すと、その場にいた異端審問官達が一斉にルイさんに向かって敬礼する。
そしてその視線は、わたしの方へと向いてくる。
「ご無事で何よりです、ルイ特別異端審問官。……それで、そちらの女性は?」
「私が捕らえたSS級魔女よ」
ルイさんがそう言うと、大きなどよめきが巻き起こる。
たぶん、高位の魔女の生け捕りなんてそうそう無いことなのだろう。
「大手柄じゃないですか、ルイ特別異端審問官! 特一級への昇進も夢じゃないですよ!」
「そうかもしれないわね。……この魔女の拘束をお願い」
ルイさんはそう言うと、わたしの拘束をほどいてワイヤーを巻き取っていく。
ここで暴れてもいいのかもしれないけど、たぶん無事じゃ済まされない。
「はっ! ……おい、魔女! こっちに来い! 拘束する前に教育してやる!」
見ると、男性の異端審問官達がわたしに下卑た視線を向けていた。
教育というのはきっと、わたしに性的な暴行をすることに違いない。
覚悟はしていたけど、流石にコレは……。
「教育の必要はないわ。それにこの魔女の所有権は私にあるわ。まさか所有者に無駄で、私の所有物に手を出すつもりじゃないわよね?」
と思っていると、ルイさんがわたしを庇うようなことを言う。
これはわたしも予想外だった。
「はっ。いえ、しかし……」
「魔女の拘束はこの場でも出来るでしょう? それとも何? 獣のように魔女を犯すのが趣味なの? それなら別に止めはしません。獣に理性を説いても時間の無駄なので」
「……拘束させていただきます」
「初めからそうしてください」
ルイさんと問答していた異端審問官の一人が、その場を離れる。
「……なんでわたしを庇ったんですか?」
「庇った? 誤解しないで」
ルイさんはそう言うと、わたしの胸倉を掴んで自分の方へと引き寄せる。
ルイさんはわたしより身長が低いから、わたしが屈む形になる。
「貴女にはゼクス君を苦しませるために、肉体は純潔のまま、精神は穢れてもらうわ。変わり果てた貴女を見れば、あのゼクス君でも苦しむでしょう?」
「……性根がひん曲がってますね」
「何とでも言いなさい。こうなった原因は、貴女とゼクス君にあるのだから。……もしかして、ゼクス君ともうヤった?」
「っ!? ゼクスとはキス以上のことはしてませんよ!」
「そう……」
ルイさんは乱暴にわたしを突き放すと、再び異端審問官達の方を向く。
「鎖はまだ用意出来ないの?」
「ここに」
ルイさんの問い掛けに、さっきの異端審問官が鎖を持って再び現れた。
そして今度はその鎖でぐるぐる巻きに拘束されて、彼等に連行された―――。
◇◇◇◇◇
ボロ雑巾がまだマシなくらいに心も身体もボロボロになり、覚束ない足取りで隠れ里へと戻っていく。
無事であってくれ……という僕の儚い願いは脆くも崩れ去った。
隠れ里の中は何処もかしこも蹂躙し尽くされており、家屋のほとんどは倒壊していた。
異端審問官達が放ったのか、至るところから火の手が上がっていた。
だけど不幸中の幸いなのは、魔女の亡骸を一つも見掛けなかったことだった。
アナスタシアさんは僕の忠告通りに避難したらしい。
すると、隠れ里に残っていたのか異端審問官が数人姿を現した。
彼等は僕の姿を確認すると、すぐさま臨戦態勢を整える。
「魔女の生き残りがいたぞ!」
「手負いと言えど油断するなよ! 魔女は何をしてくるか予想がつかん!」
「ここでくたばれ、魔女め!」
彼等は何かを言っているが、僕は今無性に腹が立っていた。すぐにでも何かに八つ当たりしたいくらいには。
だから目の前に敵がいる今の状況は、本当に都合が良い。
「……今僕は無性に腹が立ってるんだ。とっとと消えてくれないかな?」
「消えるのはお前だ、魔女め! 世界に害しかもたらさない者共め!」
身勝手な物言いだけど、別に腹は立たなかった。
そんな些末なことなんかより、別のことに腹が立っていたからだった。
だからか、魔剣を握る手に自然と力が入り、そのまま折れてしまうんじゃないのかってくらいに強く握り締める。
「……もう目障りだ、消えろ。咲き乱れろ、【百花繚乱】」
魔剣由来の魔術を発動させると、色とりどりの無数の花びらが異端審問官達の周りを取り囲む。
そしてカミソリのように鋭い花びらで、彼等の身体を四方八方からズタズタに切り裂いていく。
ドサドサッと彼等の血塗れの身体が地面に倒れ伏すけど、僕の苛つきは全然治まらなかった。
……ああ、本当にイライラする。
自分の無力さに。ノインに守られてしまった己の弱さに―――。
敗北を知った主人公は強くなる。古事記にもそう書かれてる。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




